【第102話】 名刀・叢雲 その①
粘土を捏ねて作るは
群青の大地
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「試し斬りに、オレと手合わせしないか?」
「え、手合わせですか?」
「おうよ!!」
自信満々に、架陰に手合わせを願う鉄火斎。
「あの・・・、大丈夫ですか?」
架陰は恐ろしげに聞いた。
架陰は、一応UMAハンターなので、戦闘能力には長けている。もちろん、隣のクロナもだ。
鉄火斎は「オレのこと馬鹿にしてんじゃねぇよ」と眉間に皺を寄せた。
それから、ニヤリと笑い、架陰に手招きをする。
「オレは刀鍛冶だが、基本的な体術は身につけている。師匠の教えだからな。勝敗を決めるわけじゃない。お前の新しい刀の力を試すだけさ」
「わ、分かりました・・・」
ちょうどその時、家の裏の五右衛門風呂を沸かしていたアクアが帰ってきた。
架陰が新たな刀を握っているのを見るや否や、興味津々に彼に駆け寄った。
「おっ!! 新しい刀、できたみたいね」
「はい。【叢雲】って言います」
「どうする? 私が試し斬りの相手になってあげようか?」
タイムリーだった。
すぐ様、鉄火斎が抗議する。
「おい!! アクアさん!! 架陰は今からオレと手合わせするんだ!! 邪魔しないでもらおうか!!」
「へえ」
凄む鉄火斎に、アクアはいたずらっぽく微笑んだ。
半歩下がり、架陰の頭をポンポンと撫でた。
「じゃあ、私とクロナは傍で見てるから、好きに暴れていいよ」
「いいんですか?」
「だって彼・・・、結構自信あるみたいだし」
見れば、鉄火斎は工房の方からもう一本の刀を取って出てきていた。
ニヤッと笑い、刀を抜く。
「これがオレの刀!! 【名刀・鉄火】!!」
銀色の刃に、鮮血のような赤い刃紋が現れた刀だ。
「さあ、さっさと始めようぜ!」
「わ、分かりましたよ」
架陰は若干の戸惑いを感じながら、戦闘態勢に入った。
アクアが「始め!!」と号令を出す。
その瞬間、二人同時に、刀を地面に突き刺した。
「名刀【叢雲】!! 能力【魔影拡大】発動!!」
「名刀【鉄火】!! 能力【炎拡大】発動!!」
突き刺した刃を中心として、地面に黒いシミが広がっていく。
ズブズブ、ズブズブと、波打つ水面のようにそれは揺れて、黒い龍が首を擡げた。
「凄いな・・・、纏わせていなくても、ちゃんと形状を保ってる・・・」
「おら、よそ見してんな!!」
鉄火斎の声に、前方を見る。
鉄火斎の突き刺した刃の中央から、メラメラと赤い炎が広がり、彼を取り囲んでいた。
「オレの能力【炎】だ。この【鉄火】は、オレの炎の射程距離を広げる役割を持っているのさ」
「へえ・・・」
架陰はなぞるような返事をした。
熱気がこちらまで漂ってくる。頬が焼けるようにヒリヒリとした。
これが、二代目鉄火斎の能力、【炎】。
単純明快な能力だ。ただ、炎を放つだけ。
アクアと同系統の能力だと言っていい。
「さあ、来いよ」
「行きますよ!!」
架陰は虚空に向かって、叢雲の紫の刃を振り下ろした。
「【黒龍】!!!」
刀と連動して、魔影で構成された黒龍が動き出す。
「シャアッ!!」とひと鳴きすると、長い胴体をうねらせながら鉄火斎に襲いかかった。
「火炎!!」
鉄火斎は刀の鋒に、辺りの炎を収束させると、黒龍の鼻先に爆炎を食らわせた。
ドンッ!!
衝撃波が巻き起こる。
「くっ!!」
吹き飛ばされたのは、鉄火斎の方だった。
「いいねぇ!! さすがオレの刀だぜ!!」
押されているのは鉄火斎の方だと言うのに、彼はおもちゃを貰って喜ぶ子供のように満面の笑みだった。
空中で身を捩り、着地。
「気をつけなければならないのが、こうやって、刀の射程距離から離れた時だな。射程から出てしまうと、せっかくの能力の領域が無くなっちまう」
もう一度、地面に刀を突き刺した。
「その時は、こうやってまた能力を発動させるんだ」
再び、地面に炎が広がり、メラメラと燃え上がった。
その光景に、架陰は既視感があった。
(あの光景・・・!!)
思い出すのは、架陰奪還作戦の時の、夜行との戦闘だった。
夜行も、領域系の武器【地を這い仰ぎ見る黒狼の脊椎】を装備していた。
彼は、その武器の刃を地面に突き立て、能力の【獄炎】を発動させたのだ。
(夜行の【地を這い仰ぎ見る黒狼の脊椎】と、鉄火斎さんの、【名刀・鉄火】・・・、どこか、似ている?)
単純に、名刀・鉄火は、夜行の武器の下位互換だった。
「何ぼさっとしてやがる!!」
鉄火斎に怒鳴られて我に返る。
目を向ければ、目の前に、鉄火斎が放った火炎が迫っていた。
「【黒龍】!!」
すぐ様、叢雲の刃で、魔影で構成された黒龍を遠隔操作すると、炎にぶつけて相殺した。
その②に続く
その②に続く




