風魔手裏剣 その②
キューバリブレを一口
独立運動の声がする
2
「はあっ!!」
響也がDeath Scytheを振り切った瞬間、風魔手裏剣は回転を保ったまま、後方へと流れて行った。
風魔手裏剣が戻ってくる前に赤鬼を倒す算段を立てた響也は、直ぐに赤鬼との距離を詰めた。
(ここで殺る!!)
だが、赤鬼は涼し気な顔。
これから起こることの全てを予測して、勝機に満ちた顔だった。
Death Scythを構えて振りかぶってくる響也に対して、赤鬼は刀を鞘に収め、後退する。
「分かるか? 死神よ・・・」
「ちっ!!」
逃げられることが一番まずい。
逃げられれば、倒すことに時間がかかり、風魔手裏剣が響也の方へと戻ってくる。
あの重量級の攻撃を防ぐのは、容易ではないのだ。
「くそっ!!」
響也は姿勢を低くして、脚の筋肉にエネルギーを蓄積させた。
Death Scytheの刃を引いて、上半身を捻る。
脊椎の関節一つ一つを稼働させ、これから放つ一撃への糧にした。
「死踏・・・、六の技!!」
超強力な脚力で踏み込み、圧倒的スピードと破壊力をもって敵の命を刈り取る、奥の手。
「【死神刈り】!!」
ドンッッ!!!!
響也の踏み込みにより、体育館の床が粉々に粉砕した。
(ちっ!! 足場が悪い!!)
埃と、脆い木の板のせいで、思ったほどの威力が出なかった。
普段の死神刈りとは、半分の力で、後退した赤鬼へと斬りこんだ。
ギンッ!!
赤鬼が短刀を抜いて、響也の振り下ろした刃を受け止める。
ズンっと力が加わり、赤鬼の足腰の関節が軋んだ。
「おらあっ!!」
響也はさらに強く踏み込み、赤鬼を押し返す。
不利な赤鬼だったが、目は笑っていた。
「どうした死神? お前の力はそれだけか?」
「直ぐに首を落としてやるから、覚悟しておけ!!」
「風ってのは、気まぐれなもんなんだ。吹いたり吹かなかったり。だがな、気温や気圧の関係をもってすれば、どこに吹くとか、どんな強さなのか、どこから吹くのかは簡単に予想ができる・・・、つまり、お前が【負ける】という予想は簡単に立てられるんだよ!!」
「何っ!?」
その瞬間、響也の背中に、戻ってきた風魔手裏剣が突き刺さる。
「ぐっ!!」
三枚の刃が、響也の背中の肉を抉った。
ドブッ!!と血が吹き出し、天を仰いだ響也の視界が点滅した。
(まずい!!)
直ぐにDeath Scytheを引くと、赤鬼から距離をとる。
「追え!! 【風魔手裏剣】!!!」
風魔手裏剣は、赤鬼の指示で自在に動き、後退した響也へと追撃をした。
「終わりだ!! 死神!! 風魔手裏剣は止められない!! 貴様でもなあ!!」
「あっそ!!」
響也はDeath Scytheを握っていない左手を、傷ついた背中に回した。
ぱっくりと裂けている傷口に直接手を触れる。
生暖かい感触がしたと思えば、左掌に、自分の血がベッタリと付く。
それを、響也はDeath Scytheの刃に塗りこんだ。
たっぷりと。
「死踏・・・七の技!!」
(七の技だと!?)
その血の塗られたDeath Scytheを、赤鬼から距離をとったままの状態で振り切る。
「【血刈り】!!!」
Death Scytheを振り切った時の衝撃で、刃に付着していた血が、三日月の斬撃の形を描いて赤鬼へと放たれた。
「血の斬撃だと!?」
血で作った、遠距離攻撃用の一撃。
それは、迫り来る風魔手裏剣の横を通り過ぎ、その先にいる赤鬼の肩を抉った。
血であろうと侮ることなかれ。
赤鬼の肩がぱっくりと裂け、自分の体を流れる血が吹き出した。
「こ、こいつ!!」
だが、風魔手裏剣も響也の左肩を抉る。
両者痛手を食らうと、床の上に倒れ込んだ。
「ぐっ!!」
「くそ!!」
立ち上がる時も同じ。二人同時に立ち上がる。
「戻れ!! 風魔手裏剣!!」
「遅いんだよ! この鈍足!!」
響也は左肩と背中の痛みに耐えながら、低い姿勢のまま、赤鬼へと斬り掛かる。
(まずいな、逃げないと!!)
赤鬼は風魔手裏剣が戻ってくるまでの時間を稼ごうと、足に力を込めた。
跳躍して、距離を取るつもりだった。
しかし。
「いけ!! 死神の使い!!」
床を這うようにして、二枚の三日月型の【子機】が飛んでくる。
「っ!?」
その二枚が、赤鬼の両足の腱を切り裂いた。
「ぐはっ!!」
腱を断たれた赤鬼は、自立することが出来ず、その場に膝から崩れ落ちた。
そこに、響也が迫る。
「とった!!」
「まだ負けん!!」
最後っ屁の如く、赤鬼は懐から取り出した玉を響也へと投げた。
至近距離で、【閃光玉】が炸裂する。
「くっ!!」
白い光が目に刺さった響也は、我武者羅にDeath Scytheを振り下ろした。
ガツンッ!!と、手の中に硬い感触が残る。
(仕損じた!!)
だが、これでいい。
「この体勢なら、【参式】を発動できる!」
その③に続く
その②に続く




