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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
121/530

半人間半UMA その②

僕が蜘蛛になり


床下を這いずり廻って


ゲテモノの体液を吸い尽くしたとして


それでも貴方はキスをしてくれるでしょうか?



2


「さてと・・・」


一通りの説明を終えた笹倉は、リラックスするように息を吐いた。


「じゃあ、架陰。お前にはまず、王の力を返して貰わないといけない」


「王の力を、返す?」


なんのことを言っているんだ?


と思った瞬間、笹倉が指を鳴らす。


奥で、「ギギギギ」と鉄が軋むような音がして、扉が開いた。


そこから、三人の人物が歩いてくる。


一人は、車椅子に座り、全身、ミイラのように包帯を巻いている。体のラインからして男だろう。


その車椅子を押すのが、侍の着物を見に纏い、髪を結っている男。腰には、架陰と同じ、装飾がなされていない刀が差さっていた。


そして、その隣で身を縮こませながら歩く男。目が充血して赤く染まり、真一文字に結んだ口から八重歯が覗いている。童顔からして、推定年齢は、16歳ほど。


「彼らは?」


「無礼は働くなよ。あれが我らが王だ」


その三人が出てきた瞬間、騒いでいた観客席が一瞬で静まり返った。


笹倉が、車椅子の包帯男に向かって膝をつく。


「王の命令通り、【悪魔】の能力を使う男を連れ去って参りました・・・!」


包帯男は、ゆっくりと手を挙げる。


「御苦労、笹倉・・・」


まるで喉を火傷したかのように、嗄れた声だった。


包帯男は、包帯の隙間から覗く黒い眼球を架陰に向けた。


(何こいつ・・・、すごく気持ち悪い・・・!)


架陰は思わず後ずさった。


その瞬間、車椅子を押していた侍姿の男が音もなく動き、架陰の背後に回る。


「・・・、王が喋っている。動くな」


「っ!?」


(このひと、速い!?)


包帯男は、車椅子からよろよろと立ち上がった。


架陰に近づいてくる。


ハアハアと、荒息が聞こえた。


「サテト・・・、僕ノ能力ヲ、返シテ貰ウヨ・・・」


包帯だらけの手が、架陰に伸びてきた。


後ずさりたくも、侍男が背後を取っているため、動けない。


「っ!!」


架陰は為す術なく、その包帯男に頭を掴まれる。


(嫌だ!!)


そう念じた瞬間、架陰の額と、包帯男の手の間で、衝撃波が発生した。


「っ!?」


バチッ!!


と黒い閃光が弾け、包帯男の手がだらんと下がった。


一同、何が起こったのかわからない。


笹倉、侍男、そして、包帯男でさえも、息を呑んでいた。


「どうして王が能力を奪えねぇんだ!?」


「奪えない?」


まさか、奪う気だったのか?


包帯男は、黒焦げた手のひらの包帯を眺めた。


そして、満足気に呟く。


「オモシロイネ・・・」


「お、面白い?」


「ウン、似テイルケド、違ウ感覚ダ。恐ラク・・・、何カノ能力ト、混ザリアッテシマッテイルネ・・・」


包帯男の膝がカクっと折れ、よろける。


侍男がまた音もなく地面を蹴り、包帯男を支えた。


「さあ、車椅子におすわりください・・・」


「ワルイネ、鬼丸・・・」


(あの人、鬼丸って言うのか・・・)


さしずめ、彼も【悪魔の堕慧児】と言ったところだろう。


包帯男は、車椅子に座り直した。


「マア、イイヤ。コレモ、想定内ダカラネ・・・」


(想定内・・・?)


「女郎・・・、頼ンダヨ・・・」


女郎(じょろう)と呼ばれて、車椅子の横で静かに待機していた少年が動き出す。


笹倉と、鬼丸。そして、包帯男が後退した。


「彼ハマダ・・・、能力ヲ使イコナシテイナイネ・・・」


「は・・・」


鬼丸が恭しく頷いた。


「では、【女郎】を使って、能力を引き出すというのですが?」


「アア・・・、ソウスルコトニシタ・・・、キット、堕慧児ノ血ト、王ノ血ガ混ジリアウト、能力ハ覚醒スル・・・」


架陰の全身が総毛立った。


今から、何が始まるのか、本能的に予測が出来た。


「架陰・・・、君ノ相手ハ、ソノ女郎トイウ男ガ相手ヲスルヨ・・・」


包帯男に指名されて架陰の相手になった女郎は、小さい身長ながら、流暢にお辞儀をした。


「僕は、女郎と申します。悪魔の堕慧児でございます・・・」


(この子も・・・、悪魔の堕慧児)


つまり、笹倉と同じようにUMA化をすることができるということ。


(一体、どんな能力なんだ?)


女郎は、下を向いたまま話を続ける。


「今から、貴方の能力の覚醒の助力を致します。さすれば、貴方の力は格段に上がり、混ざりあった力と分裂することができる・・・」


「分裂・・・?」


理解ができない。


だが、架陰の思考を置き去りにして、女郎は臨戦態勢を整えた。


「私は、唐草のように、能力をひたむきに隠すような真似は致しません。最初から、能力を覚醒し、全力で貴方の戦わせていただきます!」


女郎が見に纏っていた黒布を脱ぎ去る。


タンクトップのような革の鎧を着ていた。腕はそこまで太くなく、健全な高校生男子のような印象を受ける。


「能力・・・、覚醒」


笹倉がガーゴイルに変化した時のように、女郎の身体に異変が起こった。


パキパキ、メキメキと骨が軋み、肩甲骨が泡立つように膨れ上がる。


「【鬼蜘蛛】!!!」


ブチブチッ!! ブチブチッ!!


肩甲骨から、黒と黄の縞模様の肢が生える。


その数、四本。元から生えていた両手両足と合わせれば、八本だ。


女郎の口が耳元まで裂け、白牙が顔をのぞかせる。


額に、ビー玉のような翠の眼球が六つ浮き出した。


喉元から、茶の毛が生える。


「・・・! こいつは!!」


「これが私、女郎の能力・・・、【鬼蜘蛛】でございます・・・!」






それは、いつの日か架陰が遭遇した、【鬼蜘蛛】の姿と類似していた。









その③に続く


その③に続く

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