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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
378/530

薔薇と太陽 その③

閃光を追って駆け上がる


四十四番目の硝子階段


後背の雲は龍の如く


土の香を漂わせている

3


「ぐっ・・・」


唐草は右肩を抑えた。


と言っても、右肩から脇腹にかけての肉は架陰の斬撃により削ぎ落ちていた。


手では抑えきれない血液が噴出して、辺りを真っ赤に染め上げていく。


ずるりと腸が零れ落ちた。


「なかなか、早いね・・・」


薄れゆく意識の中、そう呟いた。


「こんなにも早く、桜班が到着するとは思わなかったよ」


いや、妥当な時間か。


出血が酷くて、意識が定まらない。


「君の襲撃に気づかなかったのは、僕の落ち度だね・・・」


たった今、形成は逆転した。


薔薇班VS唐草、神谷、女郎。


一見、薔薇班が不利である戦いに颯爽と現れた市原架陰の一閃により、唐草と女郎、二人もの悪魔の堕慧児を戦闘不能に追いやったのだ。


クラクラする。


「くそ・・・」


唐草は重い瞼を押し上げて、女郎の方を見た。


女郎は体を真っ二つに裂かれて、上半身と下半身に分かれていた。唐草同様、断面から腸が零れ落ち、辺りに飛散している。


ぴくぴくと痙攣しているということは、まだ生きているということ。


唐草は渾身の力を込めて叫んだ。










「神谷!!!」










次の瞬間、地面に蜘蛛の巣のような亀裂が入った。


「っ!?」


危険を察知して、バッと離れる架陰。


足元から、吸血樹にも似た、白色の触手が飛び出した。


「あれは!!」


横目で見る。


この触手は、道路の中央で、桐谷と斎藤と交戦している、【神谷】のものだ。


「まずい!!」


だが、タイミングがワンテンポ遅かった。


神谷が操る触手は、独立した生き物のようにうねり、枝分かれして、唐草と女郎の身体を貫いた。


触手が淡く光る。


たちまち、不老不死のエネルギーが二人に送り込まれた。


ザワザワと、傷の断面から腕やら下半身やらが生える二人。


「くそ!!」


架陰は刀を振り上げた。


せっかく、隙を突いて致命傷を与えたのだ。


これ以上再生されるわけにはいかない。


「架陰殿!!」


刀を振り下ろそうとした瞬間、誰かが架陰の名を呼んだ。


意識を取り戻した西原だった。


西原は幼児のように四つん這いになった状態で、架陰に指示を出した。


「花蓮様を!!!」


「っ!!」


ハッとして、城之内花蓮が倒れている電柱の方に目を向ける。


彼女は、口からどろりと血を吐いていた。


「花蓮さん!!」


直ぐに身体が動く。


再生を始める唐草と女郎などお構いなしで、城之内花蓮に駆け寄ると、彼女の身体を優しく抱え起こした。


「花蓮さん!! 大丈夫ですか!?」


軽く揺さぶると、花蓮の長いまつ毛がピクリと動いた。


血反吐で汚れた薄い唇から「う・・・」と蚊の鳴くような唸り声が洩れる。


「か、架陰様・・・?」


「ああ、良かった!!」


架陰は安堵の息を洩らし、彼女の口の端から垂れた血を着物の袖で拭った。


花蓮は虚ろげに架陰の顔を見る。


そして、自分を介抱しているのが、あの市原架陰だと自覚すると、みるみると顔を真っ赤にした。


「かかかかかか、架陰様!?」


「どうも。お久しぶりです!!」


架陰は軽い敬礼で、ハンターフェスぶりの再開の挨拶とした。


花蓮は口から血を吐きながら、「や、やめてください!!」と架陰を突き飛ばす。


「はははは、恥ずかしい!!」


「あの、血、出てますよ? 内臓やられたんじゃないですか?」


「やられました!!」


負傷した花蓮を戦わせるわけにはいかない。


架陰は有無を言わさず、花蓮をお姫様抱っこした。


「ちょっ!! 架陰様!!」


「少し揺れますよ」


脚に魔影を纏わせると!地面を蹴る。


垂直に跳躍して、隣のビルの屋上に飛び移った。


「とりあえず、ここで休みましょう」


花蓮を、金網の隣に横たえる。


やはり、花蓮の傷は深いようで、彼女が深く息を吸う度に、ゴボゴボと喉の奥から血反吐が溢れた。


(内臓がやられたか・・・)


架陰は「失礼します」と言ったから、城之内花蓮のゴスロリドレスの胸元に手を入れた。


そこから取り出したのは、【回復薬・薔薇香水】の小瓶だった。


架陰のしようとしていることを察して、花蓮は「無駄です」と言った。


「【回復薬・薔薇香水】は、軟膏系の回復薬です。効能は外傷のみです・・・」


「わかってます」


今度は、自分の着物の袖に手を入れた。


フィルムに包まれた、【回復薬・桜餅】を取り出す。


「花蓮さん。僕と交換しましょう」


「交換?」


「はい。僕の桜餅をあげますので、薔薇香水をください」


花蓮が返事をするよりも先に、架陰は薔薇香水の小瓶を着物の袖に入れた。それから、桜餅を小さくちぎり、花蓮の口元にもっていく。


「食べてください」


「・・・はい」


花蓮は口を開けてそれを食む。


彼女がもぐもぐと咀嚼しているのを確認して、架陰は安心した息を吐いた。


くるりと振り返る。


袖から、イヤホン型トランシーバーを取り出すと、耳に装着した。


「こちら市原架陰。無事に薔薇班と合流しました」


すると、マイクの奥から、響也の声が聞こえた。


『こちら鈴白響也。こちらも椿班との合流に成功した』


「悪魔の堕慧児を、三体確認」


『こちらは二体だ』


「即刻、始末すると共に、目標の奪還を遂行します!」










第113話に続く




第113話に続く

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