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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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妲己の幻術 その③

肉を斬る刃など童部の戯れである


その戯れに興じる我々は


真に斬るべきものを見定めぬ愚者である

3


「行け!!」


響也が声を張り上げた瞬間、Death Scytheから分離された「子機」達は、幻影の中を飛び回り始めた。


「こいつは、Death Scytheの分離体!! 幻術になんぞ惑わされん!!」


響也と八坂に幻術を掛けていた本人は、背中に冷たいものが走るのを感じて、二人から距離をとることにした。


(ちっ、面倒だわ)


狂華は、響也達がこの戦場に足を踏み入れた時から、幻術を掛けていた。


この咲き乱れる花畑も、飛び散る花吹雪も、そして、響也が首を斬り落とした狂華も、全て幻術だ。


二人は、何も無い場所へ凄み、何も無い場所を攻撃していたのだ。


狂華はそれを見て、優越感に浸る。


幻術が掛かっている今、この死神の前に立とうが、気づかれることは無い。


何の心配もすることなく、がら空きの背後に刃を振り下ろすことだって出来た。あの赤スーツの男は、目の前で額に切れ込みを入れても、血が目に入るまで気づかなかった。


(私の幻術は、五感全てを騙すことだってできるのにっ!!)


かなりまずい状況だ。


響也が使用するDeath Scytheが、本当に機械生命体を素材として作られているというのなら、今の自分の居場所は簡単にバレてしまう。


(早く距離をとって、さらに強力な幻影を!!)


だが、Death Scytheから分離した三日月型の刃は、狂華の姿を認識して、まるでUFOのような動きで追ってきていた。


「そこか・・・」


響也が狂華の位置を把握した。


花畑に見せかけた床を蹴り、子機が進む方向へと走り出す。


「え? 響也さん!?」


「あの女の場所を把握した!! 八坂もライフルを構えて来い!!」


狂華の元へと一直線に走ってくる。


(舐めないでよ・・・ )


狂華は歯の付け根が痛むぐらい奥歯を強く噛み締めた。


幸い、響也に自分の姿は見えていない。幻術にかかったまま、子機が指し示す方向に進んでいるだけだ。


つまり、この女にとって、真実を見抜く目の代わりをしているのは、このDeath Scytheより分離した子機。


(幻術【三面鏡】!!)


狂華は手を前に翳し、能力を発動させた。


「っ!?」


その瞬間、響也の周りに三日月型の子機が出現して、取り囲む。


ざっと数えて100機はあった。


「なるほど、子機を増やして、私の目を撹乱させる気か・・・」


(ふふ、どうよ・・・)


狂華の幻影は精巧だ。どれが本物の子機で、どれが幻術の子機が分かるまい。


だが、響也は、周りを取り囲む幻影に見向きをすることもせず、狂華に向かって走ってきた。


(えっ!? 嘘!!)


「残念だな。Death Scytheと子機は繋がっているからな、幻影なんぞに騙されん!!」


響也は姿勢を低くすると、上体を捻った。


「死踏、一の技」


「幻影!!!」


狂華は直ぐに幻影の濃度をあげた。


地面から岩が隆起して、響也に襲いかかる。


だが、幻術とわかっているのなら、躱す必要も無い。


「命刈り!!!」


何も無い場所へと、Death Scytheを振り下ろした。


手応えあり。


空間から、赤黒い血液が吹き出し、響也の頬を濡らした。


その瞬間、空間にガラスのような亀裂が入り、「パリンッッ!」という破壊音と共に、響也を取り囲む世界が変化した。


花が消える。


花吹雪が消える。


岩が消える。


そして、右肩から斜めに傷を入れられた狂華が現れた。


「くっ、そ・・・」


狂華の瞳は赤く変色し、まるで獣のように鋭く光っていた。薄紅の唇からは、白い八重歯が覗き、頭からは狐の耳が生えている。そして、腰の部分から九本の狐色の尻尾が生えていた。


「やら、れた・・・」


狂華は血を吐いて片膝をつく。


その無防備となった首に、響也のDeath Scytheような刃が押し当てられた。


「へえ、なかなか可愛い姿じゃないか・・・」


「そりゃどうも・・・、これが、私の能力、【妲己】だもの・・・」


もう狂華に抵抗する力は残っていなかった。


響也は「言い残すことは?」と言って、Death Scytheを手前に引いた。狂華の首の皮が一ミリ切れる。


狂華に言い残すことは無かった。


はっきりと、「ないわ」と言う。


「じゃ、終わりだ」


響也はDeath Scytheを思い切り引く。三日月の刃は、狂華の首の肉にめり込み、胴体から分離させる。


これで、狂華は死ぬはずだった。


だが、響也が狂華を殺すよりも先に、響也のDeath Scytheが、折れた。


「えっ!?」


ゴトっと、響也のDeath Scytheの柄から重さが消えた。


改良で三倍の大きさになった刃が、床に落ちている。


Death Scytheは、ただの鉄の棒になっていた。


「お前・・・、今、何をした!?」


「・・・、私は、何もしていない・・・」


狂華は荒い息を立てながらも、どこかほっとしたため息をついた。


「【鬼丸】殿が来た・・・」


「・・・!?」


その瞬間、響也は背筋に走る冷たいものを感じた。


背後で、八坂の呻き声が聞こえる。


「ぐあっつっ!!!!」


「八坂!?」


振り返ると、八坂は片膝をついてくるいる状態だった。肩からどくどくと血液が流れ落ちている。


Death Scytheの子機が、生物反応を感知する。


響也は反射的に身構えた。


「ぐっ!!!!」


響也の右胸がカッと熱くなる。


次の瞬間には、血が吹き出していた。


「斬られた!?」


見えない。


見えなかった。


今の攻撃は、狂華の幻影によるものでは無い。


もう一人いる。


もう一人が、目にも止まらぬ速さで、響也に切り込んできたのだ。


「ほう・・・、咄嗟に首を庇ったか・・・」


響也の背後に、誰かが立った。


響也は振り返る。


そこには、白い着物に、黒の袴。腰に、架陰の名刀・赫夜のような装飾がなされていない刀を携えた男が立っていた。


男は切れ長の目で、響也を見る。後ろで束ねた黒髪が揺れた。


「すまぬな、侵入者達よ。こちらも少し緊急事態になってな・・・。時間を掛けていられなくなった・・・」


その男の言っている意味を理解するよりも先に、男が腰の刀に手をかけた。


「唐草が始めたこの遊び、終わりにさせてもらう・・・」











響也は一瞬で理解した。


この男は、自分よりも強いのだと。












第48話に続く



第48話に続く

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