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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第12話 ありがとうお姉ちゃん その①

腐り骨と成れ


朽ちて髪と成れ


残りて死と成れ


死して肉と成れ

1


(どうにかして、吸血樹の本体をこの空の下に引き摺り出したいところだな・・・)


響也は、地面から次々と飛び出して響也を串刺しにしようとする枝を、ひらりひらりと躱しながら考えた。


(さすがに、荷が重いな・・・)


響也は冷静な判断を下した。


地面を蹴って、再びジャングルジムの上に戻った。


かたかたと震えている男の子を脇に抱えた。


「ここは撤退だな」


吸血樹は、ジャングルジムの上まで枝を伸ばしてきたが、先に響也が跳躍して公園の敷地から脱出する。


「うわあああっっ!!」


男の子は響也の腕の中で魚のように暴れた。当然だ。響也は、屋根から屋根へと飛び移りながら移動しているのだから、小学生にとってはかなりの恐怖だ。


「大人しくしろ。今、病院に向かってる」


屋根から屋根。電柱から電柱へと飛び移る。


(何とか、吸血樹の手から逃れたな・・・)


10分ほどで、響也はそこそこの規模を持つ市民病院に到着した。


ガラスの自動扉を開いて現れた着物の少女と、腕に枝を突き刺している男の子を見た時、院内は騒然とした。


「緊急だ。頼む」


響也は外科にUMAハンター証明手帳を見せて、直ぐに男の子の手当に当たらせた。枝は切断したものの、まだ男の子に刺さっている。


禿げた医者は、「摘出手術をします」と言って、男の子を手術室へ連れていった。


これで安心だ。とは言えない。まだ、あの、男の子に刺さった枝に毒などがある可能性があったからだ。


(それに・・・、あの枝は、十分な戦利品だ・・・)


響也は、男の子の腕から枝が摘出されるのを、手術室の近くで待った。


手術は、ものの数分で終わった。


「UMAハンターさん、摘出、出来ましたよ」


重厚な扉が開き、手術室から医者が出てきた。


「そうか・・・」


響也は持たれていた壁からすくりと立ち上がった。


「あんた、医者なら、あの枝について調べられるか?」


「えっ?」


医者はシワだらけの顔に困惑の色を浮かべた。当然だ。まだ高校生にしか見えない少女に、タメ口を使われるのだから。


「で、できますよ」


「ならしてくれ。あの枝がどう言った生物なのか・・・」


「わかりました・・・」


遅れて、腕に包帯を巻いた男の子が出てきた。しっかりと自分の足で立って歩いている。


響也は男の子に視線を移した。


「おい、大丈夫か?」


「うん。大丈夫だよ・・・」


男の子は恥ずかしそうにそう言った。


横から、医者が口を挟む。


「一応、枝に毒はありませんでした」


聞く手間が省けた。


医者があの枝を調査している間、響也は待合室の椅子に座り、売店で買ったエナジードリンクを傾けていた。


隣に、男の子がちょこんと座る。


「ねぇ、それ美味しいの?」


「美味いよ」


「僕も飲んでいい?」


「ダメだ。もう少し大きくなってからな」


さすがの響也も、カフェインの入ったものは飲ませない。


「みんな、大丈夫かな?」


男の子は、他にあの公園にいた者達のことを心配していた。


響也は鼻で笑う。


「自分を見捨てたやつのことの心配ができるのか」


男の子を試すつもりで言った。


響也自身は、あの男の子達が、彼を見捨てたとは思っていない。いきなり地面から飛び出してきた化け物を見て、「立ち向かおう」だとか「助けよう」と思うやつの方が異常だ。


よっぱどの自信家か、よっぱどの強者か。


「そうだな」男の子は、病院の天井で回る換気扇を眺めた。「でもやっぱり、友達だし、心配はするよ」


「そうか・・・」


響也はつまらなそうに呟いた。


飲み干したエナジードリンクの缶を手で潰す。


「ゴミの捨て方、分かる?」


「わからん。捨ててこい」


もちろん、知っている。ゴミ箱に入れればいい話だ。だが、煽りとも言える男の子の発言に、響也は素直に屈しなかった。


響也から空き缶を受け取った男の子は、スキップをしながら、ゴミ箱に捨てに行った。


その間に、調査を終えた医師が歩み寄る。


「調査、終わりました」


「ありがとう。で、どうだった?」


医者は「うちの病院では、顕微鏡で見るしか出来なかったのですが・・・」と言って始める。


「あの【枝のような物質】に、植物特有の、【導管】や、【師管】は見られませんでした。その二つに似ても似つかない、管が、大量に通っています。どちらかと言うと、管が、枝を構成していました」


管・・・、そこを通して体液を吸収しているのだろうか。


「あと、細胞も調べましたが・・・、【細胞壁】が見られませんでした」


「んっ、それって・・・」


「はい、あの枝を構成していたのは、【動物細胞】です」







しばらくして、男の子の母親が迎えに来た。


命を救った響也に対して、母親は何度も頭を下げていた。傍から見れば、着物を着た神様に祈りを捧げているようにも見えたかもしれない。


だが、響也は上の空で、「ああ・・・」「うん・・・」と素っ気ない返しをした。


医者の言っていた、「動物細胞」がずっと頭に引っかかっている。


確かに、響也を攻撃してきたあの枝には、明らかな殺意と意思があった。しかし、見た目も、地面から出てくるという点も、植物に似ている。


(意味がわからん・・・)


眉に皺を寄せていると、響也の着物を誰かが引っ張った。


「ん?」


ハッとして見ると、男の子がにっこりと笑って見上げている。


「どうした、早く帰れ」


響也は普通の口調で言ったつもりだったが、自然と冷たい口調になったらしい。男の子はたじろいだ。


だが、またすぐに笑って、「ありがとう、お姉ちゃん!」と、院内に響く大声で頭を下げた。そして、母親と手を繋いで響也の元から去っていった。


響也は気恥ずかしくて頭をかいた。こういった、はっきりとした感謝は苦手だ。


(まあでも・・・)


響也は遠ざかっていく男の子の小さな背中を眺めた。


(懐かしいな・・・)


ふと、自分が綻んでいた事に気づく。誰も見ていないだろうが、不覚だった。


「帰るか・・・」


もうこの病院で分かることは無い。


響也は医者から吸血樹の検体を受け取ると、病院の出口を目指して歩き出した。







その②に続く

その②に続く

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