クロナVS桐谷 その②
虚偽であることに意味がある
虚偽であることに恋をする
虚偽であることにときめいている
2
「さあ、もっと楽しもうぜ!!」
レイピアを構えた桐谷は、低い姿勢からクロナに斬り込む。
「ちっ!!」
クロナは、刀を下段に構えて、その突きを受け止めた。
桐谷は連続で突きを放つ。
キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!
「こいつ、速い!!」
「そりゃそうだろ!! オレの剣術は、西原さん直伝だぜ!! 捉えられるわけがねえんだよ!!」
「西原?」
クロナの、苦悶の表情がピクっと動いた。
西原・・・。
どこかで、聞いたことがある名前。
その名前に気を取られたおかげで、クロナは、足元への注意が散漫になった。
右足が、落ちていた枝を踏みしめ、パキリと折る。
「っ!!」
足裏で、円柱状の枝が滑り、クロナの足元をすくった。
「しまった!!」
「貰った!!」
桐谷が、がら空きになったクロナの胸に、レイピアの突きを放つ。
クロナの左胸に、鋭い剣の切っ先が触れる。
クロナは歯を食いしばると、軸足を左足に変換して、全力で地面を押した。
後方にクロナの身体が飛ぶ。
「っ!!」
間一髪であった。
切っ先が、クロナの胸に刺さるよりも先に、クロナは突きと同じスピードで跳んで、勢いを受け流したのだ。
「あっぶなぁ!!」
かなり危険なギャンブルであったが、何とか無傷で攻撃を防ぐことが出来た。
仕留めきれなかった桐谷は、頬を膨らませ、不平を洩らした。
「ちっ!! 仕損じたぜ!!」
「お疲れ様!」
クロナは地面を蹴って、桐谷の隙を突く。
ギンッ!!!
二人の刀と剣がぶつかり合う。
【名刀・黒鴉】のクロナと、【名剣・甲突剣】の桐谷の相性は悪かった。
片方にしか斬れる部分がなく、変幻自在に戦闘方法を変えることができるクロナの刀に対して、桐谷の武器は【突き特化】。ピンポイントに、相手の弱点を突いてくる。
切り結ぶことも難しく、反応するのも一苦労。
一撃必殺のレイピアか、連撃の日本刀か。
「ちっ!!」
「くっ!!」
お互いに顔を顰めたまま、刃をぶつけ合う。
ギンッ!!!ギンッ!!!ギンッ!!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!キンッ!!
「大体!! あんた、何者よ!!」
クロナは桐谷の突きを受け流し、腕に自らの腕を回して固定した。
至近距離で、桐谷へと問いかける。
「いきなり襲ってきて、『架陰を夫として頂く』なんて言っちゃってさ!!」
「ああん? あんたには関係ねぇよ!!」
桐谷は腕に力を込めて、クロナの関節固めから逃れようとするが、クロナはさらに強く力を込めた。
「言ってもらわないと困るわ! 架陰は私たちのものよ!!」
「私のものだあ? 市原架陰は、お嬢様のものだ!!」
ドンッ!!!
桐谷は再び地面を強く踏み込んだ。
腕にしがみついたクロナを引きずりながら、木の幹に叩きつけようと駆ける。
「二度は喰らわないわ!!」
クロナは桐谷が進む方向とは逆方向に踏み込み、勢いを相殺した。
「っ!!」
桐谷の動きが止まる。
「おりゃあ!!」
そのまま、桐谷の首にかにばさみを仕掛け、枯れ葉が積もった地面の上に叩きつけた。
「ぐっ!!」
「終わりよ!!」
暴れる桐谷の腕を押さえ込む。
「ちくしょう!! 離せよ!!」
「こっちだって離したいわよ。知らない男の顔に、股を近づけているんだからね・・・、でも、あんた達の目的を教えて貰うまでは、絶対に離さないわ・・・」
「ああああ!! 執事には守秘義務があるんだよ!! お嬢様の命令は絶対だ!! お嬢様が市原架陰に一目惚れしたから、市原架陰を誘拐して婿にしようとするなんて、絶対に言えるわけがねぇだろ!!」
「なるほど、そういう事ね」
「あああ、言っちまった!!」
クロナはふっとため息を吐いた。
この桐谷という男、馬鹿で助かった。
話の整理をすればこういうことだ。
この男が仕えている家のお嬢様が、市原架陰に一目惚れをした。
そして、市原架陰を欲しがっている。
そのため、市原架陰を誘拐するために、このハンターフェスに参加。
邪魔者となりそうなクロナから狙ったという訳だ。
クロナは名刀・黒鴉の刃を、桐谷の首筋に当てた。
「ひい!」
冷たい感触に、桐谷は悲鳴をあげる。
「とりあえず、架陰はつい最近も変な輩に誘拐されたばっかりだから・・・、あげる訳にはいかないのよ・・・」
「なんでだよ!! 市原架陰はお嬢様の婿になって貰う! あんたには関係無い!!」
「関係あるんだな。これが・・・」
クロナは声を潜めた。
そして、キスをするんじゃないかって言うくらい、桐谷に顔を近づけた。
そして、言う。
「架陰は、私の彼氏だから・・・」
その③に続く
その③に続く




