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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第1章 充電期間

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第48曲 ゆきちゃんの水着選び

 デンジャラスな修学旅行が終わって1か月半。


 その間にあったことといえば、チャンネル登録者が180万人になっていよいよ200万人の大台が見えてきたことと、より姉が20歳の誕生日を迎えて成人になり、盛大なお祝いをしたこと。


 より姉が一足先に大人になっちゃったね。おめでとう、より姉。


 そして迎えたのは夏休み!


 夏休みと言えばバカンス!


 なのにうちの姉妹たちときたら……。


「あっちー」


「何もする気がおきないです……」


 溶けてやがる。クーラーの下で何言ってんだ。


 温度設定28度だけど。


 でもそれが一番電気代節約できるって言い出したのより姉だからね。


 冷やしすぎは体に毒だしいいことだ。


 それにしても。


 その姿、気になる男の子に見せられる?まったく。


 いるかどうか知らんけど。


「よし!海に行こう!」


「…………」


 はんのうがない。ただのしかばねのようだ。


「シャキッとしろ~!さぁ!海に行こうぜ!」


「そんな話し方ゆきに似合わね~」


 そういう問題じゃない!自分でもわかってるよ!じゃなくて!


 あいかわらずみんな溶けたままだ。


 顔はこっち向いてるから話は聞いてくれてるみたいだけど。


「暑いときこそ暑い外に出て、涼しい遊びをすれば少しはこのだらけた空気感も変わるってば!」


 実際におもいきり暑さを感じた後は少しの冷気がありがたいし、元気に動き回ってる方が夏バテにもなりにくい。


 最近みんな食欲も落ち気味だしこのままじゃダメだ。


「海~!うみうみうみ~!みんなで行こうよ~!」


 最終手段。駄々っ子モード発動。


「あはは、ゆきちゃん子供~」


 ひよりにだけは言われたくない。おまえの真似したんだよ!


「どこまで行こうってんだ~?」


 より姉が反応してくれた。


 これは話が進むか。なんだかんだで我が家でリーダーシップを発揮してくれるのはいつもより姉だ、ここは思い切って。


「どうせなら海に面した民宿なんか借りて……」


「却下」


 まだ最後まで言ってないのに……。


「みんなそんな金ない。どうせまたゆきが出すからとか言うんだろ。そーゆーのダメだって言ってんだろ」


 確かに前も言われたけどさ。


 今まで何度かそういう話はあったけど、ことごとくより姉の反対で潰されてきたっけ。


 言うことに一理あるだけに反論できない。そんなの気にしなくていいのにな。


 でもきっとそこらへんは姉としての矜持なんだろう。


 意見を曲げる気はないようだ。


「なら日帰り!日帰りでいいからさ!△△浜なんていいんじゃない?近いし割とキレイだし」


 わたしのお金使っていいなら沖縄にでも行きたいところなんだけど。


 使う用途がないから貯まっていく一方なんだよね。


 でも沖縄なんて言ったら雷が落ちそうだからやめておく。


「でも水着どうすんだ?あたしまだ買ってねーぞ。それはゆきも同じだろ」


「え?学校で着てるやつでいいかなって」


 競泳水着だけどあれならちゃんと全部隠せるしいいよね。


「「「「アホか」」」」


 キレイにハモった。なんでさ!


「ゆきちゃん、そんなに注目浴びたいの?」


「あれはない」


「さすがにないですね」


「ゆき、あれ着て水泳授業とかよく恥ずかしくなかったな」


 いや、恥ずかしかったんですけど!?


 みんな同じスクール水着の中でひとり競泳水着はさすがに目立つし注目されるしで。


 今年もこれで最後だって思ってなんとか乗り切ったんだからトラウマえぐるようなこと言わないで。


「しょうがねぇな。センスがバグってるゆきのためにも今日はみんなで水着でも買いに行くか」


 歓声があがる。


 なんだよ、みんなも本当はお出かけしたかったんじゃないの?


 わたしが配信や収録でスタジオにこもってることが多いから気を遣ってくれたのかな。それともまた拗ねてた?


 ちゃんと言ってくれたら時間くらいいくらでも作るのに。


 最近になってようやく登録者数の増加は爆発的なものじゃなくなってきて、既存のリスナーさんたちと楽しくお話したりしてたけど一番大切なのはみんなだよ?


 そういう問題じゃないか。みんなわたしが楽しんでいることを優先してくれているんだろう。


 だからもっとわたしが積極的にみんなとの時間を大切にしていかないといけないな。


「ほら、行きますよ」


 用意はや!確かにみんな化粧なんてしなくてもキレイだけどさ。


 でも女の子なんだからもうちょっと準備に時間かかるもんじゃないの?


 やっぱり本当はわたしとどこかに行きたくてしょうがなかったのかな。


 またしても反省。


 わたしは男の子なので髪をとかして着替えたら準備完了。


 無限の水着売り場へ、さぁ行こう!




「涼しい~!」


 ショッピングモールに到着してまず最初に出た言葉。


 道中は本当に命の危険を感じるくらい暑かった。地球温暖化こわい。


 でもこれで海に飛び込んだら気持ちいいだろうな~とも思った。


 でも暑いものは暑い。


 店内に入って空調の聞いた空気を満身に浴びると汗が引いていくのが心地いい。若干寒いくらいだ。


 目的地は水着売り場。


 案内板で場所を確認してロックオン。狙い撃つぜ!




 方向音痴のひよりが迷子にならないように手をつなぐ。


 反対側にはあか姉。


 より姉はみんなを先導するべく先頭に立って歩きだす。


 あれ?かの姉は?


「ここにいますよ」


 おわぁ!びっくりした!


 後方至近距離から聞こえてきたかの姉の声に肩が跳ねる。これがジャンプスケアってやつ?ホラーかよ。


「ゆきちゃん、両手ふさがっちゃってますから。迷子にならないよう服でもつかんでおかないと」


 そう言って服の裾を掴んでいるかの姉。いつの間に。


 気配がないからびっくりした。


 わたしに気配を察知されずに近づくとか忍者ですか、あなたは。


 そうやって団子状態になりながら水着売り場に到着。通行人の邪魔にはならずに済んだけどさ……。


 なんか恥ずかしかったのはわたしだけなのかな。きっとそうなんだろうな。


 でも水着売り場に到着したとたん皆わたしの手、服を離してあっという間に散!忍者集団だった。


 思い思いの方向へ向かい水着を物色してる。


 行動早いなぁ。わたしも自分の選ぼうっと。


 でも水着に関してはわたしが選べる選択肢って少ないんだよね。


 どうして女の子の水着って股部分にもっと余裕のあるのがないのかな……。


 余計なもんがついてないからだろうけど。


 思案しながら水着を見まわしていると、散開したはずの姉妹たちが再集結。


 各々手には水着を持っている。


 似合うかどうかわたしに見てほしいのかな。


「これがゆきに一番似合うと思うぜ!」


 あぁ、やっぱりそういうことだったか。予想はしてたんだけどね……。


 てかより姉が手に持ってるそれってもう紐じゃね?


 誰が着るかそんなもん。手であしらって追い払う。


「ゆきちゃんなんでも似合うけど、これが一番かわいいと思うな!」


 ひよりが持ってきたのはワンピースタイブ。ひまわりの柄なのがなんかひよりっぽくてかわいらしい。


 でもね、完全にわたしの性別を忘れたチョイスだよね。


 めっちゃお股部分ピッチピチ。


 やんわり指摘すると「忘れてた!」って……。お兄ちゃん泣いていい?


 次にやってきたのはかの姉。……ドレス?


 パレオがついていてちゃんと配慮はしてくれてるんだけど、全体的にフリルがすごい!


 おまけにでっかい麦わら帽子まで持ってるし。


 どこのセレブだよ!


 ビーチチェアに座ってトロピカルジュースなんか飲んでそうだよ。とても海に入って遊ぶ姿じゃないよ。


 当然却下。


 最後はあか姉。ここで真打登場。


 ちょっとわくわくしながら見てみると、上は黄色を基調としてハイビスカスが描かれた前で結ぶタイプの水着。


 そして下はデニム!これこれ!こういうのを待ってたんですよ!さすがあか姉!


 一発で気に入ったわたしはこれ以上変なのを持ってこられないうちに即購入。


 レジでお会計を済ませ戻ってきたら案の定。


 より姉、スカートタイプを持ってきたのは合格。でも上はやっぱり胸元ばっくり開いたセクシー水着。


 一体わたしをどうしたいと言うのか。


 ひより、ワンピースがダメって言ったわけじゃないんだよ。手に持ったツーピースのハイレグ水着は置いて、ちゃんとお兄ちゃんと再認識して?


 かの姉はセレブ路線から離れようよ。古代エジプトの踊り子みたいだよ、それ。アクセサリーめっちゃ多いし。遊べるか!


 こうしてゆきちゃん水着選び選手権は圧倒的な差をつけてあか姉の勝利。


 いつの間に勝負になってたのか知らんけど。


 他のみんなの落胆ぶりを見るにきっと自分が選んだものを着て欲しかったんだろうな。


 勘弁して。




 あとはそれぞれが自由に自分の水着を選んでいるのを眺める。


 ふと横を見るとイルカのフロート発見!かわいい!でもさすがに子供っぽいよなぁ。


 何かと背伸びをしたがる14歳の男子中学生は少しでも大人っぽく見られたいものなんです!


 結局しょーもないプライドが勝って購入は断念。欲しいけど……。


 水着を選び終わったみんなが揃って店から出てきた。


 わたしの顔を見てから隣のお店に置いてあるイルカのフロートに視線を移す姉妹たち。


「欲しいのか?」


 より姉がそう聞いてきた。見てたのバレてたのね。恥ずかちい。


「いやでもあんなの子供っぽいし……モニョモニョ……」


 恥ずかしすぎて人差し指をちょんちょんしてたらみんな悶えだした。どうしたのかな?


 ちょっと待ってろとより姉に言われたのでベンチに腰掛けたらみんな揃って隣のお店に入っていった。


 少し待つとより姉の手にはイルカフロートと空気入れの入った紙袋。


「みんなで割り勘して買ったから。大事にしろよ」


「あ、ありがとう!でも子供っぽくないかな?」


 やっぱりそこが心配だ。中三にもなってと言う気持ちが抜けない。


「死ぬほど似合っていますから大丈夫ですよ」


「遊んでるとこ写真に撮る」


「わたしもゆきちゃんと一緒に遊ぶー!」


 誰もバカにしたりなんかせず、似合うとまで言ってくれたから嬉しさのあまり照れ笑い。


 またみんな悶えだした。大丈夫?


 わたしが嬉しそうにイルカフロートの袋を抱えているとみんな満足げにしてくれている。


 その気持ちがまた嬉しい。本当にありがとね、みんな!




 買い物は終わった。後は海で思いっきり遊ぶだけ!楽しみだなぁ。

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