ガーゴイルと風 その②
風の神と
雷の神が
取っ組みあって争った
2
カレンの翼々風魔扇が放った竜巻が、笹倉の背中より生える羽を貫いた。
「ぐっ!!」
翼を失った笹倉は、バランスを崩し、落下する。
ドンッ!!!
砂を巻き上げ、胴体ごと地面に叩きつけられる。
「コノヤロウ!!」
笹倉が叫んだ瞬間、穴が開いていた翼が直ぐに塞がった。
翼をひと仰ぎして、再び空中に浮かぶ笹倉。
「油断したぜ。お前のその武器、能力持ちなんだな・・・」
「ええ、そうよぉ」
カレンはニコニコと笑いながら、翼々風魔扇の周りに風を集め始めた。
「とても不利だとは思わないかしらぁ? あなたが空を飛べば、私の風が、あなたを撃ち落とすわよぉ」
笹倉は「そうだな」と、口から垂れた血を舐めた。
「その能力、空飛ぶおれにゃ、厄介だ!!」
翼を仰ぎ、カレン目掛けて疾走する。
「先にお前から片付けさせてもらう!!」
「あらぁ、怖い」
カレンは翼々風魔扇を持ち替えると、空気に切り込むようにして振った。
「風刃!!」
風の刃が三枚、接近する笹倉に放たれる。
「しゃらくさい!!」
空中に飛散する砂煙から、鎌鼬の起動を読んだ笹倉は、空中機動をして攻撃をかわした。
カレンの懐に潜り込み、名刀・雷撃丸を振り上げる。
ギンッ!!!
硬い感触。
鉄平が鉄棍を滑り込ませ、刃を防いだのだ。
「オラァッ!!」
鉄平はカレンを突き飛ばすと、笹倉の前に立ち塞がり、連続で鉄棍を振った。
「ちっ!!」
笹倉は雷撃丸で防ぐ。
下半身が無いせいで、踏ん張りが効かず、少しずつ押され始めた。
(オレの能力は、空を飛べるのは便利だが、近接には不利だよな・・・)
さっさと空中に逃げようとした瞬間、笹倉の頭を誰かが掴んだ。
「っ!?」
「逃がしませんよ・・・」
身長二メートルはあろう大男。椿班副班長、山田豪鬼だ。
笹倉の頭をむんずと掴んだ山田は、剛腕に力を込め、笹倉を顔面から地面に叩きつけた。
ドンッ!!!
地面に蜘蛛の巣状の亀裂が入り、笹倉の頭がめり込む。
「くっ!!」
笹倉は瓦礫の中に顔を突っ込んだまま、歯軋りをした。
(この男、なんて馬鹿力だよっ!!)
直ぐにこの男の手から逃げ出そうとするが、山田の握力は凄まじく、全く動くことが出来ない。
「雷光丸!!」
刀の柄を握りしめ、四方八方に雷撃を放った。
「っ!!」
山田は手を離すと、直ぐに引き下がった。
あの雷撃に少し触れただけで、手のひらが黒く焦げ、赤スーツの袖から煙が上がっていた。
山田は涼しい顔で、丸メガネを押し上げた。
「やはり、あの雷撃に触れるのはまずいようですね」
「ああ、そうだな」
鉄平も少し食らったらしく、肩口から血が滲んでいた。
山田の拘束から逃れた笹倉は、翼を羽ばたいて空中へと逃げた。額から血が垂れていた。
「危ねぇ、危ねぇ」
褐色の左手で傷口を拭うと、傷が一瞬で消え去る。
その様子を見た鉄平は、舌打ちを一つ打った。
「あいつ、治癒能力も持っているのか・・・」
「少々、いや、かなり厄介ですね」
山田が指の関節をバキバキと鳴らしていく。
天井付近に浮いている笹倉は、名刀・雷光丸の鋒を三人に向けた。
(さあて、どう戦うかな。一番厄介なのは、あの風を操る能力を持つ女だ。それから、あの大男。あいつに掴まれたら、簡単には抜け出せねぇ。あの鉄平って野郎は、接近戦になると戦いにくいな。あの棒術は警戒しなけりゃならねぇ)
やはり、一番警戒すべきは、翼々風魔扇を装備するカレン。あの女が放つ風にさえ気をつければ、空中からでも十分戦える。
「よし、行くか!」
笹倉は名刀・雷光丸の能力を発動させた。
刃に電撃が走り、バチバチッ!! バチバチッ!!と眩く光る。
「【雷撃】!!!」
天井から刀を振り下ろすと、雷撃が龍のような形となって、カレンに目掛けて落とされた。
「翼々風魔扇!!」
カレンは翼々風魔扇の竜巻を放って対抗するが、エネルギーの塊である雷撃にかき消される。
「っっ!」
カレンは飛び退いた。
足元に雷撃が落ちる。
身体中の神経を狂わされるような衝撃波が発生して、カレンの身体を吹き飛ばした。
「きゃあっ!!」
「カレン!!」
飛んできたカレンを鉄平が受け止めた。
踏ん張りが効かず、二人揃って地面に倒れ込む。
「さあて、風は封じたぜ!!」
厄介なカレンの動きを封じた笹倉は、刀を下段に構え、翼を羽ばたいて二人に接近した。
「鉄平さん!!」
山田が立ち塞がる。
「素手で何ができる!!」
「できますとも!!」
笹倉が振り下ろした雷撃丸の刃を、山田の素手が掴む。
「っ!?」
その時の感触に、笹倉は背筋が冷たくなるのを感じた。
「この男!!」
山田は、笹倉の刃を受け止めた。素手でだ。だが、全く切れていない。切れる感触がしない。
「叩き折って差し上げましょう」
雷光丸の刃を掴んだ山田は、ぐっと横に力を込めた。
刀は、側面から叩けば容易く折れる。
「くっそ!!」
すぐ様、雷撃を放とうするが、それよりも先に、山田が笹倉を投げ飛ばした。
笹倉は壁に激突して、地面にベシャッと落下する。
「ちくしょう!!」
やはり、警戒すべきは、あの女だけじゃない。この男だ。
その③に続く
その③に続く




