西原外伝 その⑥
ゾロ目指す賽子
こいこい花札
おはじき飛んで
童部の影
6
初めて、蓮花様の子供たちと出会った時、私は、「ああ、これが、子供を産むことか」と思った。
触れれば壊れてしまいそうな、柔らかな身体。クリっとした瞳。蓮花様に似た、柔らかな茶髪。
蓮花様のように、誰にも物怖じせず、人懐っこい笑みを浮かべて、私に歩み寄るのだ。
私が産んだわけではない。私の子供ではない。それなのに、愛しくて、悲しくて、泣きながら叫び出したくなるような、そんな感情が湧き上がってきた。
「今日から、貴方様たちの教育係を努めさせていただきます、西原です。よろしくお願いします・・・」
双子。
城之内花蓮様と、城之内紅愛様。
同じ顔。同じ声。同じ背の高さ。同じ服。
まるで、私をからかうかのように、区別をつけることを困難にする姿だった。
「ええと、御館様・・・」
私は、横にたっている御館様に聞いた。
「どちらが、花蓮様で、どちらが、紅愛様なのでしょうか?」
「すまんな」
御館様は、案の定困惑している私を見て、ガハハと笑った。
そして、私に、この二人の双子の見分け方を教えてくれた。
「髪飾りで見極めろ。右にヘアピンがあるのが花蓮で、左にヘアピンがあるのが紅愛だ。大丈夫だ。触れ合っていれば、そのうち分かるようになる」
「そうですか・・・」
私は、目の前で目を輝かせている二人を見比べた。
ええと、右にヘアピンがあるから、この方は花蓮様か。
そして、左にヘアピンをしているのが、紅愛様か。
つい最近二歳になった双子は、声を揃えて私におじぎをした。
「「よろしくおねかいします!!」」
私は、二人を抱きしめた。
「私に、お任せ下さい・・・」
小さくて、柔らかな身体。
でも、小刻みに震えていた。
※
それから、教育係を任せられた私と、双子の楽しい日々が始まった。
最初は緊張して、口数も少なかった二人だったが、日々を積み重ねる度に、心を開いてくれた。
「西原さん」という呼称が、いずれ「西原」になっていた。
私も、「花蓮様」、「紅愛様」と、ヘアピンを見なくても、二人を区別することができるようになった。
基本的に、教育方法は自由だったが、御館様から「これだけはさせておけ」と言われたことはしっかりと守るようにした。
UMAハンターになるためには、戦闘訓練は必須。
二歳から、その戦闘訓練を叩き込んだ。
もちろん、ムチを片手に、扱きながら。という乱暴なことはしなかった。
できるだけ、楽しみながら戦いに慣れて欲しかったのだ。
だから、私は「戦闘訓練」と称して、双子と一日中遊んだ。
鬼ごっこをした。
かくれんぼをした。
時々、ゴムの刀を持たせて、チャンバラごっこもした。
一日中走り回り、汗まみれになったら、まるでプールのような広大な、城之内家専用銭湯に連れて行き、三人で一緒に入った。
そこで、泳ぎについても教えた。
一緒に、お菓子を食べた。
双子が、「いきたい」と言えば、どこにでもリムジンに乗せて連れていった。
幸せだった。
もちろん、私は、蓮花様が家を追い出される時に言い残した「私の子供を護ってね」という言葉を忘れていない。
少しでも、二人が危険なことに巻き込まれたら、身を呈して守った。
特に、四歳を越えて、探究心が溢れている二人は、よく私の目を掻い潜ってどこかに消えてしまう。あの頃は、何度も肝を冷やして、寿命を全うする前に死ぬのではないか? と思うほどだった。
花蓮様と、紅愛様。
二人は、どれだけ年月を重ねようが、その容姿に違いが現れることはなかった。
声も一緒。
顔も一緒。
髪型も一緒。
時々、お互いに入れ替わって、花蓮様なのに「私が紅愛よ」と言ってみたり、紅愛様なのに「私が花蓮よ」なんて言うイタズラをされたが、私にはおみとおしだ。
他の従者たちには好評だった気がする。
二人は、着実に力を付けていった。
私の教育の賜物。と言うよりも、さすが、御館様と蓮花様の遺伝子を受け継いでいる。と言ったところだろう。
UMAハンターとして、二人は才能を遺憾なく発揮した。
御館様から受け継いだ、頭の鋭さと、身体能力の高さ。
そこに、蓮花様から受け継いだ身体の柔軟さが加わる。
五歳でUMAを討伐してしまった時、私は、「この二人は大物になる」と、親バカながら思ってしまった。
忘れていたわけではない。いずれ、この双子の一人は、【忌み子】として養子に出される。城之内家を追い出される。
だが、彼女達の人生のほとんどを共にしていた私から見ても、二人の実力に優劣をつけることは出来なかった。
それに、御館様だって、二人の様子を微笑ましく眺めていた。時々、「○○についても教えたのか、よくやったぞ」と、私をお褒めになった。
だから、心のどこかで安心していた。
「この二人は、大丈夫だ」と。
その⑦に続く
その⑦に続く




