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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
362/530

城之内カレン奪還作戦 その③

背中の香を彷徨いて


明け方の月に祈る楠

3


架陰、クロナ、そして響也の三人は、アクアの運転するワゴン車に乗り込み、とある場所を目指してアクセルを全快した。


三時間ほどの運転で辿り着いたのは、【二代目鉄火斎】の工房がある山奥だった。


カレンが誘拐されてすぐの出発だったために、辺りは真っ暗。道中、何度も足を踏み外して、谷底に転落しそうになった。


冷い空気が舞い降りて、草木、害獣すらも息を潜める頃だった。


「へえ、こんなところに人が住んでいるのか」


初めてこの山に来る響也は、鬱蒼とする木々を眺めながらそんな感想を抱いた。


数週間ここで世話になったクロナや架陰は、物怖じすることなく、懐中電灯で照らしながら、山小屋の方へと歩いていく。


アクアが先頭に立ち、住宅の扉を叩いた。


「こんにちは」


扉は直ぐに開いた。


「なんだ?」


二代目鉄火斎が眠たげな顔をして出てくる。


懐中電灯に照らされたアクアや架陰、クロナの顔を見るなり、目をパチリとさせた。


「お前ら、どうしたんだ? こんな夜中に・・・、オレはもう寝るつもりだったんだが?」


彼は藍色の寝巻きを羽織っていた。


部屋の奥の囲炉裏にはチリチリと火がともり、その前に薄い布団が敷かれている。


アクアが架陰に目配せをした。


架陰は、アクアの半歩前に出て、折れた刀を渡す。


「どうぞ」


「ああ?」


目を凝らして、架陰が渡してきたものを見る二代目鉄火斎。


それがなんであるかを理解した途端、鉄火斎は石の床を蹴って架陰に飛びかかると、彼を地面の上に組み伏せた。


「やいてめぇ!!」


「すみません・・・」


架陰には謝ることしか出来なかった。


「一体これはどういうことだよ!!」


今にも架陰の頬を殴ろうとする鉄火斎の腕を、アクアが掴んだ。


そして、架陰から引き剥がす。


「鉄火斎。今は一刻を争う事態なの。殴るのは後にしてちょうだい」


「ああん?」


二代目鉄火斎も最初は怪訝な顔をしていたが、夜中に桜班のメンツが尋ねて来たこと。そして、自分の力作が簡単に折られた。という事実が助力して、怒りを抑えた。


「・・・、とにかく、入れよ」


四人は、鉄火斎の顎に示されて、山小屋の中へとお邪魔した。


鉄火斎は、サッと布団を畳み、囲炉裏の炎を大きくした。それから、部屋の四方に置かれた燭台に炎を灯した。


明るくなったところで、本題に入る。


「で、説明しろよ」


鉄火斎はあぐらをかいて座り、前に折れた【叢雲】を置いた。


「どうして、オレが打った叢雲が折られることになったのか」


「はい」


架陰は神妙に頷いて、鉄火斎に説明した。


「実は・・・、【一代目鉄火斎】さんに会いました」


「あ?」


その名を聞いた瞬間、二代目鉄火斎の目がカッと見開き、瞳孔が震えた。


口が半開きになり、端から唾液が伝う。


そして、架陰に縋るように詰め寄った。


「おい!! それ、どういうことだよ!!」


「それを僕も聞きに来たんです」


架陰は一音一音確かめるように聞いた。


「一代目鉄火斎って、やはり、あなたの師匠ですよね?」


「そうだよ!! 一代目鉄火斎はオレのお師匠だよ!!」


「その一代目鉄火斎さんが、【悪魔の堕慧児】と共謀していたんです」


「なんだと?」


事実を飲み込めない鉄火斎。


そこから先は、アクアが語った。


「これで、辻褄はある程度合ったわね」


「辻褄?」


「悪魔の堕慧児は、人間とUMAの力を半分ずつ併せ持つ者のこと。彼らは、【武器】を装備していたわね?」


「はい。笹倉は、【名刀・雷光丸】。唐草は、【名傘・雨之朧月】。鬼丸も、名前は分かりませんが・・・、刀を一本所持していました」


「不思議だったのよ。あれほどの名品を、【誰】が作っているのか・・・」


「つまり、あれらは全て、【一代目鉄火斎】が作って、悪魔の堕慧児に供給していたってことですね」


「そういうこと」


アクアはそう言ってから、二代目鉄火斎の方を向き直った。


「あなた、一代目鉄火斎の居場所は分からないかしら? 分かるなら、他の悪魔の堕慧児たちの居場所もそこになると思うんだけど・・・」


残念ながら、二代目鉄火斎は怯えた様子で首を横に振った。


「知らねぇよ。だって、お師匠様は、十年近く前に・・・、オレの前から姿を消したんだぜ? てっきり死んだものだと思っていたんだからよ」


「そう・・・」


アクアは顔には出さないものの、残念そうに頷いた。


「じゃあ、次のお願い。架陰の新しい刀を作ってちょうだい」


「はあ?」


あからさまに嫌そうな顔をする鉄火斎。


「これから新しい刀を作るだどぉ? 一体どれだけ時間がかかると思ってんだよ!!」


「同じ刀でもいいわ。同じ【叢雲】なら作れるでしょ?」


「馬鹿言え。敵に簡単に折られるような刀をもう一度打てるか!!」


「あ、そうだ」


架陰は思い出したように言った。


「一代目鉄火斎さんが、言っていたことです。『次にそんな鈍を打ったら、叩き折る』って・・・」


「うっ!!」


心当たりがあるのか、うめき声をあげる鉄火斎。


「くそ、あのバカ師匠・・・、今更なんだよ・・・」














第108話に続く

第108話に続く

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