飛ぶ斬撃 その③
空を見上げる
今日もドラゴンはいない
雲の上に乗る
今日も天国には着かない
3
「決着と行こう・・・、お前の防御力と、私の攻撃力・・・、どっちが【強い】のか・・・、確かめようじゃないか・・・」
響也は、Death Scytheを地面と平行に構え、まるで脊椎がねじ切れんばかりに上体を捻った。
すうっと息を吐いて、足に力を溜める。
Death Scytheの刃が光を帯びた。
(あれは・・・、六の技の体勢・・・)
西原は精神を、目の前の四枚の結界に集中させた。
(無理だ・・・、今しがた能力に目覚めた人に・・・、能力を使いこなすことなど、不可能だ・・・)
初見で全てを判断することは出来ないが、響也の能力【死神】は、【超攻撃特化】型の能力。
身体に黒布を纏い、骸骨の面を装着している間だけは、運動能力が飛躍的に向上。そして、Death Scytheのような、湾曲した刃から【斬撃】を放つ事ができる。
斬撃は、全てを切り裂くわけではない。現に、西原の一枚の結界を半壊させることしか出来なかった。
(まあ、それだけで十分脅威なのですが・・・)
今まで、西原の結界を破ったUMAはいないのだ。
西原の能力【結界】は、まさに、城之内家に使える西原の意志の現れ。
絶対に、【城之内カレン】を護る。という、決意の塊。
(例え、響也様が、私と同じくらいにカレン様を想っていたとしても・・・、譲ることは出来ない・・・。私こそが、カレン様を護るにふさわしい)
カレンの秘密は、誰にもバレてはいけない。
バレた時は最期、その者の口を封じなければならない。
そして、今まさに、その答えにたどり着こうとしている響也は、西原の始末の対象だった。
(使いこなせるわけが無い・・・)
西原はそう思った。高を括っているわけではない。今までの経験が教える、「決定事項」であった。
響也は、能力を使いこなせない。
「行くぞ・・・」
その瞬間、響也は地面を蹴った。
飛躍した脚力が助力して、踏み込んだ部分の地面が粉砕する。
空気を切りながら、弾丸のように発射された響也の身体が、西原の結界に迫った。
「死踏・・・、六の技!!!」
死踏・六の技は、響也の技の中で、最高クラスの攻撃力を発揮するもの。
強力な踏み込みとともに、自分自身を発射させて、勢いそのままに鎌を振り下ろす。
響也のDeath Scytheは、【死神】の能力の斬撃を纏ったまま、西原に斬り込んだ。
「【死神刈り】ッッ!!!」
響也の一撃が、西原の張った結界に叩き込まれた。
能力と、能力の衝突。
ドンッ!!!!!!!
押す力と押し返す力がせめぎあい、爆音波が発生した。
木々が揺れ、地面の砂が巻き上がる。
鼓膜が割れんばかりの轟音が二人を襲った。
「おおおりゃあああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!!!!!」
響也の雄叫び。
その瞬間、西原の張っていた結界に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。
「っ!?」
ピシッと、渇いた音を立てながら、亀裂は広がっていく。
(まずいな・・・)
響也の斬撃の強さが、西原の見立てを大きく超えていた。
このままでは、結界は粉々に破壊され、その刃が西原に届く。
(ですが・・・、諦めませんよ・・・)
西原は、結界の後ろで直刀を下段に構えた。
次の瞬間、西原の結界が粉砕する。
「おらあっ!!!」
響也は、血走った目で西原を睨むと、斬撃を纏ったままのDeath Scytheを一閃した。
西原は、指を鳴らして、直刀の刃に結界を施す。
「【補助結界】・・・【刃】!!」
結界を纏った刃と、斬撃を纏った刃の衝突。
ギンッ!!!
折れたのは、西原の方であった。
結界は、粉々に砕け、折れた直刀の刃が空中を舞う。
「勝った!!」
響也は、Death Scytheを西原にねじ込もうとした。
その瞬間、響也の心臓が破裂するかのような痛みに襲われた。
「っ!?」
パリンッ!! と、硝子が割れるような音がしたかと思うと、響也の顔面に装着していた【髑髏の面】が粉々に砕ける。
響也の驚いた顔が、姿を現した。
「何いっ!?」
能力が、解けたのだ。
あとは一瞬だ。響也の身に纏っていた黒布は、空気に溶け込むようにして消滅。Death Scytheも、斬撃の光を失った。
響也は、勢いそのままに、Death Scytheの尖った部分を西原の肩に突き刺す。
しかし、能力発動時より格段に威力は落ちていた。
「くっ!!」
西原は、肩の痛みに耐えながら、空中を舞っていた、直刀の刃を掴んだ。
そして、それを響也の腹に突き刺す。
「っ!!」
「うぐっ!!」
二人は、苦悶の表情となる。
負けられない。
負けられない。
負けられない。
負けられない。
負けられない。
その一心で、お互いに突き立てた刃を、その肉の向こう側にねじ込む。
そして、二人は気を失い、地面の上に倒れ込んだのだった。
桜班・班長【鈴白響也】・・・脱落
薔薇班・四席【西原】・・・脱落
第81話に続く
第81話に続く




