四天王動く その③
擦りむけた手を握る
3
幻影がスフィンクス・グリドールの周りを取り囲んだ。
四方八方、炎。炎。炎。炎。炎。炎。炎。
「おやあ、これは大変」
スフィンクス・グリドールは、至って冷静。それどころか、この幻覚を楽しんでいるように見えた。
「まあ、僕の能力には、【幻影】は通用しないんだけどね・・・」
そう言って、手刀を作り出すと、虚空に向かって一閃した。
ザンッ!!
斬撃が放たれる。
そして、幻影の先にいる、狂華の背中に直撃した。
「がはっ!!」
狂華の背中の布がぱっくりと裂けて、血が噴出した。
赤黒い血液が飛び散る。
「くっ!!」
苦痛に足を止めた瞬間、スフィンクス・グリドールが狂華の頭を掴んで、地面に叩きつけていた。
「はい、捕まえたよ」
素早い。
「くっ!!」
狂華は、地面に顔面を押し付けられたまま、目をスフィンクス・グリドールの方へと向けた。
まずい。
かなりまずい状況だ。
「さてと・・・」
スフィンクス・グリドールは、狂華の髪の毛を掴んだまま、彼女を吊り上げた。
「面白いね。まさか、UMAハンターの中に【悪魔の堕慧児】が紛れ込んでいるとは思わなかったよ・・・」
「や、やめて・・・、放して・・・」
「放すわけないだろ?」
スフィンクス・グリドールがニコッと笑った。
その瞬間、狂華の腹に重い拳が叩き込まれた。
「ごふっ!!」
胃酸が逆流して、喉の奥から溢れた。
ガクッと身体から力が抜ける。
「なるほど、悪魔の堕慧児とはいえ、内臓には弱いようだね・・・」
狂華の苦痛を確認すると、再び拳を放つ。
今度は、少しした。
子宮の部分。
「あぁあああああああぁあああああああああああああああ!!!!!!!」
「この部分をやられて痛いってことは、生殖機能はあるってことだね。なるほど・・・、UMAの姿になっても、人間の基本的能力は持ち合わせているのか・・・。うん、実に面白いよ」
「くっ、そ・・・」
狂華は口の端からだらりと唾液を垂らしながら、スフィンクス・グリドールを睨んだ。
どうにかして、この拘束を解かなければならない。
「げん、えい・・・」
痺れたように動きが鈍くなった手を翳すと、スフィンクス・グリドールに幻影をかけようとした。
しかし、スフィンクス・グリドールは特に表情を変えることはなく、狂華の腹を殴った。
「ああああああああぁぁぁッッ!!」
「もうやめよう。君の【幻影】の能力は、僕には通用しない」
パッと手を離すと、狂華は糸の切れた人形のように地面に伏した。
腹が痛い。
もう、動けなかった。
「とりあえず、君はUMAハンターの名にかけて、【捕縛】させてもらうよ」
「ま、待って・・・」
狂華は、スフィンクス・グリドールに縋った。
「お願い・・・、私は・・・、悪魔の堕慧児だけど・・・、UMAハンターを裏切っているわけじゃない・・・、百合班を、裏切っているわけじゃない・・・」
「ああ、わかってるよ」
スフィンクス・グリドールは、悪意をベッタリと貼り付けた顔で笑った。
「僕が、君に興味があるんだよ」
その瞬間、狂華の意識が途切れた。
「さてと・・・」
気を失った狂華を抱えたスフィンクス・グリドールは、さらりとした髪の毛を揺らし、上空を飛行するヘリコプターを見上げた。
「この検体は、とりあえず回収するとして・・・、次は他のUMAハンターだな・・・」
ニンマリと笑う。
「もう、基本的なデータは取れた。面白い逸材が四人いたな。桜班の、【市原架陰】と、【城之内カレン】。【雨宮クロナ】に、【鈴白響也】・・・」
最強格の男が、動き出す瞬間だった。
第86話に続く
第86話に続く




