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【アニメ放送中】レベル1だけどユニークスキルで最強です  作者: 三木なずな
第六章

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183.失敗作

 サメチレン郊外、何度も見回して、普段よりも念入りにチェックをして。

 はっきりと周りに人間がいないことを確信してから、俺は、ドロップ品を置いてハグレモノを孵した。


 空気が一変する、ダンジョンマスター・サタナキアが現われた。


「リペティション!」


 間髪いれずに魔法を唱える。

 一度倒したモンスターを無条件に瞬殺する、最強周回魔法リペティション。

 ダンジョンマスターであろうと例外はない、魔法が発動して、サタナキアは瞬殺された。


「ふう……」


 少しホッとした。

 念入りに周りを確認したのも、出てすぐにリペティションで瞬殺したのも。

 サタナキアが女を操る特殊能力を持ってるからだ。


 ただ強いだけならまだしも、関係のない人間を操られるとやっかいきわまりない。

 面倒な事になる前に瞬殺したのだ。


 ハグレモノのサタナキアは何かをドロップした。

 近づいて見ると、それがイヤリングである事が分かった。

 イヤリングを拾い上げた瞬間、効果が頭に流れ込んできた。


 サタナキアのイヤリング、装備した女の持つ能力を無効化する。


「……うーん」


 思わず首をかしげて、唸ってしまった。

 何となく分かる。あらゆる女を操る悪魔サタナキア、そのドロップ品が女の能力を抑制する……なのは何となく理解できる。

 だけど今までのハグレモノのドロップ品からすれば効果が微妙すぎるにも程がある。


 一応敵になる女にプレゼントして身につけさせれば意味がなくはないかな……とも思うけど。


「まっ、あえてつかうようなものじゃないな」


 たまに外れもあるだろう。

 ダンジョンマスターのドロップ品といえど何が何でも効果絶大って訳でもない。

 セレストが持ってるダンジョンマスター・バイコーンのバイコーンホーンも、初級魔法を無限でつかえるというだけのもの。

 セレストにぴったり合うものだったけど、本来微妙なものだ。


 いつかどこかで役に立つかも知れない。

 そう思ってイヤリングをポケットに突っ込んでサメチレンにもどる為歩き出した。

 途中まで歩いたところで一人の女と出会った。


 不思議な女だ、目の前にいるのにまるでいないような存在感のなさ。

 目でも閉じれば見失ってしまうくらい、気配が極薄だった。

 この世界に来てそれなりの日々がたつ、気配を察知する、っていうスキルも徐々にだけど身につけてきた。


 それでも目の前の女の気配が感じられない。


 まさか幽霊――? なんてブルッとしたその時。


 無造作に歩いていた女は開けたところで足を止めて、懐から何かを取り出して地面に置いた。

 直後、置かれたそれを中心に魔法陣が広がる。


 紫色の魔法陣、毒々しい光がカクテルライトの如く乱反射する。


 気配が――生まれた。

 女の気配じゃない、魔法陣のものだ。

 もっと言えば意識のようなものに近い。


 殺戮……破壊。


 脳裏にそんな言葉が浮かび上がってきて、俺はとっさに飛び出した。


 バチン!


 飛び込んでいったはいいが、魔法陣の縁で紫色の稲妻に弾かれた。

 伸ばした手がただれる、肉がごっそりと持って行かれる。


 やっぱりまずい魔法陣だ、詳細は何一つ分からないが、このまま中にいたら女が消滅する事だけははっきりしてる。


「おい! 何をしてる、そこから出ろ!」


 大声で叫んだ。

 女は静かに振り向いた。


 俺はぎょっとした。

 びっくりした、虚を突かれた。


 振り向いた彼女の目が――いや顔が。

 まるっきり、感情のない人形だったのだ。


 俺がぎょっとしてる間にも事態が進展していた。

 魔法陣が彼女を喰って(、、、)いる。

 長かった髪が短くなって、身につけた服も消されていく。


 もう一刻の猶予もない!

 頭がフルに回った。

 起きている事、起こしているもの。

 俺が持っているもの、俺の能力。

 それらが全て、一瞬のうちに脳裏を駆け巡った。


 それらが合わさって、一つの可能性をはじき出した。

 もはや考えてる余裕もない。


 二丁拳銃を抜いた、火炎弾と冷凍弾をそれぞれに装てんした。

 すぐさま連射……融合した消滅弾になった。


 消滅弾は地面をえぐった――複数の消滅弾が魔法陣を喰っていった。

 欠けた魔法陣は効果を急速に失って、紫色の稲妻が止んだ。


 やがて、あたりは元に自然な野外に戻る。

 女は――無事だった。


「……ふう」


 大きく息を吐いた。

 とっさの思いつき、これしかないって思いつきがどうにか功を奏した。


「どうしたの?」

「どうしたのじゃない! 何をしてるんだお前は!?」


 ついつい大声で怒鳴ってしまった。

 事情は分からないが、傍から見れば彼女のそれは自殺だ。


「マスターの命令」

「命令? マスター?」

「廃棄処分になったゴミだから、自分で始末つけてこいって、マスターが」

「……何だと?」


 俺は、腹がぐつぐつと煮えくりかえるのを感じた。


     ☆


 またの自決を警戒するために火炎冷凍弾を込めつつ、彼女に話を聞く。


「そもそも廃棄処分ってなんだ。そんな言葉を人間に使うヤツの頭ってどうかしてるぞ」

「それは間違ってない」

「え?」

「私は人工生命体、作り出された魂を持たないもの。だから廃棄は正しい表現」

「人工……生命体?」


 言葉を失った。


「ろ、ロボットとかアンドロイドの様なものか?」

「ろぼっと? あんどろいど?」

「あぁ……ゴーレム? とかホムンクルス? 的なものか?」


 女は静かにうなずいた。


「とても近い、ニアリーイコール」

「なんでそんなものが……」

「……それは製造された目的への質問?」


 感情のない顔で首を傾げる女。


「あ、ああ」

「ダンジョンの為」

「ダンジョンの?」

「ドロップAを人工的に産み出すために私が作られた。でも失敗した。ドロップは全部F。しかも成長しない。だから、失敗作」


 女はゆっくりながらも、よどみない口調で言い切った。

 そこで口を閉ざしたのは、全て説明しきったからだ。


 状況がほとんど把握出来た。


「つまり、普通の冒険者じゃ生産力にばらつきがあるから、最高となるドロップAの人工生命体を産み出して、ドロップを安定させるということだな」


 女は頷く。


「それが失敗した……くそっ」

「何故怒る?」

「そりゃ――」

「関係のない、失敗作の道具が廃棄されるのに、何故怒ってる?」

「うっ……」


 思わず息を飲んだ。

 そういう言い方をされると、向こうの方が一見正しいように聞こえてしまったからだ。


「そ、それでもダメだ。とにかくその……自分で自分を壊すのは許さない」

「それは困る」

「なんで」

「マスターの命令、実行しないといけない」


 それも一見正しい様な言い草だ。


「マスターの変更は出来るのか?」


 ほとんど脊髄反射って感じで聞いた。

 こういう場合、マスターの変更が唯一根本的に解決する方法だ。


「出来る」

「どうすればいい」

「私の胸に手を当てる。前のマスター以上の魔力を注ぐ。上書きする」

「それで?」

「それだけ」

「それだけ?」

「試作品だから、簡単に変えられるようになってる」


 なるほど、よし、そういうことなら――。


「でも」

「でも?」


 伸ばしかけた手が止まった。


「私の動力源はマスターの魔力、存在するだけでマスターの魔力を少しずつ消費する――」


 俺は手を伸ばして彼女の胸に当てた。

 教えてもらった通り魔力を流す。


 魔力がこの場合MPなのか知性なのか分からないが、どっちでも構わない。

 どっちでもこの世界の人間をはるかに上回るSSだからだ。


 彼女の身体が一瞬光って、すぐに落ち着いた。


「どうだ?」

「マスター変更、完了しました」

「よし」

「……いいんですか?」


 彼女の顔から初めての表情が見えた。

 ほとんど無表情のままだが、よく見ればってレベルで困惑の色が現われた。

 MPを喰うのにいいのか、って質問だろう。


「ああ、問題ない」


 目の前で自決されるよりはよっぽどマシだし。

 何よりも。


 上の(、、)一方的な都合でそんな事を強いられるのは腹立たしくて、介入しないと気が済まなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 他にも人工生命体が大量にいた場合、佐藤は際限無く救い続けるのかね?
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