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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
323/530

勝負に負けて賭けに勝つ その③

怪獣の背より苔を切り出して


口の欠けた椀に茶を注ぐ

3


気がつくと、架陰は再び精神世界の中に立っていた。


目の前には、当然のようにジョセフと悪魔が立っている。


「ジョセフさん・・・、悪魔・・・」


「コノ馬鹿」


悪魔が鋭い爪で、架陰の額を小突いた。


「何故ワシガ【悪魔】ト呼ビ捨テデ、ジョセフガ【ジョセフさん】ナンダ・・・」


「え、それを気にしてるんですか?」


「まあ、いいじゃないか」


ジョセフが悪魔をなだめた。


「架陰。今、悪魔は上機嫌なんだ。気にしなくていいよ」


「え、上機嫌なんですか?」


「うん。すっごくテンションが上がってるよ」


「馬鹿言エ」


悪魔はそっぽを向いてしまった。


「気ニ入ラナイ下級悪魔ヲ追イ払ッタダケダ」


「またまた、照れちゃって」


悪魔との軽い茶化し合いを済ませたジョセフは、真剣な眼差しで架陰の方に向き直った。


「と言っても、かなりやばい状況だったね」


「はい・・・」


架陰は先程のスフィンクス・グリドールとの戦いを思い出しながら頷いた。


能力【千里眼】は、半径4000キロ圏内の空間を全て視認することができる。故に、奇襲を仕掛けることはほぼ不可能。更には、【壱式】の追加効果で、相手をひるませることだってできる。


能力だけでも恐ろしいというのに、並外れた戦闘能力も、スフィンクス・グリドールの武器だった。


架陰が魔影肆式を発動したというのに、優勢だったのは序盤のみ。あとは、攻略法を見つけたスフィンクス・グリドールに押し切られてしまった。


「とりあえず、スフィンクス・グリドールの【千里眼】の能力は悪魔が封じ込めた。上位悪魔の彼なら、スフィンクス・グリドールに取り憑いている下位悪魔に勝てるというわけだね」


「でも、完全に封じ込めたわけではないですよね?」


「そうだね。時間が経てば、悪魔の封印の効力は切れる」


「そうなると、また襲って来るんじゃ・・・」


「ソノ時ハ、マタワシガ封印スルダケヨ」


「つまり、しばらくはスフィンクス・グリドールは襲ってこない」


「ああ、そうなりますよね」


架陰は合点しながら、下唇を噛み締めた。


今回の戦いは、架陰が負けた。悪魔の力で、結果的には撃退に成功したが、やはり胸の中に詰まるものがある。


(肆式でも、勝てなかった・・・)


架陰の心の中を読んでか、ジョセフが「大丈夫だよ」と言った。


「あれは【肆式】じゃない」


「え? 肆式じゃない?」


「まあ、【肆式】だけど、正確に言えば、【使いこなせていなかった】と言うべきかな?」


「使いこなせていなかったんですか?」


「うん。魔影の能力は、【壱式】、【弐式】【参式】、【肆式】と上がっていく度に、発生する魔影の量が増加するってことは教えたよね? 魔影の量が増えれば増えるほど、君はその分の魔影を操らなければならない」


「はい」


「先程の君は、一度は【魔影】の収束に成功することができたけど、あとのは散々だったよ。全ての魔影を操れていないから、本来の出力を発揮することができていなかった・・・」


「そんなぁ・・・」


慰めの言葉かと思えば、かなり辛辣な内容だった。


肩を落とす架陰を見ながら、ジョセフはクスリと笑った。


「まあ、安心しなよ。つまり、もっと強くなれると言うことだから」


「そうだといいんですけど・・・」


架陰は、スフィンクス・グリドールを含めた、最近の戦いを振り返っていた。


【架陰奪還作戦】での、悪魔の堕慧児や、夜行との死闘。スフィンクス・グリドールとの死闘。


そして、このハンターフェスに参加していた数多のUMAハンター達との戦い。


どれも一筋縄ではいかなかった。何度も死を見た。


(これからも、この戦いは続くのか・・・?)


表情を強ばらせる架陰の背中を、ジョセフが叩いた。


「とりあえず、今は休むといい。何が襲ってこようと、その時は僕と悪魔が君を守るから」


「ワシハ別ニ死ンデモラッテモ良カッタノダガナ」


「悪魔、ツンデレはやめようよ」


「ナンダソレハ?」


「さあ、おやすみ。架陰。みんな待っている。早く傷を治して・・・、新しい刀も手に入れなければならないだろう?」


「あ・・・」


その時、架陰は思い出した。


スフィンクス・グリドールの手によって、愛刀の【名刀・赫夜】が粉々に砕かれたということに。


「はい・・・」


「ほら、行っておいで・・・」


ジョセフに背中を押されて、市原架陰は暗闇の向こうへと歩き出した。










激闘のハンターフェス。


桜班四人が戦闘不能になったあとも、それは続いた。


UMAを倒し、UMAハンターと刃を交え。何人ものUMAハンターが戦闘不能になった。











最後まで勝ち残り、そして、一番多くのポイントを入手したのは、兵蔵率いる【向日葵班】だった。









































【ハンターフェス編】・・・完結。






























次回より、新章【二代目鉄火斎編】開幕。

第96話に続く

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