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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第69曲 生徒会長、本領発揮

 幸い日曜日には熱も引いてくれて、月曜は問題なく学校に来ることができた。


 一昨日の放送事故の結果、なぜかわたしのチャンネル登録者はさらに激増して現在450万人。


 なにがきっかけでバズるか分かんないものだ。


 より姉の状況はしばらくしてからそれとなくたずねてみることにしよう。


 直接聞いても「なんともねー」としか言わないだろうからね、あの頑固姉は。


 おまいう?うるさいよ。



 

 クラスメート達も配信を見て心配してくれていたようで質問攻めにあったけど、体調がすっかり良くなっていたので安心してくれたようだ。


 音楽の斎藤先生も倒れたことを知っていたようで安静にしておくため今日はわたしの歌はなしということに。先生も配信見てるのね。


 そして昼休み。


 今日は以前から放送委員の田淵義之たぶちよしゆき先輩に打診していたことの打ち合わせで放送室へとお邪魔している。


「それじゃ、田淵先輩このまま告知しちゃいましょうか。司会進行はお任せしますよ」


「うん、まかせといて」


 真面目を絵に描いたような黒縁メガネのずれを直して、放送開始のスイッチをいれる。


「ぴんぽんばんぽーん♪これって1回やってみたかったんだよね」


「ゆき会長、もうマイク入ってるよ」


「え」


 ……。


 わたしは椅子から立ち上がり、放送室のドアを開けてもう一度締める。そしてわざと大きな音を出して歩み寄り、田淵先輩に挨拶。


「田淵先輩、遅くなりました!さぁ放送始めましょうか!あれ?もうマイク入ってるんですか?」


「……」


「なんか言ってくださいよ」


「さすがにその誤魔化し方は無理があるんじゃないかな」


 わかってるよ!でも恥ずかしいじゃん!


 テンション上がってるのバレバレじゃん!


「なんのことでしょう?ふふ。それでは田淵先輩、告知をお願いします!」


 笑顔で圧をかけてこの話題にはこれ以上触れるなの合図。


 先輩も意図は察してくれたようで何事もなかったように放送を進行していく。このあたりはさすがプロ!


「さて、ここで我が校の名物会長、ゆき生徒会長からお知らせがあります。」


 名物会長って。笹かまぼこみたいな紹介じゃん。確か奈良だっけ。


「ご紹介にあずかりました、浜松名物うなぎと同列の生徒会長ゆきです」


 やっぱりボケにはのっかっていかないとね。


「この度、放送委員の田淵先輩と秘密会談を重ねた結果、わたし生徒会長のゆきと田淵先輩で定期的にお昼休みのトークショーをすることになりました!はい拍手!パチパチパチパチ」


 すこしでも学校生活を楽しくできるよう、考えた策のひとつ。


 名付けて『お昼休みはウキウキリスニング!』サングラスはかけません。


「毎日やるのはさすがに無理があるから、まず休み明けでダルダルな月曜日、中だるみの水曜日、翌日休日でテンションアゲアゲの金曜の週3回!やっていこうと思います」


「放送室前に質問箱を設けてるので、ゆき会長への質問などある方はどんどん投書してください!」


 なんでわたしだけ?


「田淵委員長の事でもいいじゃないですか。先輩の事気になってる子とかいるでしょ!」


 わたしのことばっかりはズルい。


「いやいや、需要がないだろ。僕の私生活なんて聞いて誰得だよって」


 私生活とな!


「え、わたしの私生活暴かれちゃうんですか?わたしも健全な男の子ですからマズイこといいそうになったらピーって音いれてくださいね」


「生放送だよ」


「ではあまりセンシティブな内容の質問はクシャポイっていうことで」


「早速今週の水曜から始めてくんで、みんな楽しみにしてくれよな!」


 さすが放送委員、きれいにまとめたので最後はわたしの出番だな。


「ピンポンパンポーン♪」


「結局最後もやるんじゃん」


 やらいでか!




 生徒会長だからと言って学校の雑用ばかりやらされていてはつまらないし、たまったもんじゃない。


 だからわたしは個人的に動けることは何でもやっていった。


 組織的に生徒会を動かすには学校側の許可も必要だけど、生徒会長個人としてやる活動に関しては許可など必要ないからだ。


 そこで目を付けたのが先の放送委員とのコラボと、もうひとつ。


 各部活の公式試合へ応援しに行くことだ。


 最初は野球部から始まった。春の選抜に向けての地区予選。


 生徒会長直々に応援ということでロッカールームに入れてくれることになった。


 作戦会議には参加できないので、その間はじっと見ているだけだったけど試合開始前に円陣を組む段になってお声がかかった。


「会長からも一言おねがいしますよ」


 えーそういうのって主将の仕事じゃないの?


「キャプテンからは?」


「もちろんやるよ。でも最後の締めは会長で。みんなゆき会長のファンだから気合も入るってもんで」


 そこまで言われたらやるっきゃない。


 みんなで円陣を組む。両隣の部員の顔が赤い。


 照れてんじゃねーよ。


 そしてキャプテンの叱咤激励に続いてわたしも声を張り上げる。


「みんなが毎日遅くまで練習してたのはわたしも見てたよ!

 努力は嘘をつかない!

 あとは自分自身に負けないこと!

 自分どころか相手も吞み込んでやるくらいの気持ちで行ってきて!」


 まぁ会長としてはこんなもんかな。いい具合に気合も入ったようだ。


 そして選手入場が始まる。ひとりひとりわたしの前を通り過ぎてマウンドに入っていくのだけど、最初は中学から一緒の木野村君だった。


「しっかり頑張ってきて!」


 よく知った仲なのでハグをして送り出す。


「!!!!」


 次に前を通り過ぎるのはキャプテン。なんだその期待に満ちた目は。


 はぁ。わかりましたよ。


 結局キャプテン含め出場する全員にハグをしてマウンドに送り出した。


 実況の放送が流れる。


『さて次は〇〇学園の選手たちが入場してきました。みんな自身に満ち溢れたいい笑顔ですね。これは期待がもてそうです』


 いや、それはただ単にニヤけているだけだと思うよ……。


 それにしても男って生き物はなんて単純な生き物なんだろう。


 わたしの激励とハグは想像以上に効果があったようで、発奮した選手たちは全員が好プレーを連発。


 打線も爆発して結果圧倒的な大差で勝利した。


 男にハグされてそんなに嬉しいか。なんか怖いぞ。




 この初めての部活応援は瞬く間に評判となって、うちの試合にも来てほしいというお願いが殺到。


 生徒会室のホワイトボードは各クラブの公式試合の予定がびっしりと書き込まれていくことになってしまった。


 そして時には試合がかぶるときもあったので、その時はお昼の生放送で抽選。


 今回は男子バスケ部と女子バレー部がかぶっていたので即日抽選会開催。


 結果会長の応援を引き当てたのは女子バレー部だった。


 後から聞いた話では抽選に当たった女子バレー部の面々は抱き合って喜んでいたらしい。


 えーそこまで!?


 わたし何にも大したことできないよ?


「男子バスケ部も気を落とさないで!勝ち抜いたらちゃんと応援に行くから!」


 男子バスケ部も会長に来てもらえるまでは負けられないと発奮したとか。


 いや、わたしが行かなくても勝たんかい。




 そして迎えた女子バレー部の試合当日。全員ユニフォームに着替え終わった後の控室に呼ばれて参上。


 当然のように円陣で一言を求められる。


 毎回これやってたらボキャブラリーが尽きちゃうよ。


「みんなのことわたしがちゃんと見てるからね!

 学園の誇りをかけて頑張ってきて!

 この試合で自分自身の壁を越えよう!

 試合後にみんなの成長した姿を楽しみにしてるからね!」


 そして選手入場。


 わたしの前で立ち止まる選手。


 おいおい、さすがにそれはマズいんじゃないかい?


 下手したらセクハラで訴えられるのわたしじゃん。


 でもその眼は期待でキラキラしている。ええい、ままよ!


 結局女子バレー部も全員ハグをして送り出してあげた。


 こっちが恥ずかしいよ……。


 わたしちゃんと男の子なんだよ?スポーツをしているといってもみんな女の子。柔らかいしいい匂いするし。


 心を無にして頑張ったけど、これはけっこうな拷問かもしれない。


 だけど結果は大勝。




 これだけ結果を出されるとこっちも恥ずかしいとか言ってる場合じゃないな。


 いつしか「勝利の女神」とまで言われるようになったわたしは他校でも有名な存在となって羨ましがられるほど。


 よく考えたら現役の人気配信者に直接激励をもらってハグまでしてもらえるなんてラッキーな話なのか。


 他校の子には申し訳ないけどこれはうちの学園生の特権なのかもしれない。


「勝利の女神」は忙しい。


 って()神ちゃうわ!

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― 新着の感想 ―
勝利の神様扱いなので、性別なんか超越した存在なのです(適当)
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