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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
365/530

合同作戦開始 その③

木刀で漆器を砕いて


降りしきる破片の光の中で


赤らめた顔と


涙とともに


肩で息をする貴方の


なんと傷だらけな様よ

3


「ってか、この死体、どうやって殺されたんだ?」


「どうやって殺された?」


不意に鉄平から洩れた言葉に、一同首を傾げた。


数秒してから、八坂が「確かに・・・」と頷く。


「能力によるものでしょうけど・・・、実態が分かりませんね」


「だろ?」


鉄平はそう言って、鉄棍で地面を叩いた。


柔らかいような、硬いような、少なくとも、アスファルト程の硬さは無い。


「一晩で、この街を覆った、この肉壁みたいなのもそうだ。能力者は誰だ?」











「私ですよ」











不意に、背後から女の声がした。










振り返ると、朱に染った道路の真ん中に、少女が佇んでいる。


高校のブレザーに身をまとい、膝ほどのスカートからは白い生脚が覗く。髪は質の高い黒色で、サラサラと風に揺れていた。


その瞳は、ビー玉のように無機質だった。


「お前は・・・」


「知らないでしょう? 初対面ですもの」


「まあ、そうだな」


少女はにまっと笑うと、しなやかな指をパチンッ!!と鳴らした。


その瞬間、左右のビルの壁の表面が、ズブズブと蠢き始め、ミミズのような肉塊が盛り上がった。


「っ!!」


「自己紹介と行きましょう。私は、悪魔の堕慧児の一人、【蜻蛉とんぼ】です」


「とんぼ・・・」


女にしては似合わない名前だ。と思った。


「今ので分かるように、私の能力は・・・」


そう言って、蜻蛉という名の少女が、自身の能力を説明しようとした、次の瞬間。


背後に控えていた真子が、弓を射った。









「【爆炎火矢】!!」









鏃が炎をまとい、空気を裂きながら射出される。


蜻蛉は動かない。


再び、パチンッ!!と指を鳴らした。


その瞬間、左右の壁から伸びてきた肉塊が蜻蛉の目の前に立ち塞がり、矢を防いだ。


「っ!!」


「無駄ですよ」


蜻蛉は勝ち誇ったような顔を浮かべ、でも、妖艶な気配は纏わせたまま言った。


「私の能力は、【陽炎】と言いまして、半径一キロ圏内の空間に肉塊を纏わせることができる能力です」


「一キロだと!?」


八坂が驚く。


「そんな射程距離のでかい能力なんて、見たことが無い!!」


「そうでしょうね。多分、私だけじゃないでしょうか?」


蜻蛉は、今度はパンッ!パンッ!!と、手を鳴らした。


壁から飛び出た肉塊が、元の位置に引っ込む。


それから、アスファルトの表面がウズウズと蠢き、先程と同じ、ミミズのような肉塊が首をもたげた。


「ですが・・・、あまり戦闘には向いていないんですよ。矢くらいは防げますが・・・、殺傷能力がとにかく低すぎる・・・」


嫌な予感がした。


「私の役割は、あなた達を分断することです」


その瞬間、鉄平の足元が盛り上がった。


「っ!!」


危機を察知して、後方に飛び退く鉄平。


案の定、肉塊が地面からせり上がってきて、鉄平の視界を遮った。


ドンッ!!


と、背中になにかが当たる。


「なにいっ!!」


振り返ると、そこにも肉壁があった。


鉄平は、肉と肉の壁に挟まれたのだ。


壁の向こうから、蜻蛉の冷静な声が聞こえる。


「効率がいいでしょう? 一人一人、分断して・・・、一人一人、着実に殺して行きます」


背後の壁の向こうからも、真子や、八坂、山田たちの困惑する声が聞こえた。


「なんだこれっ!!」「鉄平さん!!」「くそっ!! 攻撃が!!」


あの蜻蛉という名の女の能力により、椿班の四人が、バラバラに分断されている。


「コノヤロウ!!」


鉄平は怒りに任せて、鉄棍で肉壁を殴った。


「卑怯だぞ!! てめぇわよォ!!」


「あら、狩人にそんなこと言われるとわ思いませんでした」


肉の壁が開け、蜻蛉が姿を現す。


彼女が指を鳴らすと、辺りの空間にある物質が形を歪め、鉄平と蜻蛉の周りを取り囲んでいく。


そして、四方八方壁。


学校の体育館程の戦場となった。


「大丈夫ですよ。彼らを圧死させるような野暮なことはしません。あなたを殺したら、一人一人、また一人一人と殺します・・・」


「くっそ!!」


鉄平が肉の地面を強く踏み込んだ。


その瞬間、蜻蛉が「あんっ!!」と喘ぎ声をあげる。


その声に、一瞬、鉄平の動きが止まる。


「なんだてめぇ、気持ち悪い・・・」


「ああ。一応、私の弱点を言っておきますね。この肉壁は、私の身体の一部を増殖させているので、痛覚はあるんですよ」


「っ!!」


鉄平の脳裏に、「この肉壁を攻撃すれば」という考えが浮かんだ。


直ぐにその考えを読んだ蜻蛉が、「残念」と言う。


「表面積が大きくなっているので、少し叩いたくらいじゃ、感じません。羽虫に留まられる程度の感覚ですよ」


「だったらさっきは・・・」


「肉壁の部位によって、感じ方は違いますから。あの部分は敏感だったんですよ。さながら、性感帯のようにね」


「っ!!」


「おっと、変なことは考えないでくださいね? 私、笹倉さんのように下品な男性は嫌いなんですよ」


そう言いながら、左手で右手首を掴む蜻蛉。


まるで蟹の殻を剥くように、右手首の骨を折った。


パキンッ!!


と、乾いた音が鳴り響く。


「っ!! てめぇ、何やってる!!」


「心配してくれるんですか? 紳士的ですね。ちょっとは好きになってもいいですよ」


蜻蛉はさらに手首を折り曲げる。


皮膚が裂けて、血が吹き出した。


「面白いでしょ?」


その断面から肉がズブズブと生えでてきて、草苅り鎌のような形状に変化した。


「さて、戦いましょうか?」












第109話に続く


第109話に続く

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