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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第64曲 高校体育祭デビュー

 入学してしばらくしたらいきなり体育祭。


 中学の体育祭は秋にあったが、高校では春に済ませてしまうらしい。


 秋には文化祭があるのと、受験準備に入る生徒への配慮からだろう。


 高校初の体育祭ということでわたしはたくさんの競技へ参加することに。


 面白そうな競技には片っ端から手を挙げてエントリーしていった。


 高校に入っても飴食い競争があったので中学で参加できなかったリベンジと思って立候補したけど、中学時代と全く同じ理由で却下された。


 なんでわたしが顔を突っ込んだ粉くらいで血を見るんだか……。


 そして依頼されましたよ、応援合戦の団長役。中学の時にチアガールの格好をさせられたアレだ。


 結局3年生の時もあの格好をさせられて2年連続で恥ずかしい思いをした。


 さすがにわたしも学習したので先にどんな格好でやるのかを確認した。


 白と黒のだんだら模様の法被に中は黒のTシャツに黒の武道袴。ナニソレかっこいい!即断で引き受けた。


 武道袴とは馬乗袴と同じくズボンタイプで足が左右に分かれている袴のことだ。女子学生が卒業式で着るようなスカート式のやつは行灯袴という。


 武道袴なら合気道の稽古で着慣れているので動きやすい。


 もうひとつ頼まれたのが仮装リレー。衣装はコスプレみたいなもんだというので、ハロウィンを連想したわたしは快諾。


 そして後悔することになる。


 中学での予行練習と違って高校の体育祭の練習は楽しかった。


 応援合戦は紅白に分かれて3学年からの選抜メンバーで行うので、同じ組になんと先のいじめ事件の当事者4人が含まれていた。


 彼らにはあの後何度か稽古をつけてあげて、武道の精神的な部分を叩きこんだので以前のようなくだらない諍いも無くなり今では元のような仲のいい友人関係に戻っている。


 空手をやっている彼らと同じ組に選抜されたことでわたしの発案で応援合戦では5人で簡単な空手の演武を見せようということになった。


 その練習を繰り返したのだけど、参加者全員元々基礎ができているので呑み込みも早く完璧な演武が出来上がった。


 5人組というのもなんだか戦隊ものみたいでかっこいい。


 これはやる気が出てきたぞ!




 体育祭当日。


 今年わたしが所属するのは白組だ。


 まずわたしが最初に挑むのは障害物競走。


 スタート地点から眺めるとまずは輪くぐり、次に網の中を進んでそれから平均台、最後はハードル走か。


 他の人に差をつけるとしたらあの2カ所だな。


 わたしの番が来た。位置について、よーい。


 パァン!


 ピストルの音と共に駆け出す。最初の輪くぐりは腰の下くらいの高さに設置されている。


 他のみんなは立ち止まってよいしょって感じで超えてたけど、そんなのまどろっこしい。


 勢いを殺さず全力で走り、そのまま頭からダイブ!サーカスの火の輪くぐりをするライオンのように潜り抜けるとそのまま体を丸めて背中で着地。衝撃を逃がすために回転しながら立ち上がりそのままの勢いで走り出す。


 よっしゃスタートダッシュ成功!


 次の網はどうしようもないので背泳ぎの要領で両手を回しながら通り抜けた。


 いよいよ山場は平均台だ。普通に歩いて渡るだけなら誰でもできる。


 わたしだからできる渡り方をお見せしよう!


 またしても勢いを殺さず、平均台が近づいたらジャンプ。


 平均台の上を側転から後ろ向きに着地。そのままバク転。最後はムーンサルト!


 タンタンターンとリズムを刻んで飛び越えた。


 高い位置からの着地になるので膝を曲げて屈みこむようにして衝撃を和らげる。


 そして足に力を込めてバネのように立ち上がり勢いをつけてまた走る。最後のハードルは普通にクリアしてゴール!


 圧倒的大差をつけての1位にご満悦のわたし。


 めちゃくちゃ目立ってたし、観客も驚いていたけど今更気にしても仕方がない。


 だってわたしの入学前からかの姉とあか姉が弟自慢しまくっていろんな噂バラまいてくれてたんだもの。


 中学3年のときに騎馬戦でつけられた二つ名が「猛禽類」ってことまでみんな知ってたし。


 また今回の障害物競走で「猛獣」っていう二つ名が増えたんだけど。




 そして次に控えるは二人三脚。相方は中学からの付き合い、バレー部田村君。よくここ受かったね。


「田村君、50m走の記録は?」


 参考までに聞いてみる。バレー部のキャプテンもしていたことだし、極端に遅いということもないだろう。


「おう、6秒8だ!」


 わたしより少し遅いくらいか。これなら大丈夫。


 わたしは耳打ちで作戦を伝えた。耳打ち程度でいちいち赤面するな!こっちが恥ずかしいわ……。


「そ、そんなんで大丈夫なのか?」


「大丈夫。後はわたしが合わせるから」


 

 順番が回ってきた。田村君に授けた作戦は簡単なもの。『ガンガンいこうぜ』


 つまり田村君は何も気にしなくていいから最初に出す足だけを決めて後は全速力で走ってくれとお願いしたのだ。


 あとはそれに合わせてわたしが足を動かせばいいだけ。シンプルイズベスト!


 わたしの動体視力と身体能力を上手く組み合わせれば十分可能なことだ。


 田村君の顔を見ると若干緊張気味かな?顔赤いけど。


 なんか違う意味で緊張してそうだから突っ込まないでおこう。


 やがて出番が来たので肩を組んでスタートラインに立つ。


 なんだか周囲から殺気を含んだ視線を感じたので見まわしてみると、怒気を含んだ眼で睨まれていた。田村君が。


 当の本人はそんな視線など気にせず鼻の下を伸ばしている。匂いを嗅ぐな!


 ほんっとーに男ってのは!


 デレデレしている田村君のせいでスタートの合図の時、タイミングがずれてしまった。遅い!


 田村君が転びそうになったが、合気道で相手を転ばせることに慣れているので当然引き起こすことにも慣れている。


 襟首をつかんで強引に立ち上がらせると、「走れ!」と叫んだ。全速力で走り出す田村君。


 わたしは彼が足を出すタイミングをすぐにつかんで、タイミングを合わせて走る。全速力よりちょっと遅いくらいだからできることだ。


 これがわたしより足の速い人が相手だとこうはいかない。


 だけど、「これって二人三脚?」っていうくらいのスピードは十分に出ており、圧倒的大差でゴール。よっしゃまたしても1位!


 全速力で走っただけで、わたしがそれに合わせたという話は田村君が言いふらしたおかげですぐに伝わり今回いただいた二つ名は『コピーロボ』


 誰がロボだ。



 これでわたしが出る予定の種目2つが終わった。


 全力を出して順位を競う競技は終わって後は全体競技と応援合戦、そして余興の仮装リレーだけ。


 先の2種類の競技はいろんな意味で目立ってしまった。


 もちろんわたしの身体能力的な意味の部分が一番目立っていたのだけど、その次か同等程度に目立っていたのが薫先輩率いるわたし専属の私設応援団だ。


「ゆき会長~~!がんばって~~!」


 デカい声張り上げちゃってまぁ。薫先輩もすっかりキャラ崩壊しちゃったなぁ。登場時にどんな感じだったか忘れてしまいそうだよ。


 新聞部まで巻き込んでわたしの写真を撮りまくっているし。あの写真どうするつもりだろ。



 各学年の競技が一通りおわったら昼食タイム。


 今年もより姉は講義の時間を調整していつものお父さんスタイルで観戦。今年泣く泣くひとりで学校に行ったのはひよりだ。可哀想。


 お昼のお弁当は当然わたしが作ったもので、みんな美味しそうに食べてくれている。


 一番がっついているのが体育祭に関係のないより姉なのが笑える。


 文香と穂香も一緒にいて、わたしの作ったおかずをつまんでは舌鼓を打っている。


 2人とも中学時代からわたしの料理の大ファンだから、体育祭のお弁当はお重で持ってくると言ったら「わたし達の分も!」と手を挙げてきた。


 全部お世話になるのは悪いから、とお弁当箱を持ってきてはいたが中身を見てみると白米しか入ってなかった。


 おにぎりくらい余分に作ってくるからそんな気遣いいらないのに。


 シュールな絵面が面白いからいいけど。



 昼食が済んでしばしの休憩が終わると、昼一番に行われるのは応援合戦。


 またわたしの出番だ。


 法被に袴、白い鉢巻を巻いて出てきただけで会場のボルテージは数段上がった。盛り上がってるなぁ。


 最初は普通の体育祭らしくシュプレヒコールの応酬。


 それが終わるとそれぞれの出し物といか演目が始まる。


 わたしたちが行う空手の演武は全員が経験者ということもあって息がピッタリ。


 太鼓の音に合わせて突きや蹴りを繰り出していくのだけど、タイミング完璧で頭に巻いた白い鉢巻の揺れ方までシンクロしている。


 続いて4人がわたしに襲い掛かり、わたしがそれを撃退していく型の演武を披露。


 もちろん寸止め。体育祭で青あざだらけにするわけにはいかないからね。


 左右から襲ってきた2人を前後に足を伸ばしての飛び蹴りで撃退したときは盛大な拍手が巻き起こった。


 応援合戦にもどういう基準なのかはわからないが点数がつくということで、白組に加点。


 

 そしていよいよ午後の部が始まった。

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― 新着の感想 ―
某漫画アプリの「未公開ノベルの評価」でこの作品を知り、 先の話が読めないかタイトルから検索して、ここにたどり着きました。 相変わらず面白いので今後も楽しみにしています。
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