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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第65曲 コスプレとダンスパフォーマンス

 昼一番で開催されるのは、ハッキリ言ってネタ枠の仮装リレー。


 コスプレをして走るだけということなので快諾したのだけど、どんな衣装を着るかについては当日のお楽しみと言われた。


 少しの不安を抱えてはいるけど、手芸部が作ってくれるということなのであんまり無茶はしないだろう。



 そんな甘い認識は儚くも打ち砕かれることになった。


「マジで!?これ着るの?」


 衣装を前にそれだけ言うのが精いっぱいで絶句。


 うちの手芸部レベル高いな!


 あと、小耳にはさんだ話ではこの仮装リレーには風紀委員も絡んでいるらしい。


 あんまり過激な衣装を着させてはダメだからという理由で風紀委員が絡むのはわかるが、どうも嫌な予感がしてならない。


 最近の薫先輩の行動を見ていても不安しかない。



 わたしの予感は嫌な方向で大当たりすることになってしまった。


 他の生徒たちはナース服やチャイナドレスなど妥当な仮装ばかりだったのに。


 わたしの出番が来た途端に音楽が変わった。体育委員もグルか!


 およそ学校のスピーカーから流れるには全く似つかわしくない『結婚行進曲』


 そして風紀委員のメンバー総がかりで引いて行かれるレッドカーペット。


 そこに登場するわたし。


 着ている服は……もちろんウェディングドレス!


 さすがに髪型まで整えている時間はなかったけど、ヴィクトリアンスタイルのドレスにはふんだんにフリルが使われていて豪華の一言。


 ティアラの上から透明のヴェールをかぶり、手にはブーケ。


 どこからどう見ても花嫁だ。新郎はいないけど。


 曲に合わせてゆっくり歩きだすと会場中から洩れる嘆息とどよめき。


 あちこちでカメラのフラッシュがたかれ、まるで政治家の記者会見みたいな様相。


 ふと父兄のほうに目をやるとより姉が鬼気迫る表情でカメラのシャッターを押しまくっていた。トランス状態だ。


「キレイ……」「嫁に来てほしい……」という声があちこちから聞こえてくる。


 嫁には行かんぞ。


 その中でひとり黄色い声援をあげているのは薫先輩。


「ゆきちゃーん!視線こっちこっちー!」って叫んでるからガン無視してやった。


 仮装リレーだから普通に走っていくのが前提なので距離が長い!


 さすがにこんな格好で走れるか!


 しばらくの間、衆目を集め続けるわたし。


 どうせ着るならタキシードがよかったなぁと現実逃避するしかなかった。



 

「あーひどい目にあった」


 もう愚痴しか出てこない。


「まぁまぁ。でもとってもキレイだったよ、ゆきちゃん」


 文香がそう言って慰めてくれるものの、あそこまで注目を浴びるとは思っていなかったのでけっこう精神力を削られた。


 SAN値は残りわずかだ。


「あのまま雑誌の表紙を飾れるくらいキレイだっだなぁ」


 と感嘆の息を漏らす穂香。


 その向こうで薫先輩がデジカメを覗き込んでニヤニヤしている。怖い。


 後日、新聞部から発行された体育祭の特集記事、トップを飾っていたのはわたしのウェディングドレス姿だった。




 散々な目にあったもののようやく1年生最後の種目、学年全員揃ってのダンス披露だ。


 こちらも当然のごとくわたしの本業ということで事前に体育委員の方から打診があり、わたしのダンスのソロパートがある。


 学校の体育祭でやることじゃないでしょ……。


 でもあんなに期待に満ちた目で頼まれたら無下に断ることも出来やしない。


 それでどんなダンスを踊ればいいの?と聞いたらお任せで、と答えられた。


 おいおい。


 お任せって。


 それって学校行事として成り立ってるのか?ようするにわたしのオンステージってことだぞ。


 それでも見たいんです!と力説された。


 あんたが見たいだけじゃないのかと突っ込みたかったけど、きっとかの姉やあか姉、それにより姉に聞いても見たいというに決まってるよなぁと思うとそこまで強く言うこともできなかった。ちくしょう。


 何度も合同で体育の授業をしてたくさん練習をしたのもあって、これだけの人数が息を合わせて踊っていく姿はとっても様になっていてキレイだ。


 一通り全体でのダンスが終わると、曲が変わりアップテンポの歌が流れ始めた。


 わたしの持ち歌『JACKPOT』だ。


 すると1年生全員が大きな輪を作ってしゃがみこみ、わたしはその真ん中へ立たされる格好になった。


 ここまで来て腹をくくらなければプロを名乗る資格はない。


 わたしはノリのいい曲調に合わせて軽快なダンスを踊っていく。ちなみにヘッドマイクをつけてわたしの生歌までついている。


 運動場がひっくり返るんじゃないかと思うほどの声援に合わせてダンスパフォーマンスを披露していく。


 わたしの歌声を聞いて学校のフェンスの向こう側でも通行人が足を止めて踊り、歌うわたしの姿に見入っている。


 けっこう人数がいるようで学校の周りにも人だかりができているみたいだ。


『JACKPOT』が終わってもわたしの歌は終わらず、今度は別のボカロ曲で続いていく。


 生徒たちはまるでわたしのバックダンサーのように後ろで踊り、最前列に押し出されたわたしが歌いながら踊るオンステージが続く。


 運動場はライブ会場そのもので、生徒、教師、父兄。そして事前に噂を聞きつけて見学に来ていた他校生も含めてみんなノリノリで飛び跳ねている。


 この一体感、結構楽しい!


 やがて山場も過ぎて曲の最後は生徒全員が地面に伏せるというポーズで最後を飾った。


 すぐさま割れんばかりの拍手が送られ、1年生全員で観客席や2年生3年生の席に向かって手を振りながら退場。


 この様子をだれかがスマホで撮っていたようで、ネットに上げられたその動画は世界中から視聴され称賛を浴び、わずか数日で3千万回の再生数を記録していた。


 その余波で「ニンジャガールYUKI」のニュースが再度海外でも放送され、大きな話題に。




 わたしも負けじと自分のチャンネルでより姉が取ってくれていたわたしのウェディングドレス姿を動画投稿したところ大バズリ。


 あらゆる国の言語で「美しい」「結婚してほしい」という言葉が並びその動画単体の再生数だけでも1千万回を突破。


 全動画の再生数は合わせると2億回を超えるほどに。チャンネル登録者も爆発的に増えてとうとう450万人に達した。


 こうしてかつて一緒にコラボをした大物Vtuber 全員の数字を抜き去って、とうとう名実ともに人気配信者の仲間入りを果たすことができた。




 そんなおまけもついて体育祭も無事終了。生徒全員に対して行った生徒会SNSでの満足度調査でも98%の人が「楽しかった」と答えるほどの人気ぶりだった。


 残りの2%の人はどこら辺が楽しくなかったのかを聞きたいところだけど。




「しかしあのウェディングドレス姿にここまでの破壊力があったとはねぇ」


 体育祭後の生配信でそう語るわたし。


【いや、あれはバズる】【確定演出だよな】【彩坂きらり:ゆきさんの花嫁姿生で見たい】【日向キリ:画面キャプチャして印刷して部屋に飾ってある】


 みんな好き勝手やってくれてるな。


 喜んでもらってるみたいでよかったけど。


 応援合戦の動画なんかもアップしたいけど、他の生徒も映ってるからそういうわけにもいかないんだよね。


 誰にだって肖像権というのはあるからね。そのへんの権利関係はちゃんとしておかないと後が怖い。


「まだあと2回も体育祭あるし、他にもイベントあるから載せれそうなものは投稿していくからね!」


【ゆきちゃんの私生活が見たい】【生ゆきの普段の姿】【彩坂きらり:お風呂あがり!】【日向キリ:パジャマ姿!】


「きらりさんとキリママはだんだんおっさん化してきてない?私生活かぁ……今度料理動画でも上げようか?」


【それそれ!】【彩坂きらり:エプロン姿!】【日向キリ:試食は?】


「お、意外と食いつくね。料理は得意なんだよ~。もちろんエプロン姿でつくりますけど、きらりさんのコメントがなんかおっさん臭いんですよねぇ……。キリママ、試食したいならうちまで遊びに来てー!」


【日向キリ:いきます!】【キリママうらやま】【ワイもいきてー】【彩坂きらり:ゆきさんわたしも!】


「あはは、きらりさんもいつでも来てくれていいからね!スタジオあるからうちでもコラボできるし」


 このときはリップサービスのつもりだったんです。


 2人とも最近人気がさらに出てきて忙しいのも知ってたからさ。


 でもまさかこの2人にあんな異常なほどの行動力があったなんて……。

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