寄生悪魔恢恢 その②
紅の
散りゆく紅葉
朗らかに
我が衣手は
風に揺れつつ
2
「体内に・・・、悪魔を飼っている・・・!?」
精神の世界の中、悪魔とジョセフによって知らされた驚愕の事実に、架陰は動揺を隠せなかった。
「って、どういうことですか? 悪魔は僕の身体の中に・・・」
「馬鹿カ・・・」
架陰の目の前に立っていた悪魔は、そう吐き捨てた。
「悪魔ハ一匹ダケカト思ッタカ?」
「え・・・」
「つまり、こういうことらしい」
悪魔のもったいぶった言葉を、隣で聞いていたジョセフが要約した。
「【悪魔】と呼ばれる生物は、UMAに分類される。そして、その数は一匹だけじゃないんだよ。蝉の中にもアブラゼミとかミンミンゼミがいるみたいに、様々な種類がいるんだ。そして、架陰。君の精神の中に住み着いているこの悪魔とはまた別の個体が、あの【スフィンクス・グリドール】に取り憑いているんだよ・・・」
「別個体・・・!?」
架陰が理解を始めたのを見て、悪魔が裂けた口角をにまっと上にあげた。
牙が覗き、鈍く光る。
「ソウダ・・・、悪魔ノナカ二モ様々ナ種類ガアル。サシズメ、ヤツハ【DVLウイルス】ヲ餌ニシテ本物ノ悪魔ヲ呼ビ寄セタンダロウヨ・・・」
「どうしてそうする必要があるんですか?」
「ソウシタ方ガ、【有利】ダカラダ・・・」
「有利?」
「アア。架陰。貴様ノ能力ノ【魔影】ハ、イワバ【借り物】ノ能力。ワシノ【悪魔】ノ能力ト、ジョセフノ【影】ノ能力ガ融合シタモノダ」
悪魔はそう言ったあと、「つまりこう言うことだ」と続けた。
「【悪魔】ノ能力ハ、主ニ【能力の強化】。ヤツガ元ヨリ持ッテイタ能力ヲ強化スルノニ役ニタツンダヨ・・・」
そのタイミングで、隣にいたジョセフが口を開いた。
「架陰・・・、僕が生きていた頃の能力は、【影】だったんだ。なんてことの無い能力だ。自分の身体を影に変身させて、あらゆる物理攻撃を無効化する。というものだ。だけど、悪魔の能力と融合して以来、その【影】と触れ合った瞬間に衝撃波が発生するようになったんだ。これが、今君が使っている【魔影】の能力の原型だね」
「じゃあ・・・」
「ああ。恐らく、あのスフィンクス・グリドールという男は、悪魔を体内に取り込むことのメリットを理解している男だ。君みたいに、望まぬうちに取り憑かれていたのではなく、自ら、悪魔と契約を結んだ男・・・」
ジョセフが手を伸ばしてきて、架陰の肩をぽんと叩いた。
「とにかく、スフィンクス・グリドールは危険だ。放っておけばどんな事態になるか分からない」
その点については、悪魔の方も同感だったらしい。
「安心シロ。ヤツニ取リ憑イテイルノハ【下級悪魔】ダ。ワシノ実力ニハ及バナイ・・・。ダガ・・・、本体ノ実力ハ確カナヨウダナ・・・」
赤黒く光る視線を向けられた。挑戦的な目だ。
「貴様ニ倒セルカナ?」
※
「今、悪魔の世界に向かってたでしょ?」
スフィンクス・グリドールの飄々とした声で、架陰は我に返った。
「・・・・・・」
顔を上げる。
一秒と掛からない一瞬の気絶だったが、スフィンクス・グリドールにはおみとおしだった。
「あーあ。しくじっちゃったなぁ・・・」
スフィンクス・グリドールは天を仰いで頭を抱えた。
「だから、君に会いたくはなかったんだよ。対峙してしまえば、僕が【悪魔】を飼っていることが、君の中に住み着いている【悪魔】にバレてしまうからねぇ・・・」
「・・・・・・、はい。いまさっき、悪魔が僕に教えてくれました・・・」
スフィンクス・グリドールは、顔を覆った指の隙間から鋭い目を覗かせた。
「ねぇ、君の悪魔はどんな形をしているんだい?」
「っ!」
「いいだろう? 教えてくれよ。ただの好奇心なんだ・・・」
架陰の耳元で、ジョセフが「答えるな」と囁いた。
架陰は息を深く吸い込んで口を閉ざした。
「言いたく、ありません・・・」
「そうか」
スフィンクス・グリドールは肩を竦めた。
「じゃあ、こうしよう。僕の悪魔の形を教えてあげるよ」
「・・・・・・」
架陰の耳元で悪魔が「聞イテオケ。情報ハ有益ダ」と囁いた。
「ギブアンドテイクといこうよ。僕は僕の悪魔を君に教える。君は僕に悪魔について教えておくれ」
「・・・・・・いえ・・・」
架陰は錆び付いたように固まった首を横に振った。
刀を中段に構える。
「ギブアンドテイクではこちらの都合が悪い。このままぶっ飛ばして、あなたについて教えてもらいますよ・・・!!!」
「へえ・・・」
スフィンクス・グリドールの口元が裂けるように笑った。
「じゃあ、僕も君をぶっ飛ばして、悪魔について教えてもらおうか・・・」
スフィンクス・グリドールVS市原架陰。
開戦。
その③に続く
その③に続く




