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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第66曲 突撃!ゆきちゃん家の晩御飯!

 まさかこんなに早く来るとは思ってなかった。


 仕事の調整だとか、今持っている仕事の目途(めど)がついてからとか普通そう考えるよね?


 どこの誰が次の日に来るとか予想する?


 月曜が祝日なので3連休の中日(なかび)、日曜日に2人はわざわざ電車を乗り継いでやってきた。


 彩坂きらりさんと日向キリさん。


 現在人気爆発中のVtuberと、わたしの絵を担当してくれたことによって人気急上昇中の神絵師さん。


「配信終わってすぐに電話があった時はたまげたよ。『明日行く~』って、2人連続で」


 さすがに急すぎたので何の準備もできていない。


 もっと時間があったらちゃんとおもてなしできたのに。


「ゆきちゃんひさしぶり~!」


「会いたかったです~!」


 2人して飛びついてきた。うわわ。


 まったく聞いちゃいねー。


 もう、2人とも子供みたいだよ?


「それにしても早かったね?特にキリママは遠いから夕方くらいかなって思ってたのに。」


 たぶんここまで来るのに新幹線から快速に乗り継いでも3時間以上はかかるはず。


 なのに午前中に着くなんて一体何時の電車に乗ったんだ?


「朝イチの電車に飛び乗ってやってきたのよ」


 ウィンクしながらそんなこと言われても。夕べけっこう遅くまで話し込んじゃったよね?


「大丈夫ですか?寝不足とかだったら仮眠してくれてもいいですからね」


「絵師をなめたらダメダメ。3徹とか普通にやるんだから。今日は4時間も寝てから来たんだしピンピンしてるわよ!」


 テンション高いなぁ。本当に徹夜明けとかじゃないよね?


「きらりさんだって近いとは言えないんだから。大丈夫?」


「ゆきさんに会えるだけで眠気なんて吹き飛んじゃうから大丈夫!」


 そう言って2人ともスリスリしてくる。猫か。


 そんなやりとりをしていたら背筋がぞくりとした。


 背後から殺気!


 振り返ると、より姉が腕組みをして玄関に立っている。


「ゆきー朝からそんなところで騒いでると近所迷惑になんだろー」


 笑ってるけど笑ってない!目が怖い!


 より姉の後ろに他の3人もいるけど、警戒心丸出しの表情。こっちも全員猫みたいだな……。


「そ、そだね!じゃ、キリママもきらりさんも入って入って!」


 2人の背中を押してとりあえず家の中に押し込んだ。これ以上しがみつかれてたら姉妹たちが暴走しかねない。


 今日も両親は休日出勤でお仕事。なんか最近本当に忙しそうで、海外出張に行くことも増えてきた。


 疲れがたまっていないといいけど……。


 両親がいないから食卓もちょうど2人分空きがあるので座ってもらうことにした。


 当然わたしの両隣に陣取る2人。


 さらに警戒心が上がる姉妹たち。


 わたしのお客さんなんだしみんなの隣に座らせるのもなんかおかしいでしょ?


「それで今日は二人とも本当にわたしの料理を食べに来ただけなの?」


 わたしが問い掛けるときらりさんとキリママが顔を見合わせてニヤリとした。


 2人はいつの間にそんなに仲良くなったの?


「そりゃもちろんわたしが来たからにはゆきさんとコラボするに決まっているじゃないの」


 聞いてないよ。


 何勝手に決めてんの。告知もしてないよ。


「告知は昨日のうちにわたしの方はやっておいたよ!ささ、ゆきさんも今すぐSNSで緊急告知!」


 果てしなくマイペース過ぎん?


 こっちの都合関係なしだよね。


 でもきらりさんとのコラボは楽しいから異論はない。素直に言うことを聞いてSNSに打ち込んだ。


「でもわたしはVじゃないからちょっとシュールな絵面になりそうだね」


「そんなの関係ないよ。ゆきさんと同じ空間にいれるだけで幸せだから」


 またそんなこと言うとうちの姉妹たちが……。


 ほらぁ、殺気立ってるじゃん。


 きらりさんはいいとして、キリママはどうすんだろ?


「わたしはゆきちゃんだけじゃなくてお姉さん方にもお会いしてみたかったので、これを記念にみなさんの絵を描いていこうかと」


 それは朗報!


 他の姉妹はどういうこと?って顔してるけど、今飛ぶ鳥を落とす勢いの神絵師さんが無料で書いてくれる価値をわかってないな!


「えーめちゃくちゃ嬉しいです!どんな絵を描いてくれるんですか?」


「察するにみなさんゆきちゃんの事が大切で仕方ないようなので、ゆきちゃんを中心にみなさんが囲んでいる絵でも描かせてもらおうかと」


 めっちゃいい!


 これは書き終えたら額縁に入れて飾らないと!


 それからはわたし含めた姉弟妹5人が順番ずつモデルになってまずは簡単な落書きから。


 それすらもかなりの出来で、みんな気に入ってしまい各自自分の部屋に飾りたいと言い出したのを嫌な顔ひとつせず快諾。


 みんなこの絵だけでけっこうなお金になることわかってるのかな?


 ちゃっかりきらりさんまで描いてもらってるし。


 それからいよいよ家族勢揃いの絵に取り掛かってくれたんだけど、すごい集中力で話しかけるのもはばかられた。


 邪魔になっても悪いなと思っていたらきらりさんがわたしと一緒に夕飯を作りたいと言ってくれたので、2人でキッチンに退避。


 姉妹たちもソファーの方へ移動してテレビを見たり本を読んだりして思い思いに過ごすことにしたようだ。


 食卓ではキリママがパッドを持ってお絵描きに専念。


 きらりさんが動画投稿用にカメラを回してくれて、料理をしながら楽しくおしゃべりしているとあっという間に時間が過ぎていった。




「晩御飯できたよー」


 食事の支度ができたのでキリママもいったん休憩。


 もう色塗りの段階まで来ていたらしいのだけど、ちゃんと完成してからと言って進捗は見せてくれなかった。


 今日の献立はホタテ貝柱の明太クリーム、赤魚のホイル焼きにイカとアサリのペペロン炒め。そして野菜たっぷりのポトフ。


 特にポトフは朝から仕込みをして煮込んでいたので、味もしっかり染み込んでるし具材はほろほろになっていて会心の出来だ。


 コメとパンどちらでもいけるので両方用意して各自の好みに任せたら全員パンを選んだ。


 明日の昼ご飯はパエリアでも作るか。


「ゆきちゃん天才!こんな美味しいのそこら辺のお店でも食べられないよ!」


 きらりさんが感激してくれている。


 キリママも夢中になって食べていてボソッと「嫁に欲しい」とのたまっている。


 嫁じゃねー。


「きらりさんもキリママもお金は持ってるんだから高級なお店でもっと美味しいの食べてるでしょ」


 照れくさいので反論したらキリママが指を立てて「チッチッチ」


 うわぁそれやる人初めて見た。


「甘いね、ゆきちゃん。わたしら絵師は締め切りに追われてコンビニ飯で済ませることも多いんだよ」


 マジですか。健康面大丈夫?


 一応健康面には気を付けていて、栄養補助食品やときには宅配なんかも利用して栄養管理をしているらしい。


 それでも締め切り前の修羅場になるとおにぎりだけとかになることもあるそうで、手料理を食べる機会は滅多にないとのこと。


 そりゃ夢中で食べるわけだ。


 きらりさんも配信の企画で深夜に高カロリーの物を食べたりすることもあるらしく、体重含めた健康管理には気を遣うとか。


「それにね、ゆきさんは謙遜して言ってるけどここまでの味なんて星がついてるレストランでもなかなか食べられないよ」


 きらりさんの言葉にキリママもうんうんと賛同している。


「そりゃ、うちのゆきの料理の腕前はそのへんのシェフより上だかんな!」


 なんでより姉がドヤってんの。


「人気者は大変だねー」


「他人事みたいに言ってるけど、ゆきさんこの中で一番の人気者なんだからね。なんでそんなになんでも完璧にできちゃうかなぁ」


 きらりさんがホタテ貝柱を口に放り込みながら言う。


 口に食べ物を入れたまましゃべらないの。


「そりゃあ、うちのゆきちゃんはどこをとっても隙がありませんから」


 今度はかの姉がドヤる番か。


「いいなぁ。わたしもゆきさん欲しい」


 きらりさんそれ爆弾発言。


「「「「あげない」」」」


 声を揃える姉妹たち。満場一致ですね。


 それにしても2人の栄養状態が心配だ。


 明日の帰りには具沢山のシチューでも作って持たせてあげよう。




「あーとても幸せでした!」


「右に同じ」


 2人とも満足してくれたようでご満悦の表情。


 その後のきらりさんとのコラボではわたしの料理をべた褒めするきらりさんを抑えるのが大変だった。


 キリママも最初は見学していただけだったんだけど、途中できらりさんがキリママもいるよーって暴露するもんだから結局カメラの前に出ることに。


 なんだかんだで大騒ぎのうちに時間が過ぎていった。


 初めてわたしの生歌を聞いたキリママ号泣しちゃったし。


 そして配信終了間際。2人がわたしの両隣に立って何かを企んでいるような顔。


 何だろうと思っていると、声を揃えて「ゆきちゃん、いつもありがとう!」と言って両サイドからほっぺにキス。


 赤面して硬直するしかないわたし。




「やっぱりあの2人は敵だー!」


 今日もゆきの自宅スタジオの上では姉妹の叫びが響く。

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