【第42話】不屈の精神 その①
墜落する山羊は
太陽に憧れていただけ
1
「ここからは、私が相手っスよ!!」
「狙撃系の君に出来るわけないだろう!!」
「出来るっスよ!!」
真子は背中に背負ったケースから矢を抜き取り、名弓天照の弦に掛けた。
「頼むっスよ!! 天照!!!」
矢を引き絞り、距離を詰めてくる唐草に向けて放った。
「【焙烙矢】!」
「遅いんだよ! 」
唐草は、爆炎を上げて迫る矢を、素手で掴んだ。
投げ返す。
「くっ!!」
真子は素早く矢を射り、爆炎と爆炎を衝突させた。
ボンッ!!
爆発が巻き起こり、風圧で空気が揺れる。
「っ!! 煙が!!」
灰色の煙が戦場を包み込んだ。
唐草は煙の中で静かに床を蹴った。
能力、【山羊男】を発動した唐草は、ただ山羊の脚で脚力が上がるだけでは無い。
野生の本能が、発動するのだ。
(そこか・・・!!)
煙の中で次の矢を掛けている真子の居場所を特定。
名傘・雨乃朧月をフェンシングのように構え、真子に向けて放つ。
「喰らえ!!」
だが、傘の突きは空を切った。
「っ!?」
ニコニコと笑っていた唐草の表情に困惑の色が浮かんだ。
(オレは・・・、確実に特定したはず!!)
「ここっスよ!!」
頭上から真子の声がした。
「っ!?」
「爆炎矢!!」
ドンッ!!!
唐草の背中に真子の矢が突き刺さった。
その瞬間、鏃の先で爆発が起こる。
「がはっ!!」
爆発の勢いで、唐草の肉が焼け消えた。
血が吹き出す。
「どうして!?」
「当たり前っスよ!!」
床に着地した真子は、三発の矢を弦に掛けた。
「あたしは、【椿班】【四席】【矢島真子】!! 狙撃で鍛えた眼力なら、あんたより上っスよっ!!」
背中の負傷でよろめく唐草に向けて放つ。
「ちっ!!」
唐草は雨乃朧月の柄を握りしめ、バッと開く。
「雨乃朧月!!」
ドンッ!!!
ドンッ!!!
ドンッ!!!
真子の矢は、和傘の前に弾かれた。
「雨乃朧月の強度を舐めるなよ!!」
「舐めるわけないっス!!」
真子は新たな矢を引き絞った。
先程の三本の矢は陽動。
全ては、この一本の矢で終わらせるため。
この矢は、真子が奥の手として取っておいた、最強の矢。
(この矢を放てば、超火力により、天照はしばらく使えなくなる!!)
渾身の一撃。
「【獄炎矢】!!!」
手を離した瞬間、矢は「ヒャンッ!!」と空気を鳴らして飛んで行った。
鏃が、黒い炎に覆われる。
威力も、速さも、二倍に跳ね上がっていた。
「くっ!!!」
唐草が盾として構えた和傘に直撃する。
唐草の脚が数センチ下がった。
バリンッ!!
獄炎矢は、雨乃朧月を貫いた。
「何っ!?」
唐草の右肩を抉る。
だが、急所は外れた。
「くそっ!!」
唐草は肩口から吹き出す血液を手で押え、床を蹴った。
(なんだ、あの女・・・!?)
「逃がさないっス!!!」
真子は矢で追撃した。
「させるか!!」
唐草は破壊された雨乃朧月を投げつけて、矢の勢いを相殺させる。
「傷が深い・・・!!」
悪魔の堕慧児の再生能力は高い。こんな傷、集中すればものの数十秒で治る。
だが。
「名弓・天照!!」
「くそっ!!」
真子の矢が、それを邪魔してくる。
一発一発は遅い。殺傷能力も、低い。
それが、煩わしい。
「だったら!!」
唐草は真子に目掛けて跳躍した。
「距離を詰める!!」
間合いに入ってしまえば、奴の得意の狙撃だって上手く行かない。
真子はニヤリと笑った。
「かかったっスね・・・!!」
「っ!?」
ザワっとした寒気に襲われる。
ここからは私が相手っスよ!! そう言った真子は、クロナに向けて矢を放っている。
回復矢だ。
椿油を塗りこんだその矢は、触れた者を一瞬で回復させる。
つまり。
「クロナ姐さん!!!」
唐草は横目で、あの女が倒れていた場所を見た。
目を覚ましたクロナは、名刀黒鴉の能力を発動させ、振りかぶっていた。
クロナは、全快していたのだ。
「【明鳥黒破斬】!!!」
一度のチャージで、四発が限界のクロナの必殺技。
その最後の一発を、今、放つ。
「何っ!?」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドンッ!!!
油断仕し切っていた唐草の身体を、無数の羽が襲った。
唐草は防御することも出来ず、その羽の弾丸の餌食となる。
ボロ雑巾のように吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
グチャっ!! と赤黒い血が飛び散る。
「よっしゃっス!!」
「ざまあ見ろ!!」
クロナは肩で息をしながら、女子の腹を蹴った不届き者に天誅を下したのだった。
その②に続く
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