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BUDDY ―鋼鉄の相棒と結目―  作者: Sky Aviation
第7章 ~混乱~
121/181

追及

 ―――そして、その最終日である。与えられた任務は幸いなことに順調に進行してくれた。地形状況の把握はもちろんの事、敵の動きから大体どのような行動パターンがあるのか読み取ることはできた。たった1週間だが、それでも成果は十分だ。あとは、引き継ぎに後を託すのみ。


 ……だが、俺にはまだ、やり残したことがある。これだけは、絶対にやっておかなければならなかった。



 帰還当日、仮拠点を後にした俺たちは、回収用のヘリのLZランディングゾーンへと向かう。本来の予定では、事前に定められた地点まで徒歩で向かうはずだったのだが、俺の判断で、若干外縁にある場所に向かい、そこからヘリでさっさとおさらばする形を取った。事前に合流時間を定め、それに合わせてヘリが到着するように予定を立てる事が出来た。当然、ここに来るのはいつもの二人のヘリである。

 ついでに、後ほどLZの確認をしてきた二人に対してだけ、無線で“あること”を伝えておいた。それに合わせて行動するよう協力を取り付けた俺は、安心して自分が指定したLZへと向かう。


 LZとして、仮拠点から東にある随分と閑散とした建物を選んだ。細めの道路を行くと、右手は高い建物がなく開けた空間があるが、その左手には灰色のまさに建造中といった形の建物があった。

 建造中ゆえに、鉄筋コンクリートむき出しで、階段などはできているにせよ、窓や内装などはまだこれっぽっちも手が付けられていない。本当はこの周りには足場として使う鉄パイプやらネットやらがあったのであろうが、度重なる地震によって、それらは下に全部崩れている。建造中の建物が完全に丸裸の状態だ。


 10階建ての建物だったが、その中で7階を選んだ。階段を歩いて7階に行くと、案の定、中は灰色の空間が広がっている。窓を取り付けるのであろう側面の一部は何も取り付けられておらず、風が入ってきている。


「随分と寂しい雰囲気だねぇ……人が居ねえとこうも侘しくなるのか」


「人のいない空間なんてそんなもんだ」


 静かなこの空間を見て、和弥は若干の寂しさを覚えたようだ。確かに、こんなに開放的な空間にしては、あまりにも何もなさすぎる。寂しさは確かにあるだろう。


「……んで、ここでどうすんだ? ヘリが来るまで待つのか?」


「でも、もうすぐ来るんじゃないの? 行くなら屋上で待ってもいいんじゃない?」


 和弥と新澤さんがそう質問を投げかける。確かに、合流予定時間はもうすぐだ。通常なら、さっさと屋上に行って、ヘリが来るのを待ってもいいだろう。

 ……だが、


「いや……その前に一つやることがある」


「あん?」


 和弥は眉を顰め、首を傾げた。いや、他二人もほぼ同じような反応を示した。俺はさらに続ける。


「前に、部隊の中にスパイがいるだどうたらって噂あるって言ってたろ?」


「ん? あぁ、あったな。それがどうかしたのか?」


「……実はな。わかっちまったんだよ」


「……は?」


 呆気にとられたような和弥を横目に、


「だから、分かったんだって。そのスパイとやらの正体」


 そう、再び繰り返すように言った。数秒、3人はそのまま固まったが、そのあとすぐに、


「……え、ま、マジで? わかったのか!?」


「ああ。わかった」


「本当なの祥樹? いったいどうやって?」


「どうやっても何も、ちっと頭で考えたら即行でわかりましたよ」


「うっそぉ!?」


 俺はそう言って頭をトントンと指で叩くと、新澤さんは仰天したように目を見開かせた。和弥も、「おいおいいつの間に推理してたんだよ……」と驚きを隠せなかったようだ。


「それで、誰なんですか? そのスパイというのは?」


 ユイもつられた。そのまなざしは真剣だ。さぞ、このクソッたれな混乱を巻き起こした犯人を知りたいらしい。


「……なに、すぐにわかるさ」


 俺は口を歪ませつつそう答えた。その横から和弥が、


「そ、それが本当ならすぐに知らせねえと! 俺らに対しては後でいいから、まずは本部の連中にこのことを―――」


 そう慌てた様子で無線をかけようとするが、


「いや、待て。それはダメだ」


 俺はすぐに止めた。これは、本部の連中に知られてはマズイことだったのだ。当然、和弥は反発した。


「はァ!? な、なんでだよ! これは緊急事態だろ!?」


「わかってる。緊急事態だ。だが、これはあくまで推測だ。推測を本部に知らせたところで、無用な混乱を招くだけだ。そうだろ?」


「そ、それはそうだけどよ……」


「それに、俺の推測が仮に正しかったとすると……、そうなると、緊急事態だからこそ、余計にこのまま無線で知らせるわけにはいかないんだ」


「どういうことだよ? スパイがいる事がお前の推理で分かったのに、それを知らせないってのか?」


「だから……よく考えてみろ」


「は?」


「……そのスパイをな」






「このまま、俺等と一緒に本部に連れて帰るわけにはいかねえんだよ」






 この場にいた、俺以外の全員が固まった。誰もが例外なく「……は?」と、二度目の硬直をしたのだ。呼吸の音すらほとんど聞こえない。たぶん、忘れている。心臓が止まるような思いとは、この時のことを言うのかもしれない。

 ……さらに十数秒の時を経て、


「……どういうこと?」


 ようやっと声を絞らせてそういったのは、新澤さんだった。顔は固まり、声は震えていた。俺の先ほどの言葉が、何を意味するのかは新澤さん自身もわかっていたはずだ。いや、ここにいる3人がわかっていたからこそ、先ほどまでの硬直が起きたのだ。


 だが、頭は理解できても、感情は理解しきれない。当然、反発は起きる。


「ま、待ってくれ。まさかお前は、そのスパイってのが、俺たちの中にいるってのか!?」


「そういう意味になるな。それが?」


「それが?じゃねえよ! お前、自分が何を言ってるのかわかってるのか!?」


「わかってるから言ってる。俺だって、正直まだ半信半疑だ」


「何だと?」


「だからこそ……今、その“仮説”が本当かを確かめなきゃならねんだ」


 そうだ。ここは、俺が立てた幾つかの仮説を、確認する場であり、同時に、立証する場でもある。スパイ本人に対して、「もうバレている」ということを、思い知らせるためにも。

 ……それと同時に、仮説がただの仮説で済むことを、俺はまだ願っていたのだ。だからこそ、この場を設けた。

 確認する、という名目で、“仮説の否定”を、したかったがために。


「仮説を立証するために……ここに、残ったと?」


「ああ、そうだ」


 ……そして俺は、


「このまま……推測のままで、何も確かめもせずに帰るのはマズイからな……」



 その、疑惑の矛先に、首を向けて、一言言い放った。


「なあ、そうだろ?」







「―――ユイ」







 二人の顔がまた固まった。そして、俺と、“もう一体”を、交互に、そしてゆっくりと見た。

 その中で、俺はさらに突き放すように言った。


「……いや……“そっくりさん”……かな?」


 俺のその言葉に、ユイは固まっていた。バレたとかそういうのじゃない。「え、私!?」とでも言いたげな顔だ。「え? え??」と、小さく言葉で呟いているような口の動きをしている。よほど動揺しているらしい。だが、俺は動じなかった。俺が動じたら、足元を見られる。


「……何を言ってるんですか?」


 そうして、ユイがようやっと絞り出した問いはそれだった。当然の問いと思う。いきなり自分の相棒だと思っている人間からスパイ疑惑を駆けられて、そうならない奴はまずいないだろう。


 ……それが、本当に俺の相棒だったら、俺も同情したかもしれない。


 横にいた新澤さんが、完全に慌てた様子で聞いてきた。


「ちょ、ちょちょちょっと待って!? え、何!? あ、あ、あああアンタユイちゃんがスパイだって言いたいわけ!?」


「落ち着いてください新澤さん。言葉噛みまくりです」


「い、いや、落ち着けって言われても……」


「待って下さい。そもそもなんで私がスパイなんですか? 私ロボットですよ?」


 新澤さんとの会話中に俺の隙を見つけたのか、ユイはここぞとばかりに問い詰めた。目は怒っている。口調も、若干威圧が込められているのが感じ取れた。だが、それに対して俺は何の感情も抱かないかのように、冷静に返した。


「ロボットだろうね。だがな、ロボットはスパイになれないなんてルールはないぞ」


「ルールはないでしょうけど、実際に出来るかどうかは別問題で―――」


「別問題だったら問題にはしない」


「私がスパイしてるように見えるんですか!?」


 ついにヤツがブチキレた。ユイの豹変ぶりに和弥と新澤さんは完全に呆気にとられ、慌てっぱなしだった。しかし、俺はそれにも構わずスルーする。


「『兵は詭道なり』って言葉は知ってるか? 孫子が兵法に残した言葉だ。軍事の基本は敵を欺くことにある。能力があってもないように見せ、勇気があってもないように見せ、近くても遠いように見せ、そうすることで、敵にとって利益があると思い込ませること……。敵と騙すことは策略の一つであり、戦況が有利になるよう、まずは敵に働きかける。現代の軍事学においても基本中の基本だ。そういう意味では、お前のやったことは教科書通りだったよ。お見事だ」


「今兵法とか関係あります!?」


「あるんだなぁ、これが。相手を騙すことは十分この兵法の言葉に当てはまる。……でもよ、嘗てマキャベリは『別の人格を装うことは、場合によっては賢明な方法になることがある』って言葉を残したんだが……どうやら、今回に限っては、それは当てはまらなかったらしいな。アンタのやった方法は、結果的には賢明な方法ではなかった、という事だ」


 これは、完全に“そっくりさん”の正体を見据えての言葉だった。もう、ここまで来たら後戻りはできない。俺は、とことんまで問い詰めるつもりだった。納得いくまでやめるつもりなかった。そのための“材料”もしっかり用意した。あとは、どう料理するかだった。

 ……メインディッシュも、今、目の前にある。


「……ですが、私がやったなんて根拠はどこにも―――」


「あるんだよ、それが。考えてみれば幾らでも出てくるんだ。むしろ良く気づかなかったなと俺は俺自身に深く感心するよ。ついでにあざ笑うけどな」


 そこまで言って、ユイがさらに問い詰めるために俺に近寄ろうとした時だった。


「ま、まあまあまあまあ待て待て待て待て! とりあえず二人とも落ち着け!」


 和弥がすかさず仲介に入った。これ以上は下手すりゃ乱闘騒ぎかなにかになると読んだのだろうか、そこはわからないが……。

 でも、まあいい。何れにせよ、そろそろ論拠を出さないといけないと思っていたところだった。和弥はさらに続けた。


「と、とにかく……お前がそこまで言うってことは、ちゃんとした根拠はあるってことだな? 中途半端な者だったら承知しないぞ? お前は今、仲間を疑ってるんだからな? しかも、自分の相棒をだ」


 和弥の言葉は身に染みた。当然だ。俺のやっていることは、考えてみれば許されざることだ。仲間を信じるべき時に、あろうことか一番味方である奴を疑っている。軍人として、それは少なくとも褒められたことではない。そういう意味では、俺は後でお咎めを喰らっても仕方ないかもしれない。


 ……だが、だからこそ、俺は確かめたかったのだ。


「わかっている。……今から、それを説明するさ」


 さて、仮説の証明の時間だ。時間も迫っている。長くならない様、できる限り手っ取り早く済ませる。


「まずさ……、お前、今体重何キロだ?」


「……はい?」


「おいおい、幾らロボットだからって女性に体重きくのかよ……」


「わかってる。だが、根拠の一つなんだ。……答えてくれ、何キロだ?」


 ユイは答えようとはしなかった。ユイのいつもの性格ならば、答えることに差支えのない数字だ。元より、俺は数字を知ってる。アウトラインシートに前に書いてあったのを今も覚えていた。ユイが、それを知らない筈はない。

 ……中々答えようとしないユイの代わりに、俺は教えてやった。


「58kgだよ、58kg。でもさ、お前、絶対それより重いだろ」


「え、マジで?」


「ああ。何なら今抱いて持ってみろ。お前、最近持ったり引っ張ったりしてなかったろ?」


「お、おう……」


 和弥は言われるがままに持ってみた。その時の奴の反応も見逃さない。若干、抱かれるのを渋っていた。それも、俺の中では仮説を肉づける根拠となる。

 ……そして、ユイを持ってみた和弥が驚きの声を上げた。


「うぉ、た、確かに重いぞコレッ」


「体感でどんくらいだ?」


「大体70~80kgってところかな……あれ、ユイさんいつの間に太ったん?」


「太っちゃいないさ。元から、その体重だったんだ」


「え?」


「和弥の言った体感は、俺も同様に感じた。道理でおかしいと思ったんだ……。数日前、ハッキングの事件があった後、お前と合流したとき覚えてるか? あの時、床に座ってるお前引っ張ったろ?」


「……」


「あぁ、それと、そのあとにビルの上で余震に会って、ビルがぶっ壊れて危うく皆滑り落ちるってなった時、俺お前の事引っ張ったよな? その時妙に重かったんだよ。何度かお前を引っ張ったことあるけどな、あいつのほうが軽かったぞ。なんだ、お前いつの間に太る機能付いたんだ?」


 最後はただの皮肉だ。だが、それに対しても何も返さない。当然だ。これは図星なのだ。このあたりから、和弥や新澤さんも、一向に反論しようとしないアイツに対して、不信感を抱き始めた。

 だが、俺はそれだけを根拠にするつもりはない。


「ついでにその地震の時、お前妙にはしゃいでたよな? しかも、余震が怖くて怯えるときた。……でもさ、あれも考えてみればおかしいんだよ」


「おかしい? 何が」


「よく考えてみな? アイツは俺たちと同様に、今までストレスフルな環境下に置かれてたんだ。死と隣り合わせな戦闘時は冷静で、比較的安全な建物内で鉢会ったデカい余震は怯えるなんて、説明がつかねえぞ。それなら、正直それより余計ひどい状況下でも怯えてなきゃいけねえ筈だ。違うか?」


「余震は別だったんじゃねえのか? あくまで戦闘用だったし……」


「わざわざ感情選択に地震と戦闘時で区別するのか? ユイは元々、各種危険事態に対応するアンドロイド機材の能力データ収集の目的もあったんだ。地震だってその危険事態に含まれてるはずで、地震が起きるたびに怯えられてちゃあデータ回収にならねえだろ」


「そ、それもそうか……あれ、じゃあなんであれだけ怯えてて……」


 和弥も徐々に疑問に持ち始めた。それに対しても、やっぱりユイの反論はない。これも、図星だったのだ。

 地震が連発してたから、なんてのはなおさらだ。こういう試験は大抵大地震前提で考えられる。それに適したAIを使ってデータ収集をする必要があるし、当然、試験期間中に実際に災害が起きた場合、真っ先にデータ回収のために投入できるように準備はしていたはずである。

 ……これらの事から、ユイが「余震の連発に関してだけ」恐怖心を抱くというのはいささか考えにくい。戦闘中に地震が起きる可能性は限りなく小さいがあるため、それに対するAI設計ができないわけではないだろう。AI設計をした海部田の爺さんだって、地震の知識がないわけではない。そこら辺はおざなりにはしないはずだ。


 ……つまりこれは、


「……感情豊かなユイを"演じていた"だけに過ぎないんだよ。……でもな、一つだけ言っとくぞ」


 俺はその時、自然と顔を曇らせてしまった。


「……今のユイは、そんなに"元気"じゃねえんだよ。……その原因は、半分以上は俺にあるんだけどな」


 事実だった。今の憂鬱な状態にあるユイがあったからこそ、この部分は見抜けたといっても過言ではなかった。好ましくないと思っていた状況が、結果的にプラスに働いた。だが、こんな皮肉、できる事なら体験したくはなかった。

 ……それでも、これは俺の個人的な事情だ。それはすぐに脇に置いておいて、さらに続けた。


「まだまだあるぞ。あの後―――」


「え、まだあるの!?」


「まだありますよぉ新澤さん。ちょっと待っててくださいね」


 さっきから固まってばかりの新澤さんだが、正直疲れ始めたのかもしれない。さっきから大きな話題となる情報を頭に入れまくり、もう処理が追いつかないのだろう。だが、申し訳ないが続けさせていただく。


「あの後、謎解きに助力してくれたな。あのビル爆破未遂の奴だ。だが、あれ、もしかしたらわざとか?」


「わざと?」


「ああ。あれも思い出してみたらちょっと疑問点が残った。あれ、弓争いの件は7と8で間違ったよな? んで、俺がギリギリ訂正して事なきを得たが……」


「そりゃあ……私だって間違えることは……」


「ああ、間違えることはあるだろうな。AIだって万能じゃない。だけどよ、得意分野はある。俺とユイが出会って初期の頃、クイズを出したことがあったんだ。お前が知ってるかは知らんがな、それを見てみると、お前はひっかけ問題は大の苦手分野らしいことが分かった。今回のこれも、一見そう見えるんだがな……おかしかった」


「何が?」


「あれは国語力と知識の問題だ。国語力に関するひっかけには一切動じない。それは俺が前にユイとやったクイズゲームでよくわかった」


 結構前の話だが、暇つぶしにクイズを出したことがあった記憶を思い出す。あの時、ひっかけ問題に悉く弄ばれ、そのほかの部分は難なくクリアしていた記憶がしっかりある。

 今回のこれは国語力と知識さえ身についていればよほどのことがない限り間違えないはずだ。ひっかけになるような要素は、考えてみればそこまでない。あれは言葉遊びなところだが、表現技法さえ間違えなければ問題ない部類だ。表現技法は、国語力に関わる分野である。知識面だって、弓争いの事を全部知ってるならまず引っかからない話だ。知識量が申し分ないことは、二澤さんとこの弓争いに関して会話したときによくわかっている。

 あの謎解きを間違いなく解く条件はそろっていた。それでも間違った。


 ……俺は、アレはわざとだと踏んだのだ。


「ここからは俺の完全な推測なんで聞き流してもいいが、お前はあれを“処理”しようとしたんじゃないか? 間違った数字をあえて入力させることで爆弾を爆発させ処理し、さらなる恐怖を日本国民に与え、ある種の組織に対する「抑止力」を作ろうとした。考えてみれば、俺等に対するヒントの与え方も妙だったもんでな」


「どういうことだ?」


「最初に大鏡に関する答えを提示したのは、今後のヒント解読に影響を与え、解読時間を早めるため。あの後の回答は、すべて大鏡に関わることだったからな。もはや用済みだから、ちょいちょいヒントを挟んだんだ。それに、俺はユイに古典を教えたことはないんだぜ?」


「マジで?」


「ああ。アイツは本で見たと言っていたが、うちのユイが見るのは専ら俺が持ってるSF小説だ。それには弓争いどころか、四鏡の話題すらないぞ。全部だ。あの駐屯地では、俺以外にユイに本を貸している奴はいない」


 さらに弓争いに関して言うならば、最初「たぶん」と言ってあくまで予想であることを前提で話していたのに、最終的には「間違いない」と正確性の高さを自負するという視線の転換も変だ。変える必要ないだろう、あくまで“予想”なのに。そして、最後の解読のために使う3つのヒントも早々に出してきたことも、もしかしたら俺らの謎解きを“手助け”させるものだったのかもしれない。


 ……とはいえ、ここら辺はあくまで推測である。話も軽く流した。


「……でもな、あの後、お前俺が月を見上げて「月が綺麗ですね」言うた時、お前“正しい反応”返さなかったろ。お前、あれが実は告白に使われる文言だって知ってたか?」


「え?」


「え、お前告白したの?」


「してねえよ話の流れでそれが出てきただけだ」


 和弥に辺にツッコまれるが、それは無視だ。アイツの反応、あれは多分知らない奴だ。なら辻褄が通る。あの言葉を出した後、なぜか上弦の月がどーたらなんて話を始めおった。前に、先のクイズゲームやり合った後、夜に月を見上げてその話をした時、ユイはこの“正しい返し”を知っていた。この時も、出してもいいはずだ。なぜ出さない? 忘れてたか?

 だが、忘れてたといえば、かつて三咲さんと反していた時……


「三咲さんから聞いたぞ。お前、相談ごとはあれが初めてだったらしいな。だがな、お前もう忘れたのか? お前、前にも相談ごとに一回参加してんだぜ?」


「え?」


「えって、おいおい、忘れたのかよ? ありゃあ彩夜さんマジ泣きするなぁこれ知ったら……」


 だが、知らなくて当然だ、コイツは参加してないんだからな。


「ったく、なーにが楽天的で悩みがないだ。今のアイツは完全に憂鬱の極致にいるわ。しかも半分以上は俺のせいだ」


「そ、そこら辺はたまに忘れる時もありますし……」


「それも矛盾するな。ハッキング事件の後AI調べたとき、異常なしってなってたって新澤さんから聞いたぞ。……そうですよね?」


「え? え、ええ……一応……」


 呆然としているところをいきなり質問された新澤さんは、あたふたしながらもそう答えた。あの時は新澤さんが同行していた。彼女によれば、AI部分を簡単に調べたときは、何ら問題はなかったそうだ。とはいえ、あくまでソフトウェア部分の話で、その時はハードウェアのチェックはされていないらしいが、そこはまだしていなかった。海部田の爺さんがいないのである。しようがなかった。


「今までだって大量に覚えることはあったはずだぞ。むしろ昔のほうが色々と覚えることは多かったし、記憶媒体に膨大な負担がかかったいただろう。記憶障害なら、そういった時点で起きていてもおかしくない。記憶媒体がぶっ壊れる要因が今のところハッキング事件しか思いつかないが、あっちは問題なかったんだ……もう要因が見当たらないが、あるなら教えてほしいくらいだ」


「……」


 答えない……か。まあ、そんなこったろうと思った。

 もう後半は過ぎた。もう少しだ。


「あとさ、9日の夜間任務の時さ、お前に今気温どんくらいか聞いたの覚えてるか? さすがにこれは覚えてるよな?」


「ええ、まあ……」


「その時、お前は「さあ?」って答えたろ。でもよ、それはおかしいだろ。うちのユイ、外気温測れるんだぜ? そういう機能があるんだよ。お前あるか?」


「いや、その時は故障してたんですけど……」


「んなわけあるか。その機能故障してるならなぜあの時言わなかった? さあ?で済まさずに言ってくれよ。いつから故障してたんだ。場合によってはログが残ってるはずだろ」


「いや、数日前からですが」


「数日前っていつよ。ログがそんな大雑把な数字残してるわけねえだろ」


 だが、そのあとは「ログが残ってない」の一点張りだった。これも本来ならおかしいことだ。ログを残す機器は予備を除けば単一だ。残っていないという事があり得ないし、もし残っていないならその他の機器の動作ログもある時期から消えてることになる。それに気づかない筈がないし、気づいたら今後の動作チェックにも使えなくなるので即行で直させてほしいと要求するはずだ。それはなかった。それについては、何も答えなかった。


 ……そうだ、この際ついでだ。


「……一つ質問していいか」


「はい?」


「ちょっと実験したい。砂漠を歩いていたところに一匹の亀がいるんだが、それをひっくり返して動けないようにしてしまった。ジタバタ動いても元に戻れないみたいだけど、あなたはそれを絶対に助けようとしない。さて、その理由は?」


「え?」


 一瞬、和弥が「あっ」と呟いた。和弥は知っていたようだ。新澤さんは質問の意図がわからず「?」と首をかしげていたが、ユイはもっと首をかしげていた。


「……いや、知りませんよ。なんで倒したんですか」


「だから、その理由を答えてほしい」


「いや、ですから知りませんって。やる意味がないですし」


「そうか……なるほど、その回答か」


「はい? あの、さっきから何を言って―――」


「この時点でお前は“そっくりさん”だって決まったようなものだな、俺にしてみれば」


「はぁ? 一体どういうことで―――」


「お前、前に出した回答を違うぞ。まさかこれも忘れたんか?」


「ッ!」


 これは数ヵ月前に政府専用機であったものだ。ちょうど思い出したので、もしやと思ってやってみせたが案の定だ。嘗て山内さんが、これをユイに出したことがある。

 和弥も思わず俺に聞いた。


「それ、『フォークト=カンプフ感情移入度測定法』か?」


「ご名答。これ、前にユイに出したことがあったんだが、見た感じの感情移入度が違う。アイツの場合、もっと感情的になってて驚いた記憶があった。まさか、あの時の事を忘れてるとは言うまい。……あぁ、ユイじゃないから知らんか」


 あの時は、結構感情的になってこの質問に疑問をぶつけていたはずだ。その様子は、アンドロイドとは区別はつかないだろうという話にまでなった。今回は、完全に“アンドロイド”だったのだ。


「あれから数ヵ月は経ったが……あれの記憶までないなんて言わんな? よほど都合よく記憶が消されてるらしいが、そんなメモリー機器うちの爺さん作ったっけねぇ……」


「……」


 大体、ここら辺が根拠として出そろっている。この後は、アイツがどんな反応を示すか見極めるつもりだった。ここまでくると、和弥も、新澤さんも、完全にアイツを疑っていた。「なぜ反論しない……? まさか?」そんな言葉が、二人の脳裏には響いていることであろう。そして、そういった疑問に関しての答えを、誰でもないアイツが出すことを願っていたのだ。


 ……その標的となったそいつは、


「……でもそれ、状況証拠ですよね?」


「うん?」


 まだ、抵抗するつもりだった。


「半分前後は推測が入っています。状況証拠を持ってきたところで、それらをもって明確に私がスパイだってことにはならない筈です。わかってやってるんじゃないですよね? 和弥さんも言ってましたよ、明確な根拠を出せって」


 言わんとしていることは間違ってはいないかもしれない。確かに、今まで羅列したのはあくまで自身の記憶とコイツの発言から照らし合わせた状況証拠であり、それらをもって明確な根拠として提示することは必ずしも得策とは言えないだろう。今まで羅列した証拠は、場合によっては覆されるリスクもはらんでいる。


……だが、


「……そうだな。もったいぶってすまなかった」


「え?」


 俺は口元をニヤッとさせた。この時を待っていたのだ。やっと、思う存分に切り札を出すことができる。


「ちょっと確認させろ」


「え、ちょ―――」


 俺はユイの右肩を掴んだ。抵抗はするが、それでも、見るだけだったので楽だった。俺が見たかったのは、ユイの右肩部分……防弾チョッキがギリギリかかっていない、戦闘服部分が表に出ている部分だった。

 そこには、切り傷があった。これは、宝町ICで起こった橋の崩壊時、俺を庇って負傷した際に起きたものだ。破片が、この衣服を切り刻んだのだ。


 ……俺は、その下の部分を除いた。


「……だろうと思った。“なんで直っていない”?」


「直ってない?」


「よく見ろ。うちのユイの皮膚は、これくらいの傷だったら人工皮膚の組織が外気温の熱を使って勝手に変形し、相互接着の作用をもって勝手にふさがってるはずだ。あれから1週間も経ったんだぞ。だのにこれっぽっちも回復してねえのはなんでだよ?」


「ですから、それも故障してて……」


「バカ言え、こればっかりは故障じゃ済まされねえぞ」


 これが切り札の一つだった。確認自体は今初めてやったのだが、もしかしたらと思ってみてみたやまがあたったようだ。あの時、衣服だけでなく、その下にあった皮膚部分も軽く削っていたのだ。

 人工皮膚の自己修復機能は、今までも何度も行われてきた。これくらいの傷ならば、人工皮膚が独自の相互接着の効果を発揮し、勝手に傷口を塞ぐはずなのだ。そうでもしなければ、ロボットにとってマズイ事態になる。

 ロボットを含む機械にとって、“外気中の塵や埃”は天敵だ。こうした外部的な損傷は、場合によっては内部にゴミの流入を許すこととなり、故障に繋がる。このように傷がついてしまっているものはなおさらだ。暗くてよく見えないが、よくよく見たらたぶん内部機器か、もしくは腕を覆っている装甲が見えてしまうかもしれない。たとえ装甲であったとしても、ゴミが溜まることは好まれないだろう。

 そうしたことを防ぐために、設計段階から滅多なことがないように機能不全にならない様になっており、仮に一部分でもなったら、即行で警報が鳴る。当然、本人は気づく。そこがやられた重要性はしっかり自覚しているはずで、すぐに周囲に知らせて傷口部分を別の方法で塞ぐなどの手段を講じるはずだ。そうした知らせがなかったから、俺等は今まで傷口を塞ぐことをしなかったのだ。自分で塞ぐのだろうと思ったからだ。


 そんで、実際に見てみたらこのザマだ。つまり、そもそもこの傷に関しての警報はなかったし、見ての通り、自己修復機能すらなかったという何よりの証拠である。あれから1週間も経った。それで、何も変化がないのはどうとも説明がつかない。


 さらに、


「ほい」


「?」


 俺は握りこぶしを突き出した。いつもの、あのサインのはずだ。

 ……だが、


「……これがどうかしたんですか?」


 そう言いながら、渋々同じく拳をこつんとついてきた。だが、俺の知ってるしぐさじゃない。


「その対応は昔のユイだな。最近は割とノリノリでやってた記憶しかない。だが、ある時からそうはならなくなったんだよなぁ……はて、いつだったっけかなぁ」


 最後は若干とぼけるような口調をした。ある意味、このサインを昔からやっててよかったかもしれない。グーサインの応対の仕方に差異がある。憂鬱モードになった時も、これだけは出した途端すぐに反応してくれたのだ。条件反射の如くだ。今回は、それがない。……いや、ある時から、それがなくなった。これも状況証拠ではあるが、俺に言わせれば、切り札の一つだ。

 

 ……そして、


「……最後に一つ。これだけは、絶対に譲れない」


 最後の、切り札を出した。3人が緊張の面持ちで見つめる中、俺はポケットから、あるモノを取り出した。


「……ヘアクリップ?」


 新澤さんがそう呟いた。俺の手元にあるのは、ユイのヘアクリップだ。俺がプレゼントで渡したもの。和弥も、俺が一時的に持っていたのを思い出した。一見、形や色は、俺が実際に作ったものと同じに見える。


「……これさ」


 ……だが、実際には……




「……なんで、裏に何も書いてないわけ?」




 裏には、何も書かれていなかった。桜色の生地が、広がるだけだったのだ。

 俺はそこには、ちゃんとメッセージ的な意味を持たせてあの言葉を残した。ユイなら、今でも覚えているであろう、あの言葉をだ。なぜだ。


 なぜ、それがない?


「これ、削った後も何もないんだよ。綺麗な生地じゃねえか。さぞ良質なものを使ったんだろうな。だがよ、これ、俺のあげた奴じゃねえよな? 俺の作った奴は若干形ずれてんだよ。こんなに完璧な形してねえぞ」


「戦闘中に変わっただけでは?」


「だったらもっと崩れてもいいだろうが。なんで変形したら余計完璧な形になるんだよ。……ああもちろん、無くしたってのもおかしいからな? 俺が預かるまではお前はしっかり胸ポケットにしまっていたし、そのポケットが使えなかったときはしっかり持っていた。どうあがいても落としようがないな。それに、これは俺がオリジナルで作ったもので、世界に一つだけだ。即興で用意はできないはずだ。……さて、これは誰に貰ったのかな? ん?」


「……」


 ユイはもう抵抗する様子はなかった。完全に俯いて固まっていた。もう抵抗するだけ無駄だと判断したのだろうか。だが、無理もない。この最後のヘアクリップの奴は、自身を持って言える明確な根拠だ。このヘアクリップが、俺の言いたいすべてを証言しているといっても過言ではないだろう。奴は、このヘアクリップの存在は知れど、裏側にあるメッセージまでは知らなかったのだ。


 もう根拠は提示し終えた。状況証拠などは確かに相当数あったものの、それでも、総合的に見れば、十二分にありえるであろうことはこれで証明したつもりだ。何より、これっぽっちも反論がないことが、何よりの“根拠”だった。

 和弥も新澤さんも、完全にアイツの事を見ていた。疑念と困惑が混ざった目だ。複雑な心境であるはずだ。これだけ立て続けに根拠を示したのに、それにしっかり反論しない。いや、しようとすらしない。その姿勢は、二人にあらぬ想像をさせることとなった。

 ……もちろん、その想像は俺も共有することとなった。


「……答えてくれよ。お望み通り“明確な根拠”を出したぞ。今度はアンタの番だ。しっかり反論してくれ。俺はすべてを聞く用意がある」


 間違っていたらまちがっていたで、それはちゃんと認めるつもりだった。もしかしたら本当に勘違いかもしれない。そうなったら俺はしっかり責任は取るつもりだった。

 ……だが、どうやらその必要はなさそうだった。一向に返事がない。俯いたまま、固まっていた。お互い、そのまま固まった。長方形の部屋のうち短辺にあたる壁から一定距離離れ、その壁をユイが背にした形で佇み、その前を、俺たち3人横に並んでが一定距離保ちつつ正対する形となった。


 1対3。完全にこの構図となった。


「答えないのか? 何度も言うが俺は根拠を示した。今度はお前の番だ。……どうなんだ。お前はこの根拠の通りスパイなのかどうなのか。はっきり答えてくれ」


「……」


「……無回答は肯定だって捉えるぞ? いいのか?」


「……」


 まだ答えない。何も言わない状況にイラついた俺は思わず、


「……何とか言ったらどうなんだ! ああッ?!」


 そう軽く怒鳴ってしまった。すぐに新澤さんが「どうどう」と宥めるが、怒りは収まらない。肯定でも否定でもいい。とにかく答えがほしかった。何をしているんだ。こんなんで時間稼ぎにはならないぞ。


「(クソッたれ、何を狙ってやがる……)」


 俺はそうイラつかずにはいられなかった。宥めた新澤さんが俺を心配そうに見つめる。申し訳なかった。俺ももう少し、冷静になるべきだ。だが、この怒りはどこにぶつければいいのだ。放出しようのない怒りに、俺はうち震えていた。


「祥樹……」


 右隣から心配そうに和弥の声をかけてきたが、申し訳なさを感じつつも、俺は無視した。こうなったら、目の前のコイツが答えを出すまで、いつまでも待つ覚悟を固めた。そうでもしなければ、絶対に解決しないだろう。



 ……だが、



「―――ッ!?」


 右側から、それを打ち消す声が聞こえた。




「伏せろ! 右側にスナイパー!」




 和弥の声にすぐに反応した。一瞬右を向くが、それでも確認はできない。次の瞬間には、とにかく伏せて弾を躱すことにした。


 ……その数瞬後だった。



 ギシャァンッ    ガラガラガラ.....



「ぅあァ!? あ、あぶねェ!」


 狙撃の弾が飛んできた。窓枠予定っぽい好き抜けのところから、高速で弾が飛んでくる風切り音が一瞬聞こえたと思ったら、左側の壁のコンクリートにその弾が直撃。命中部分のコンクリートが瓦礫と化した。全員伏せていたことでギリギリ難を逃れたが、和弥の警告がなかった場合、着弾位置とコンクリートの破損状況から狙撃の角度を逆算すると、間違いなくこれは俺を狙った狙撃だ。


「(クソッ! 敵に気づかれたか!)」


 場所が悪かったか? 狙撃がいるとなれば厄介だ。こうなったらすぐに退避して体勢を立て直し―――


「―――ッ! 祥樹! 後ろ!」


 今度は新澤さんの声だった。伏せたとき、俺は思わず右腕で顔を覆いながら左後方を向いていた。その視線の先で、同じく伏せていた新澤さんは、俺の後ろを指さして警告した。


「―――ッ! クソッ!」


 そこに迫っていた“ヤツ”に、俺は思わず悪態をついた。

 すぐにスリングを手繰り寄せ、フタゴーを横にし顔の前に出して、目の前から迫ってきた“靴の裏”に何度ガードとエジェクションポートの付け根部分を合わせて盾にした。

 奴は半分ぐらい飛び蹴りの状態で攻撃を仕掛けてきたのだ。だが、即興で出せる力をすべて前に押し出し、それらを何とか抑えることに成功。逆に押し返し、奴との距離を話した。


 顔は見えない。だが、口物の形からして、表情は間違いなく、“無表情”だ。


 俺らはすぐに後退した。スナイパーを警戒し、着弾位置とコースから考えてスナイパーが居そうな場所を大雑把に逆算。そこから狙われない様、近くにあった柱を陰にしてフタゴーを構えた。若干右前方に和弥、若干左後方に新澤さんがいる状態で、俺ら全員は、フタゴーをある一点に向けていた。


 目の前にいる奴は……何も、反応しなかった。その瞬間……、


「そ、そんな……」


「おいおい……ウソだろ」


 正体を知った二人は信じられないといった様子でそう口にした。それでも、しっかりフタゴーは構える。それは、すべて護身のためだった。好きでやっているものではなかった。


 ……そして、小さく持っていた希望も無残に砕かれ、あろうことか、俺にとって一番許せない結果となった現実に対して、俺は、その元凶となった目の前にいる奴に対して、小さく怒りを込めて言い放った。





「―――ついに化けの皮はがしやがったな、“偽物”め」





 奴は動かない。ただ、その顔だけは上げた。



 俺らは、その表情に恐怖することとなった。奴は……、






 赤色の両眼を輝かせ、俺等を見て“不気味に笑っていた”のである…………

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