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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
206/530

名刀・ソメイヨシノ その③

真の強者とは


弱者の皮を被っていること

3


百合班班長の香久山桜か、桜班副班長の城之内カレンを撃破。


喜びを噛み締めるのは、瞬きほどの一瞬だった。


「もう一人、近づいてきているわね」


とある者の気配を感じとった香久山は、血がダラダラの流れ落ちる右腕を、着物の袖を割いて作った包帯で縛った。


じわじわと着物に血が滲む。


「止血は、これでよし・・・」


「班長・・・、やっぱり回復薬を飲んだ方が・・・」


心配する狂華。


その頭を、香久山はポンポンと撫でた。


「ありがとう。あなたは本当に優しい子ね。私、あなたみたいな後輩に恵まれて幸せ者よ・・・。だけど、回復薬は温存させるわ。いつピンチになるか分からないし・・・、あなたがいつ怪我をするか分からないしね・・・」


「は、班長・・・」


その瞬間、木々を抜けて、一人の黒い影が、百合班の二人の目の前に飛び出した。


一斉に身構える狂華と香久山。


二人の前に現れたのは、執事のタキシードを着た男だった。


そこそこの身長を有し、骨が浮いた細身の体で、まるで地面に倒れ込んでいる城之内カレンを庇うような体勢をとる。


顔は判別出来なかった。


なぜなら、まるでオペラ座の怪人のような、真っ白の面をつけているからだ。


「・・・、あれは!!」


香久山の表情がぴくりと動いた。


あのタキシードの戦闘服。


それを見た狂華も、何かに勘づいた。


「あれは、薔薇班!!!」










薔薇班。











初にお目にかかる班だった。


そして、城之内カレンと、何らかの関わりがある班でもあった。


タキシード姿の男は低い姿勢のまま、左手に持った、ステッキをフェンシング剣のように構える。


「・・・・・・」


何も喋らない。


先に口を開いたのは、香久山の方だった。


「あなた、私たちを倒しに来たの?」


「・・・」


白い仮面が、ゆらゆらと首を横に振った。


「・・・、違う、カレン様を、助けに来た・・・」


「助けに?」


「・・・、少し、遅かったがな・・・」


そういうと、白い仮面を着けたタキシードの男は、ステッキを地面に置いて、硬い砂利の上に正座をした。


「・・・!?」


香久山と狂華が、これから何が起こるのか予想も出来ないまま、男が面を地面に擦り付ける。


「申し訳ございません!!!」


謝った。


土下座をして、謝った。


「この、薔薇班、四席、【西原】、一生の不覚でございます!!」


「・・・、何を言っている・・・!?」


事情を知らない香久山は、困惑の表情を浮かべた。


なんだ、何が起こっている?


いまさっき、自分は、桜班の副班長を倒した。


それなのに、なぜ、薔薇班の男が駆けつけるのだ?


そして、我々に向かって、恥も知らぬ土下座をする。


困惑する香久山の横で、狂華は内心ニヤリと笑っていた。


(やっぱり、私の踏んだとおりね・・・、城之内カレンと、薔薇班は、何か繋がっている!!)


薔薇班の四席は、涙声で叫んだ。


「後生のお願いでございます!! ここはどうか!! 見逃して頂きたい!!」


「・・・!?」


「もう、これ以上!! カレン様の心を壊さないで頂きたい!!」


「一体、何を言っているの?」


事情が呑み込めない香久山は、ひたすらに困惑した。


薔薇班の四席は、地面にめり込んだ鎖を指さした。


「お嬢様が、【鎖に閉ざされし鬼の逆襲】を使うと言うことは、何らかのタイミングで、心が壊れた証拠!! その心を壊したのは、貴方様だ!!」


それを聞いて、香久山は横目で狂華を見た。


この鎖の武器は、香久山が駆けつけた時点で使っていた。


つまり、この薔薇班の男が言うのが本当なら、その武器を使う引き金を引いたのは、狂華ということとなる。


「・・・、よく、分からないわね」


狂華は額に冷や汗を浮かべて首を横に振った。


「私はただ、この副班長と戦っていただけ・・・」


バレるわけにはいかなかった。


悪魔の堕慧児の命令で、UMAハンターの情報を集めているさなかに、興味本位でこの城之内カレンのことを調べたことは。


特に、自分のことを、慈愛の心を持って接してくれる香久山桜にだけは。


もちろん、カレンの心を壊したのは自分だ。


「・・・、それより」


狂華は話を逸らした。


「なんの事情があるか知らないけど・・・、百合班の二人の前に、現れるということは・・・、やられても仕方ないわよね・・・」


得体の知れない男だが、所詮四席だ。


「ここには、班長と副班長がいる。そして、あなたは四席よ。戦いの結果は、目に見えているわね・・・」


「・・・、見逃して頂きたい・・・」


「そういうわけにはいかないわ。私たちをだって、ハンターフェスの優勝は狙っているもの」


狂華は下駄の鼻緒を引いて、足裏から出刃包丁のような刃を出した。


臨戦態勢を整えた瞬間、それを香久山が制する。


「やめなさい。狂華・・・」


「え・・・」


「四席殿・・・、直ぐに、その副班長を抱えて、この場から逃げなさい・・・」


「感謝致します・・・」


薔薇班の男は、深深と礼を言うと、血まみれのカレンを脇に抱えた。


そして、地面を蹴って、森の奥へと消えてしまった。


「どういうことですか?」


狂華は眉間にシワを寄せて香久山を見た。


「少しでも、ポイントは稼ぐべきですよ!! あんな得体の知れない男を逃がすなんて・・・」


「ダメよ、狂華」


香久山は優しい口調で、狂華をなだめた。


「怖い顔。私はあなたが笑った顔が好きだわ・・・」


「す、すみません・・・」


狂華は顔の力を緩めた。


それを見た香久山はクスッと笑った。


「あの男・・・、強いわね・・・」


「強い?」


四席だぞ?


「見てわかった。あの男・・・、私たちよりも遥かに強い・・・、恐らく・・・、班長クラスに匹敵する強さ・・・」


「四席ですよ?」


「ええ、それが不思議なの・・・」


香久山は顎に手をやって考えにふけった。


「四席があの強さなら・・・、三席、副班長、班長は、一体どれほどの強さになるのかしら・・・」










第63話に続く

第63話に続く

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