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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
355/530

叩き折るって言ったよね? その②

エベレストに登っても


まだ天には届かず


宇宙に飛び出しても


天は私の足元にある


追い越したいわけでもなく


見下ろしたいわけでもなく


天という概念に触れていたいのだ


嗚呼


まだ天には届かない

2


その事実を突きつけられた時、架陰の頭の中によぎった言葉は、「やっぱり」だった。


目の前の飄々としている男。


縦縞の着物を身にまとい、下駄をカランコロンと踏み鳴らしながら近づいてくるその姿は、潔さを超えた爽やかさを感じた。










一代目鉄火斎。










「それが、あなたの名前ですか・・・」


「うーん。まあ、本名はあるんだけど・・・、この際どうでもいいよね?」


一代目鉄火斎はそう言って、本名を語ることを避けた。


それから、架陰の握っている刀を指さして言った。


「ねえ、もう一度聞くけど・・・、その刀は・・・」


「叢雲のことですね」


架陰は刃の鋒を一代目鉄火斎に向けた。


「そうですよ。この刀は、【二代目鉄火斎】さんに打ってもらいました・・・!!」


「へぇ・・・」


口を三日月みたいにして、にちゃっと笑う一代目鉄火斎。


「前に言ったよね?」


「・・・?」


「次に、そんな鈍を打ったら・・・、叩き折るってさ・・・」


「叩き折る・・・?」


一代目鉄火斎は、着物の袖をまくり、細くも引き締まった腕を上空に向けた。


手首を返して、背後に控えていた鬼丸に指示を出した。


「ねぇ、鬼丸。ちょっと、架陰の相手をしてやってよ」


「いいのですか?」


侍の姿をした鬼丸は、そう確認を取りながら、半歩前に出る。


「うん。任せた」


これから先の戦いを鬼丸に任せて、自分はくるりと踵を返す一代目鉄火斎。


カランコロンと遠ざかっていく背中を、架陰は声を荒らげて引き止めた。


「待て!!」


「何?」


首だけで振り返る鉄火斎。


架陰は息を大きく吸い込むと、肺の中の空気を全て出し切る勢いで叫んだ。


「どうして!! 悪魔の堕慧児に着いているんですか!!」


架陰にはわかっていた。


一代目鉄火斎は、悪魔の堕慧児ではない。人間だ。


人間であり、UMAハンターの武器を造る仕事をしているはずの【匠】が、どうして悪魔の堕慧児側に着いているのか。


それが、不思議でたまらなかった。


「あなたは刀匠ですよね!! じゃあ、どうして悪魔の堕慧児の味方をしているんですか!!」


「悪い?」


開き直ったような声だった。


「言っておくけど、僕は刀匠である。だけど、UMAハンターの味方じゃない」


その言葉を聞きながら、架陰は目を泳がせて、架陰を取り囲む二人の悪魔の堕慧児を見た。


笹倉。


そして、鬼丸。


三人とも、武器を装備している。


その武器は恐らく、一代目鉄火斎によって打たれたものだ。


「僕は、悪魔の堕慧児の味方だよ?」


そう言って、指を鳴らす一代目鉄火斎。


それを合図にしてか、二つ向こうのビルの屋上から、唐草が下駄を鳴らしながら跳んできた。


一代目鉄火斎の横に着地する唐草。


彼は、気を失った城之内カレンを脇に抱えていた。


それを見た瞬間、架陰の背中に冷たいものが走った。


「カレンさん!!」


なりふり構わず、唐草に斬り掛かる。


「させん」


鬼丸が目の前に立ち塞がり、架陰の振り下ろした刃を、刀の鞘で受け止めた。


「くそ!! 退けよ!!」


「ならば、この私を倒してみるか?」


架陰は刀を鬼丸の鞘にねじ込みながら、カレンの名を呼ぶ。


「カレンさん!! カレンさん!!」


しかし、反応はない。


カレンは、唐草の脇に抱えられたままぐったりとしている。額から血液がぽたぽたの流れ落ち、足元に広がった水溜まりを染めていた。


唐草はニヤッと笑い、架陰に言った。


「ごめんごめん。ちょっと、この女の子を貰って行くよ?」


「お前らっ!! カレンさんをどうするつもりだ!!」


「安心しな」


そう言ったのは笹倉だった。


「直ぐに、お前も迎えに行くからよ」


雷撃が放たれる。


架陰は鬼丸に振り下ろしていた刃を引くと、地面を蹴ってその場から飛び退いた。


雷撃が水たまりを弾き、白い煙を巻き起こす。


視界が曇る。


霧の中から、鬼丸が、飛び出してきて、架陰に向かって鞘に収められたままの刀を振り下ろした。


ガンッ!!!


と、額に衝撃が走り、吹き飛ばされる架陰。


「くっ!!」


脳震盪を起こした架陰は、平衡感覚が狂うのを感じながら、空中で体勢を整えた。


着地する。


しかし、ぐらりとバランスを崩して、地面に手を着く。


「っ!!」


目の前に立ち塞がる鬼丸。


「笹倉。唐草! そのおなごを連れて行け」


「了解!!」


「はーい!!」


カレンを抱き抱えた唐草は、屋上のアスファルトを蹴って遠くに跳躍していった。


架陰は追いかけようと立ち上がったが、鬼丸が邪魔をした。


「行かせん」


「どけよォ!!」


架陰は怒りに身を任せて、刀を振った。


しかし、鬼丸は指でそれを受け止めた。


「っ!!」


「鈍いな・・・」


そう、失望したように言う鬼丸。


その様子を見ていた一代目鉄火斎が、楽しげに言った。


「じゃあ、あとは任せたよ!! 時間稼ぎよろしく!!」


そのまま、ビルからビルへと飛び移り、遠くに行ってしまう。


待てよ。


待てよ。


「くそっ!!待てよォ!!」


架陰は喉が裂けんばかりに叫んだ。










その③に続く

その③に続く

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