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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第70曲 文化部補完計画

 生徒会長による『お昼休みはウキウキリスニング』は開始当初からとても好評で生徒たちにも大うけしていた。


 質問箱への投書も趣味や私生活をどう過ごしているかなど会長個人に対するものばかりで、それだけ全校生徒から支持されてるということなのかな?


 でもたまに感想というかわたしへの激励が混じっていることも。


「今日の投書は何かな~。

 なになに『ゆきさん、大好きです。愛してます』ですか。

 クラスと名前まで記入して真面目な方ですね。

 応援ありがとう!わたしもみんなのこと愛してるよー!」


 相方の田淵先輩が何とも言えない顔をしてる。


(何にも気づいてないなぁ。公開告白までしたのに意識もされずに玉砕とは可哀想に)


「なにその哀れみに満ちた目。わたし何か変なこと言った?」


「いえいえ。ゆき会長はそのままでいいと思うよ。」


「??」


 こんなことが何度か続いて、いつのまにかわたしの二つ名に「無自覚ボマー」ってのが増えていた。


 爆弾魔?なんで?




 そしてもうひとつの活動、部活応援。


 わたしが部活の応援に行けば好成績を残してくれるので、そのうち文化部からも応援に来てほしいという依頼が来るようになった。


 わたしがいることで気が引き締まってやる気が出るからというのだから断るわけにもいかない。


 実際に行ってみるととても歓迎されて、確かに活気に満ちた雰囲気にはなったようだ。


 でもグラウンドに出ていくわけでもないのにハグを求められたのはどうしてだろう。


 ただ参加したおかげもあって文化部の催し自体が少ないということに気が付いた。


 催しが少ないため学校から支給される部費が少なく、そのため原材料費などは自腹で活動しているケースが少なくないことにも。


 生徒会のみんなと話し合ってどうにか増額できないかと頭をひねってみたものの、あちらを立てればこちらが立たずになってしまい上手くいかない。


 どの部だって部費の増額を望んでいるからだ。でも予算自体は決まっているのでその中でやりくりしないといけない。


 正直手詰まり。頭を抱えて考える。

 

 そうだ!


「学校から出せないなら自分たちで稼ぐっていうのはどうかな?」


「どういうことだ?」


 谷村副会長が首をひねる。


「フリマ……?」


 文香がボソッとつぶやいた。さすが!


「ビンゴ!学内でフリーマーケットをやるんだよ!」


 フリーマーケットなら部費稼ぎが出来て最高じゃないか!


 おまけに普段発表会などの催しが少ない文化部にとって絶好の宣伝の場にもなる。


「でも学校側の許可は下りる?」


 睦美先輩の言うことはごもっとも。だけどわたしは自信満々に言い切った。


「大丈夫!わたしに任せておいて!」


 休日開催なので、校庭の使用許可や外部の人間の立ち入り許可などもろもろの手続きは必要になるだろう。


 それらの書類作成の指示を与えてわたしはさっそく職員室へとのりこんだ。


 * * *

 

「相変わらず決めたら即行動だな」


 背中を見送りながら副会長の谷村がそう漏らすとすぐに庶務の文香が答える。


「でもあれだけ楽しそうにしてるゆきちゃんなら任せておいて大丈夫でしょうね」


 くすくすと笑いを漏らす書記の睦美先輩と会計の佳乃先輩。


 その場の雰囲気はもうフリーマーケット開催が決定したものとして動き出している。


 すでに生徒会内でのゆきへの信頼は絶対的なものになっていた。


 * * *

 

「たのもー!」


 職員室に入るなり大きな声でごあいさつ。


「広沢生徒会長。道場破りかな?」


 校長先生がニコニコしながら出迎えてくれた。うむ、ご苦労!


「実は先生方に相談事がありまして、不肖わたくしめが出向いて参った次第!」


「なんで今日はそんなに時代がかってるんだ?」


 山野先生の呆れ顔。よきよき、くるしゅーない。


 文化部のとある部長さんの影響を受けてしまっているだけのことだ。


「いや、文化部というのは普段催しが少ない分、部費が少々寂しいことになっております!

 そして催しが少ないということは発表の場が少ないということでもある!

 それなのに普段の部活で使う原材料まではとても部費で賄うことはできず、自腹を切って購入しているのが現実。

 このような事態を放置していて良いものか!否、断じて否であります!

 そこで生徒会としては休日を利用してのフリーマーケットという形で発表の場と部費の補充という手段を与えようと立案しました!」


 そこまで一息でまくしたてると、生徒指導の白峰先生が質問をしてきた。


「フリーマーケットをするにしても集客ができなければ意味がないだろう?あてはあるのか?」


「愚問なり!白峰先生!我々生徒会が何のために普段から地域との交流会として町内ゴミ清掃や町内会の会議に参加しているとお思いか!

 最初から利益を目的にお付き合いをしているわけではないが、このようなときに協力を仰ぐのも至極当然。

 町内会にお願いして商店街で大々的にポスターやビラ配りなどの宣伝活動をさせてもらう所存!

 そのための人員も文化部から募ればいたって容易な事でしょう!

 というわけで先生方!必要書類はすぐに揃えますので承認のハンコを用意してお待ちくだされ!」


 それだけ言うとわたしは職員室を後にした。催しの説明と人員集めに各部を回らないといけないから時間が惜しい。


 * *  *


「たしか最初に入ってきたときに相談事って言ってたような気がしたんですが」


 校長先生がくすくすと笑いながらそう言うと山野先生が申し訳なさそうな顔になる。


「すいません、あれじゃ事後報告ですよね」


「まぁ反論の余地もないほど細部まで計画されていたのであれ以上言うことなどありませんでしたけどね」


 白峰先生が苦虫をかみつぶしたような顔で校長先生に詰め寄った。


「でも外部の人間を校内に入れるのですから、何かあったときはどうするんですか」


 その言葉に校長はスッと目を細める。


「あの会長がそんな基本的なことを計算に入れてないはずもないでしょうな。

 風紀委員と協力して警備体制をとるものと思われますが、何かあったときに責任を取るのが我々教師の仕事でしょう」


 そう言われてしまってはさすがの白峰先生もそれ以上口を挟むことなどできない。


 教師たちの間でも生徒会長の手腕は確かに認められつつあった。


 * * *


「てなわけでフリーマーケットを開催して活動内容の発表をするついでに材料費を稼ごうという話になったから!

 できれば町内会に貸しを作っておきたいから、開催までの期間中は町の清掃と宣伝活動のために各部活から人員を出してほしい。

 大丈夫かな?」


 各部活の部長連中へ順番に声をかけて回るとみんな揃って好反応。


 家庭科部は料理を振舞うということだったので消防署への提出書類も必要になるな。


 開催する当事者たちの協力の確約は得られたので、次は協力者の説得と学内学外問わずの宣伝活動にフェーズが移行。


 次の日さっそく校内放送でフリーマーケットの開催を告知した。


 あえて参加条件を設けなかったことで、文化部だけでなく個人や運動部からの参加申請も得ることができた。


 どうせお祭りみたいなもんなんだから少しでも賑やかな方がいいという目論見は成功。


 前日に作成しておいたチラシを全校生徒に配布して各御家庭に宣伝することも忘れない。


 そして翌日の放課後はちょうど町内会の会合に参加する予定だったので商店街の皆さんを説得。


 各部活が懇意にしている原材料屋さんのチラシをブースに掲載することと、地域名産品の出品ブースの設置を提案するとみんな乗り気になってくれた。


 当日必要なブルーシートやテントなどの大道具も搬入から設置まで手伝ってくれるというありがたい申し出も得ることができた。


 こうして商店街の活性化と学校行事の充実を両立させるための催しの準備は順調に進んでいった。


 開催は来月の土日、2日間。


 それまでの期間は文化部や任意で参加してくれた面々を含めての地域振興活動やボランティア活動に精を出し、同時並行でフリマの宣伝活動も行っていった。


 チラシを受け取った人々の反応もなかなかに好評。


 当日の警備協力を薫先輩にお願いしたらふたつ返事で了承してくれたし、これでもう障害となるものは何もない。


 来月の開催日が今から楽しみだ!

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― 新着の感想 ―
文化部主導のフリーマーケットというか、プチ文化祭みたいなノリですね。 漫研が同人誌売っていたら、同人誌即売会かな。
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