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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
288/530

八咫烏 その②

どうせなら純白の翼を


あわよくば絹の衣を


できれば黄金の環を

2


香久山桜の頬から、たらりと冷や汗か流れ落ちた。


背中を虫が這うような不快な感覚に襲われる。


油の切れたロボットのようにゆっくりとした動作で振り返ると、後方の草むらにクロナが倒れ込んでいた。


「・・・、あなた・・・、速くない?」


反応が出来なかった。


クロナが地面を踏み込んだ瞬間、地面の土が舞い上がるよりも先に背中の黒い翼が猛禽類のように羽ばたいた。


突風共に加速して、香久山桜の横を通り過ぎた。


(なんて速いの・・・!?)


恐らく、クロナのあの黒い翼の能力の使い勝手は、「機動力」。


翼を稼働させて風を発生させて、まるで、鳥のような超機動を見せてくるのだ。


(多分・・・、あの羽・・・)


香久山が予測した瞬間、クロナの背中に生えた翼が羽ばたいた。


ぶわっと、生暖かい風が香久山桜の着物を揺らす。


クロナの身体は、天高くに飛び上がっていた。


「わわわっ!? なにこれっ!?」


クロナ自身も、何が起こっているのか理解していない。


やはり、【翼】ということでもある。


(飛ぼうと思えば、空を飛ぶことができるのね・・・)


ここから跳躍しても、香久山桜の斬撃はクロナには届かない。


いきなり高所に立たされたクロナは、深呼吸をして落ち着いた。


「よ、よし!! だんだんわかってきたわ。とにかく、この翼は【飛行能力】という事ね!!」


能力の使い方を理解したクロナは、上空で羽ばたいた。


その瞬間、クロナの身体がミサイルのような勢いで発射された。


目にも止まらぬ速さで、地上の香久山桜へと突っ込んでくる。


「っ!?」


桜は咄嗟の判断で横に避けていた。









ドンッ!!!!










クロナは、頭から地面に突っ込んでいた。


土煙が舞い上がり、めくれ上がった地面が香久山を直撃した。


「くっ!」


着物の袖で粉塵を吸い込まぬようにする。


土煙が晴れた。


クロナは地面に空いた巨大なクレーターの中央でうつ伏せになって倒れ込んでいた。


「ぷはっ!!」


地面にめり込んだ顔を抜く。泥だらけ擦り傷だらけだった。


「何よこれっ!!」


「どうやら、能力を使いこなせていないみたいね・・・」


香久山桜は、再び薙刀を引っ込めて、クロナに近づいた。


「どうするの? このままじゃ自滅するわよ?」


「わかってますとも!!」


クロナは頬に付いた泥を拭った。


背中にはまだ翼が生えた状態。


(持続時間はかなりあるようね・・・)


クロナの様子を眺めながら、香久山桜は、薙刀を握る力を緩めた。


本来なら、もう既に決着はついているはずだった。


能力に目覚めたはいいものの、それを使いこなすことが出来ないクロナ。香久山桜がその気になれば、彼女の意識を刈り取ることは容易。


しかし、香久山桜自身、クロナの能力には興味があった。


(十年前の事件以降・・・、能力者は生まれていない。それなのに、この桜班の女の子は、能力に目覚めた・・・?)


いや、果たしてこれは能力と呼ぶべきなのだろうか。


クロナの背中に生えた翼。


舞い散る羽を一枚一枚じっくりと観察されば、その羽を構成するものが、【黒い粒子】であるということが伺える。


(この黒い粒が、寄り集まって、あの子の翼を構成している。となると、他の形にもなることができるのかしら?)


そんなふうに、悠長に観察していた。









「まだまだ!!」


俄然戦う気のクロナは、再び翼を羽ばたかせた。


突風が、クロナを押し上げる。


「っ!?」


クロナの身体は、再び空へ。


(なるほどね・・・)


香久山桜は上空のクロナを見上げた。


「高起動の割には、勢いを制限できていない。だけど、空中に身体を固定することは可能。しかも、翼は羽ばたいていない。ということは、念力的な力で浮いているということね。じゃあ、あの羽ばたく動作は、【加速】するため?」


クロナが理解するよりも先に、クロナの能力の理解を始める香久山桜だった。


力の制御に必死なクロナは、香久山の言葉が耳に入らない。


「今度こそ!!」


羽ばたいた瞬間、再びクロナの身体は魚雷のように射出され、地面に突っ込んでいき、盛大な土煙をあげた。


ドシンッ!!


と、地響きが鳴り、思わず香久山は顔をしかめる。


(いくらUMAハンターとは言え、あれは痛いわね・・・)


案の定、クロナは苦痛に悶絶していた。


「痛い痛い!! 顔が痛い!!」


しかし、直ぐに立ち上がると、黒鴉を構え直した。


「次こそっ!!」


少しずつわかってきた。


やはり、この翼はクロナの意思のもとで稼働させることができる。しかし、まだ【イメージ】が確立していないために、力の制御が出来ない。


(落ち着くのよ・・・)


ふっと息を吐く。


翼の役割を考えろ。


翼は空を飛ぶためにある。










(私の戦場は、地面から空へと拡大するの!!)










そう意気込んだ瞬間、クロナの背中に生えた翼がビクンと脈を打った。


(っ!!)


まるで湖面に水滴が落ちたかのように、鋭いものがクロナに流れ込んだ。


「今なら・・・!!」











その③に続く



その③に続く

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