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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
359/530

さらば夜 その③

八岐大蛇之尾


來翔天叢雲剣





3


カレンを取り戻す。


その一心で、架陰は鬼丸に向かって斬りこんで行った。


ふと、視界の中を過ぎるのは、数ヶ月前のあの光景。


ハンターフェスにて、架陰が、四天王の【スフィンクス・グリドール】と対決した時のことが、鮮明に思い出された。


今まで、数多くの強敵と戦ってきた。


鬼蜘蛛、鬼蛙、ローペン、吸血樹、バンイップ・・・、鉄平に、リザードマンに、白蛇。


さらには、夜行。


数多くの死線を乗り越えてきた。


スフィンクス・グリドールとの戦いは、彼のその経験を、天地がひっくり返る程の勢いを持って覆したのだ。


上には上がいる。


どれだけ強敵を打ち破ろうとも、また更に、強敵が立ち塞がる。


(もう!! 負けたくないんだよ!!)


脳裏に浮かぶのは、カレンの笑顔だった。


(絶対に!! 取り戻す!!)


カレンは、いつも架陰のことを気にかけてくれていた。


架陰が躍起になって飛び出しても、冷静に彼を援護してくれる。そして、「今のは惜しかったわねぇ」「もう少しで行けたわねぇ」と、労いの言葉をかけてくれた。


そんな慈愛の女神のようなカレンを、このような蛮族達に渡すわけにはいかないのだ。


「カレンさんを!!」


鬼丸との間合いを詰め、刀を振り上げる。


「返せっ!!!」









そして、魔影を纏わせた刃を、勢いよく振り下ろした。










「・・・残念だ・・・」


その瞬間、鬼丸がピクリと動いた。


刃が鬼丸の頭を穿とうとする寸前・・・、架陰の背筋に、今まで感じたことが無いくらいの悪寒が走った。


「っ!!」


ざわりと、身の毛立つ。


痺れるような感覚が、指先からつま先まで駆け抜けた。


一瞬で、鬼丸が架陰の視界から消え失せた。


刃は空を斬り、足元のアスファルトを粉砕する。


「・・・・・・!!」


架陰は言葉を放つことが出来なかった。


ただ、不意に、脳裏にこんな言葉が浮かんだ。










「逃げろ」と。










その時気がついた。


この心臓の高鳴りは・・・。


この身の毛のよだつ感覚は。


この、震える手は。


震える足は。


カチカチと、歯が擦れ合っている。










全て、恐怖から来るものだった。










「ひとつ・・・、教えておいてやろう」


鬼丸が、架陰の背後に立った。


「私の名前から分かるように・・・、私の能力は、ソレという訳だ・・・」


「・・・・・・」


振り返ることが出来ない。


まるで、全身を針で刺されたみたいだ。


動けば、身体中の関節がギシギシと軋み、跡形もなく砕け散ってしまいそうな、そんな感覚に駆られた。


「大丈夫だ。健全な反応だ」


鬼丸は、ポツポツと、歩きながら、架陰の目の前に回り込んだ。


「元来、人間は【防衛本能】を持ち合わせているからな・・・」


腰の刀をゆっくりと抜く。


その、白銀の切っ先を、硬直している架陰の刀に押し当てた。


「動けなくなるのも、無理はない」


ゆっくりと力を込めていく。


ギシギシ、ギシギシ。


架陰の叢雲が軋んだ。


「愚かな・・・、このような鈍を打ってもらって満足するとは・・・」


ギシギシ、ギシギシ。


無機質な刃だと言うのに、まるで、肉を抉られているかのような感触が、刃を通して架陰の手の中に伝わった。


「これにて、お役御免」


ギシギシギシギシ、ギシギシギシギシ。










パキンッ!!!!!










架陰の刀・・・、【名刀・叢雲】は、根元から乾いた音を立てて折れた。


「っ!!」


ハッとした時には、柄と刃が分離している。


刃が、アスファルトの上に突き刺さった。


「え・・・」


叢雲が、折れている。


「・・・え?」


折れた?











「は?」










折れている。










「うそ、だろ・・・」











本当だった。


折れている。


使い始めて、まだ少ししか経ってない、刃が、いとも簡単に折られていた。


破片が足元でキラキラと輝いている。


「折られた・・・」


「そういうことだ」


鬼丸は、架陰の肩をぽんと叩いた。


そのまま、架陰の横を通り過ぎて、屋上のフェンスへと歩いていく。


「刀が折れたお前は、もう戦う術は無い」


「・・・・・・」


歩いていく。


遠ざかっていく。


その鬼丸の後ろ姿が、城之内カレンのものと重なった。


「あ、ああ・・・!!」


架陰は刃を拾い上げた。


チクッとした痛みが走り、刃で切った架陰の手に血が滲む。


「あ、あああ!!」


二代目鉄火斎がせっかく打ってくれたというのに。


命をかけてモスマンを討伐して、ようやく手に入れた素材を使ったのに。










一瞬で折られたのだ。










「あああ!! ああああっ!!!!!」


架陰は発狂した。










雨が降り注ぐ。











そこに、カレンの姿も、鬼丸の姿も、もう既に存在しなかった。












第107話に続く



第107話に続く

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