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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第7話 沼に潜む怪 その②

一度として見えぬ


二度と帰れぬ


三界の果てへ

6


「ねぇ、君!」


架陰は、しゃがみこんで震えている男の子と目線を合わせた。


「『化け物』って、どういうこと?」


「・・・、・・・、僕の、友達が・・・」


男の子は相変わらず、酸欠の金魚のように口をパクつかせている。これでは、まともな話が聞けない。


だが、先程の「僕の友達が、化け物にっ!!!」という言葉から判断することは十分容易だった。


「君の友達が、化け物に、襲われたんだね?」


架陰は男の子が言わんとしていることを予想して、言った。


その言葉を聞いて、男の子は小刻みに何度も頷いた。


「・・・、・・・、う、うん」


決まりだ。


架陰は、この男の子の影に潜むUMAの存在を感じ取った。


「ねえ、君、その場所へと案内してくれるかな?」


優しく、あくまで小さな男の子を相手する口調で話しかける。


そのおかげが、男の子の様子が落ち着いた。


「ぼくの、小学校・・・。の、裏の、森・・・、・・・」


「小学校の裏の森だね」


架陰は男の子の服装を見た。ランドセルは背負っていないものの、小学生らしい。焦茶の制服を来ていた。


その名札を確認する。


「・・・、布山小学校、伊藤翔太くんか」


布山小学校なら知っている。ここからすぐそこにある市立小学校だ。木造の歴史ある校舎で、確かに、何か出てもおかしくない雰囲気ではある。


だが、今回は「小学校の裏の森」で、化け物に襲われたという。


架陰は翔太に話しかけた。


「友達は、何人?」


「・・・、3人・・・」


3人もいるのか。


「どうしてその化け物に遭遇することになったんだい?」


その質問をすると、翔太はまた少し取り乱した。雨で覆われたアスファルトの上を小さな手で叩く。水が跳ね上がった。


「僕のせいだ!」


「僕の、せい?」


「僕が、あの森で『化け物を見た』なんて言うから・・・」


化け物を見た?


「見たんだ! 本当に見た!! 巨大な何かが、沼の近くを這っていた! それを友達に言ったら、3人で見に行ったみたいで・・・」


「君はどうしたんだ?」


「3人のお母さんから、『息子がまだ帰ってきてない』って、電話があって・・・。まさかと思って見に行ったんだ! そうしたら・・・、沼に・・・」


そう言うと、翔太は口を噤んでしまった。冷えて紫になった唇を真一文字に結んで、決してそれ以上のことを話そうとしない。


察した架陰は静かに頷いた。


手に持ったバットケース越しに刀を握りしめる。


「架陰様?」


西原が横から架陰の顔を覗き込んだ。


「西原さん・・・」架陰は落ち着いた表情で西原の方を向いた。「僕は、ここで降ります」


西原の細い目が困惑に満ちた。


「降りると仰りましても、この雨ですし・・・」


「翔太くんを、家まで送り届けてください」


架陰は翔太の濡れた肩に手をやった。


「・・・・・・」


西原が返答に困る。


「ですが・・・」


「お願いします!」


架陰は強い口調で言った。半ば強引に、西原の反対を押し切る。


そして、これ以上干渉されないよう、バットケースと巾着袋を握ると、雨の中を走り出す。


「架陰様!」


「翔太を、お願いします!」


架陰の姿は、直ぐに闇の中へと消えていった。足音さえかき消して、不穏な雨風の音だけが残る。


「・・・・・・」


西原は追わなかった。


「『お願いします』と言われましても・・・」


狼狽してため息をつく。そして、車中で待機しているカレンの方へ目をやった。


「カレン様・・・、いかがなさいますか?」


「そうねぇ・・・」


カレンはのんびりとした口調で首を傾げた。


そして、リムジンから降りる。すぐ様西原が傘を差し出した。


「翔太くんだっけ?」


先程架陰がしたように、穏やかな口調で翔太との距離を詰めた。


「君の言う、『化け物が出た場所』を教えてくれるかな?」


「・・・・・・」


翔太はしばらく躊躇した。だが、年上の女性の呑み込まれるような瞳を見ていると、不意に口が滑る。


「ここから・・・、真っ直ぐ行って・・・、右に曲がると、小学校があるから・・・、直ぐにわかると思う・・・」


「ありがとう」


カレンは白い手で、翔太の濡れた小さな頭を撫でる。思わず翔太は顔を赤らめる。


「西原」


「なんなりと」


「行くわよ」


「仰せのままに」


「君もね」


「え?」


カレンは翔太に微笑んだ。



その③に続く

その③へ続く

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