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【アニメ放送中】レベル1だけどユニークスキルで最強です  作者: 三木なずな
第五章

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139.独占崩し

 一日の仕事を終えてダンジョンから転送で屋敷に戻ってくると、転送部屋の前に待ち構えているエルザに出くわした。


「お帰りなさいリョータさん」

「エルザ。どうしたんだこんなところで」

「リョータさんにお客さんです」

「客?」

「協会長が来てます」


 自分でも分かるくらい、眉間にキュッ、ってしわが寄った。

 用もなしに来ないのがシクロダンジョン協会長のクリントだ。今までも何かおきる度にそれを俺のところに持ち込んできた。

 今日もきっとそうなんだろう。


「今屋敷にいるのか?」

「はい、応接間に。それと」

「それと?」

「庭に大量の角砂糖が」

「え?」


 エルザに言われて窓から外を見た。

 黄昏の庭にエルザの言うとおり大量の角砂糖が積み上げられていた。

 目算でトラック二つか三つ分、クリントがよく言う角砂糖一年分とかだろうか。


 多すぎる。一年分で量をもらって嬉しいのはお年玉だけなんだがな。


「先払いってことか。よっぽどの大事がおきてるんだろうな」

「はい、結構問題になってます」

「エルザは知ってるのか?」

お店(燕の恩返し)の方から話が来てます。こっちは末端なのでそんなに詳しくは聞いてませんけど」

「ふむ……」


 エルザはそういうが、むしろ末端にまで降りてきた程の事件だという可能性もある。

 気を引き締めていこう、そう思い、俺は応接間に向かった。


     ☆


 応接間の中に入ると、ソファーの上に座ってガリガリ、ガリガリと角砂糖を齧歯類の如くむさぼっているクリントが見えた。

 クリントはかじっている角砂糖とまだかじる前の角砂糖をまとめて口の中に放り込んで一気に飲み下した。


 ……喉、丈夫だな。


 クリントは立ち上がって、両手を広げて俺の方に向かってきた。


「おお、やっと帰ってきたかサトウ。待っていたよシクロの恩人よ」

「とりあえず辞退します」

「ひどい!」


 ガーン、って顔をするクリント。

 いやだってそうなるだろ。出会い頭にそんな持ち上げられたらこれから頼まれる事がものすごく大事で逃げ出したくもなるだろ?


「サトウだけはそんな人間じゃないって信じてたのに!」

「それよりもなんの用なんだ? あんなに角砂糖持ってきてまで」


 ソファーに腰掛けて、座り直したクリントに話を聞く。


「クリフォードファミリーの事を知ってるかサトウよ」

「クリフォード? いや知らないけど」

「ビスマスの地下6階から10階までを事実上独占している一家の事だ」

「ビスマス」


 シクロには7つのダンジョンがある。

 テルル、シリコン、アルセニック、ビスマス、ボーラン。

 そしてドロップが例外的なニホニウムと、場所が例外的なセレンの二つを加えて7つだ。


 そのうちの一つがビスマス。今まで必要がなかったから近寄りもしなかったダンジョンだ。


「そのクリフォードとビスマスがどうかしたのか?」

「ビスマスの6階から10階までは麦をドロップする事をしってるか?」

「それで?」

「シクロで麦をドロップするのはそこだけなのだ」

「……またダンジョンが封鎖されてるのか?」

「ちょっと違う」

「? どういう事だ」

「ビスマスの6階から10階までのモンスターの倒し方はきわめて特殊で、誰もやれるというわけではない。他にも散発的な冒険者が産出しているがクリフォードファミリーだけで97%の量を産出させている。そのクリフォードファミリーが麦の買い取り価格を上げろと言ってきたのだ」

「なるほど」


 97%もあったら実質独占だからな。


「正直困っている。クリフォードは過激な手段に出たわけではない。単に『これ以下の金額だから働く気になれない』と言ってるだけだ」

「前のストライキとは違うんだな」


 頷くクリント。

 以前に米の階層を封鎖して他の連中を立ち入らせないようにした奴らがいたけど、それとは違う話。

 自分達にしかやれない事をいいことに値段のつり上げをしているのだ。


「ある意味市場原理でもある」

「しかしそれでは困るのだ。麦がなくなれば住民は困るどころの騒ぎじゃない」


 それは確かにそうだ。

 米、麦、ジャガイモ。

 消えたら困る作物のトップ3はこのみっつだと思ってる。

 米と麦は言うに及ばず主食で、ジャガイモもあくまで地球の話だが、畑の面積あたりの生産カロリーでは米を遥かに上回るトップなのだ。


 それはともかく、麦の生産を止められたら困るどころの騒ぎじゃない。


「買値を上げたらどうだ? それも」

「その前にやれる事をやっておきたい。他ならともかく、必需品はできるだけ相場を安定させたい」

「なるほど」

「それに一度そういう話を通してしまうとことあるごとに同じ事をやられてしまってその度に混乱が起きる」

「一理ある」


 完全に嗜好品なら好きしていいけど、麦みたいなのはできるだけ安定させる。

 分かる話だ。


「だから」


 クリントは俺を見た。


「なんとかしてくれないか」


 と、無理難題をふっかけてきた。


「というわけで話を受けた」


 夜のリビング、仲間を集めてクリントが持ってきた話をみんなに話した。

 エミリー、セレスト、アリス、イヴの仲間に、出向してきてるエルザ、そして新しく加わったケルベロス。


 全員を集めて状況を説明した。


「ビスマスの6階から10階ね」

「何か知ってるのかセレスト」

「ええ。というか有名な場所ね。情報は出回ってるけど、みんなどうにもならない場所」

「どうにもならない?」

「ああ……ちょっと違うわね。やろうと思えばどうにかなるけど労力が割りに合わなさすぎる場所」

「なるほど」


 その話は分かる。


 この世界の冒険者が一番重視しているのは「効率」だ。


 あらゆる物がダンジョンでドロップ(生産)される世界、それはつまり毎日同じように物をドロップさせるために「周回」をしなきゃいけないって事。

 周回というのは「危険」を排除するという意味でもある。


 割りに合わない、労力に合わない事は極力やらないのがこの世界の冒険者だ。


 ゲームで言えば、RPGをやってるときに適正レベル10も下のところを延々と回るのがこの世界の冒険者だ。


「それはどうにか出来るのか?」

「出来るわ」


 セレストは言い切った。

 仲間の中で一番知識量が豊富な彼女は迷うことなく即答した。


「どうすればいい?」

「戦略は簡単、みんなでサポートしてリョータさんに一回倒させる」


 セレストはそこで言葉を一旦切った、それで言いたい事は分かった。


「その後リペティションを連射すれば良いって事か」

「ええ。究極周回魔法リペティションと無限回復弾を持つリョータさんだからこそ出来る事だわ」


 なるほど。


「やっぱりヨーダさんはすごいのです。もう頼まれたことが成功するのが確定なのです」


 持ち上げてくるエミリー。確かにリペティションと無限回復弾のコンボがあれば大量生産が可能だ。


「それずっとやるの、しんどい」


 イヴが指摘する。

 無限回復弾でリペティションを永久機関で撃てるのはいいけど、今回はクリフォードファミリーが抜けた97%の穴を埋めなきゃならない。

 栄えてるシクロの街の消費分の97%だ。

 作業とは言え、それは膨大な作業量である。


 が。


「それは大丈夫だと思いますよ」


 今度はエルザが言った。


「こういう『俺たちしか出来ないから値段あげろ』の場合、他にも出来る人が出たら一瞬で引っ込みます。前提から崩れちゃうわけですから」

「だろうな」

「問題なのはむしろ、それをやってるときに外野を攻められることですね」

「外野?」

「相手の家族を人質にとったりとか、そういうの」


 ああ、そういう意味で。


「それなら任せて下さい。ぼくがご主人様の代わりに屋敷を守ってます」

「ああ、頼むぞケルベロス」

「はい!」


 我が家の番犬はそう言って、ぐるるるる、とうなり声をあげてみせた。

 雷さえなければかなり頼りになるな。


「となるとさっそく動いた方がいいな」


 俺が言って、仲間が揃って頷いた。


     ☆


 ビスマスダンジョン、地下六階。

 転送部屋でやってきた俺とアリス。


 ダンジョンに入った瞬間驚いた。


「これは……すごいな」

「うん、綺麗だね!」


 アリスの感想どおり、綺麗なダンジョンだった。


 ビスマス結晶というものがある。

 それと同じように、ビスマスのダンジョンは構造が角張っていて、全体的に虹色に輝いている。


 ダンジョンの壁を割った石も生産物になるんじゃないか、ってくらい綺麗だ。

 そこにやってきた俺とアリス、一発目は俺たちだけで事足りる。


 むしろアリスが最重要だと、セレストは言った。


「しかし、本当に人いないな」

「むずかしいみたいだからね、ここ」

「そもそも冒険者はおろかモンスターもまったく見当たらないんだが」


 俺はダンジョンの中を見回した。

 そう、モンスターもいないのだ。

 虹色に輝く広大なダンジョンの中で、俺とアリスだけがぽつんと立っていた。


「そんな事ないよ、えっと……」


 アリスはそう言って、まわりをきょろきょろ見回した。


「あっ、ここだね。後5秒、4、3、2、1……」


 アリスは真横を向いてカウントダウンした。

 ゼロになった途端、空間からにじみ出るかのように一体のモンスターが現われた。

 小型犬程度のカメレオンだ。


「これがここのモンスターか」

「うん、十分間ごとに五秒間だけ姿を現わすらしいよ」

「本当だ、もう消えた……なるほど、これは効率悪い」


 何となくわかった気がした。

 これはかなり特殊なやり方を編み出さないと量産は難しいヤツだ。


 俺はアリスを見た。


「今カウントダウンしてたって事は姿を見せるタイミングが分かるってことか」

「うん。分かるよ。ほらあっち、15秒くらい先にもう一体出てくる」


 アリスが指さした方をみる、宣言通り別の個体が姿を現わした。

 現われて、五秒きっかりでまた消えた。


「消えてるときは攻撃出来ないんだって、しかもあの見た目のくせに結構硬いから、ちょっとでも速攻ミスると逃げられちゃうってさ」

「なるほど、これは割りに合わない」


 俺は納得した。

 同時に安心した。


 リペティションの発動に一秒もいらない、アリスが出現ポイントを掴んでくれるのなら二体目(、、、)以降は楽にやれる。


 一体目さえ倒せれば後はもう問題ない。

 勝利の方程式が早くも見えた。


 俺は一発目に必要な、最大火力を出せる攻撃方法を考えつつ。


「次に出てくるのはどこだ?」


 と、アリスに聞きつつ、準備を進めたのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「うん、十分間ごとに五秒間だけ姿を現わすらしいよ」 >「本当だ、もう消えた……なるほど、これは効率悪い」 これで、よく麦の生産不足で餓死者が出なかったもんだな?いや、餓死者は出てたけ…
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