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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第1章 充電期間

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第46曲 千年王城

「そんなの保護者同伴に決まってる」


 何言ってんのより姉。


「同意」


 あか姉まで……。


「あのね、とりあえず落ち着こう。」


 やれやれと言った表情で2人に向き直り、交互にその顔を見ながら諭すように話していく。


「あのね、修・学・旅・行!どこの世界に修学旅行まで保護者同伴で来る生徒がいるっての!?」


「よそはよそ!うちはうち!」


 その理屈はちょっと違う!てかオカンか!


「よそもうちもない!修学旅行は生徒以外参加できないの。去年あか姉だって行ってたじゃない」


 もちろんあか姉は何の問題もなくひとりで修学旅行に参加した。なんなんだこの過保護っぷりは。


「わたしは大丈夫。ゆきは心配。危険」


 ごめんわかんない。


 ただの修学旅行のどこに危険があるのやら。


「ちょっとかの姉もひよりもニヤニヤしてないで説得手伝って!」


 手に余るのでずっと静観している2人に助けを求めた。


 別に反対もしてないし手伝ってくれるだろう。ひよりも来年は行くことになるしね。


「どちらの言い分も分かるから味方しかねますねぇ」


 何言ってんの。2人の言い分のどこに共感した!?


「ゆきちゃんの場合、危険と言えば危険だよね~」


 ひよりまで?一体何が危険だっていうのさ……。


「でもゆきちゃんの言う事の方が世間一般的には正しいかな。より姉、あか姉、それくらいにしておこうよ。

きっとゆきちゃんも帰ってきたころには2人の言ってることの意味が分かってると思うし。

それにそういうことがあってもゆきちゃんに限って大変なことにはならないでしょ」


 ひよりが一番大人な意見を言ってるんだけど、一部腑に落ちない。


 なんだろう大変なことって。


「くっ、ひよりの言うことにも一理ある。堂々とついていくわけにもいかねーし今回は特別に許可してやるしかねーか……」


 なーんで修学旅行に特別許可が必要かなぁ。日本国内なんですけど。


「でも心配なのは本当。くれぐれも気を抜かない」


 そんな緊張感あふれるもんなの、修学旅行って……。


 どうにか全員納得してくれたようだ。なんで学校行事で家族を説得する必要があるのやら。本気で心配してくれてるのは伝わってきたけどさ。




 こうしてようやく、よ~~~やく訪れた修学旅行当日。


 やってきました千年王城!かつての日本の首都!


 普段あんまり地元から出ないわたしはお上りさんよろしく、目を輝かせて周囲をキョロキョロと見まわしている。


「おおー!京都って感じ!人もいっぱいだ!」


 はしゃいでいると文香が寄ってきて耳元でささやいてきた。


「ちょっと!そんなキョロキョロとしてたらお上りの田舎もんみたいじゃない」


「違うの?」


 素朴に思ったことを返したら呆れられた。


「違わないけど……。少しは周りの目とか気にならないの?」


「見られるのはいつものことだし。気にしてたらキリがないよ」


 そう言って笑うと今度はため息。わたしそんな変なこと言ってる?


「はぁ。ゆきちゃんはそういう子だったね……。まぁ楽しそうだしいいか」


 文香のいうことなんてどこ吹く風。


 あちこちを物珍し気に見て回っては文香を呼んで一緒に観光。


 4人1組の班で行動していて、あと1人づつ男子と女子がいるんだけど微笑ましい物を見るかのような目でわたしを眺めている。


 保護者みたいな視線はやめて?


 男子2人、女子2人の構成で班を組んだ瑞穂先生。


 わたしをちゃんと男子のくくりに入れてくれるのはあなたくらいです……。


 そして最初に到着したのは金閣寺。修学旅行だけあってド定番!


 学校行事で池田屋事件跡とかに連れていかれても反応に困るしね。


「うわーすごい!本当に金ぴかだよ、みんな!」


「金閣寺って名前なくらいだからね~」


 一緒に行動していくうちに仲良くなった同じ班の菱川さん。


「でも銀閣寺って銀色じゃねーよな」


 同じく田所君。


 2人とも京都には来たことがあるらしくて、いろいろ教えてくれて参考になる。


 特に田所君は歴史が好きだそうで、そこで起きた歴史的事件のエピソードなんかも語ってくれてめんど……面白い!


 あちこち歩きまわっていたらお腹がすいてきたのでちょうど土産物として売っていた生八つ橋を購入してみんなで分けた。


「うわ、あまーい!美味しい!これはいくらでも食べられるぅ」


 ご満悦なわたしに対して田所君は甘いものが苦手なのかひとつ食べただけで青い顔をしている。


「塩味や辛味は舌にある味蕾の受容体で化学反応を起こして味を感じるんだけど、甘味は反応の仕組みそのものが違うんだよ。だからまだ食べられるって」


 さっきまでのうんちく返しをして、意味の通じない理屈で八つ橋をもうひとつ田所君に手渡す。


 もちろん笑顔で。


「うぅ……」


 青い顔をしながらも受け取り、口に運ぶ。ちみちみ食べる姿はハムスターみたいでちょっと可愛いぞ。


 わたしと田所君のやり取りを見て文香と菱川さんは大笑い。


 やっぱり2人も彼のうんちくがうっとおし……興味あったんだね!


 その後彼は慌てて自販機に向かって走っていき、ブラックコーヒーを一気飲みしていた。胃が荒れるよ?


 初日の自由行動は時間が少ないので、すぐに全校生徒で集合し向かった先は清水寺。


 おお。高い。


 欄干につかまり下を覗き込む。ほぉ。こんな風になっているのか。


 清水の舞台から飛び降りる気持ちでって表現はよく聞くけどこれは納得。


 こりゃ普通の人は助からないわ。


 じっと舞台の下を覗き込んで考え事にふけっていると、後ろで穂香と杏奈が何やらぼそぼそと話している。


「ゆきちゃんなんか思いつめたような顔してるけど飛び降りたりしないよね?」


「ゆきがそんなことするわけないじゃん。どうせここから飛び降りてもわたしならいける、とか思ってんじゃねーの。あははは」


 穂香鋭い。まさにそのこと考えてました。


 あそこの岩場の隙間を交互に飛び移って最後は木をクッションにすればいけるかも。


 やらないけどね。


 大騒ぎになるわ。


 清水寺では音羽の滝にも行った。


 3筋の滝が流れていて、それぞれ「学問成就」「恋愛成就」「延命長寿」のご利益があるらしい。


 どれもわたしには関係ないと思い立ち去ろうとすると文香に呼び止められた。


「ゆきちゃんは飲まないの?一口飲むだけでご利益あるらしいよ?」


 どれもあっちゃ困ることか、どうしようもないことなんだよなぁ。


 でもまぁ延命長寿くらいならいいか。飲むくらいなら。


 ご利益ねぇ……わたしの場合は神様に決められちゃったことだし。苦笑しながら流れ落ちる水をすくい、口に運ぶ。


 うん、冷たくておいしい。この清涼感だけでも飲んだ甲斐はあったかな。


 文香は全種類飲んでるし。


「ご利益あるといいね!」


 そう言って声をかけるとなぜかふくれっ面になった。


「もう、他人事だと思って……」


 なぜわたしは睨まれているんだ?


 周囲を見てみると女性は恋愛成就を飲んでる人が多いな。


 やっぱり女性は恋愛に興味津々な人が多いんだな。いずれはうちの姉妹たちも誰かと……。


「どうしたの?遠い目をして」


 文香がわたしの顔を覗き込んで不審そうに聞いてきた。


「ううん、みんなどんな願いを持ってこの水を飲んでるんだろうなと思ってただけ」


「そうだね、同じ願いでもみんなそれぞれの思いがあって飲んでるんだろうね」


 それぞれの想い、願い、幸せをつかみたいという心。


 ここにはそれが溢れているのかな。


「みんなご利益があるといいな……」


「ふふ、ゆきちゃんらしいけどちゃんと自分のご利益もあるように願ってね」


 ありがとう。でもね、わたしの願いはもうとっくに叶ってるんだよ……。




 ホテルに戻り、夕食。


 お刺身はとっても新鮮でおいしかった。


 どれも少し薄味で物足りなさそうにしている子もいたけど、素材の味を活かした繊細な味付けでわたしは好きだ。


 美味しい美味しいと食べていたらあっという間に完食してしまい、横にいた穂香が「そんなに好きなら分けてやる」といって菜の花のおひたしを皿ごと渡してきた。


 口つけてないじゃん。嫌いなだけでしょ。


 夕食もおわり、宿泊する大部屋でくつろいでいた。もちろん男子部屋だよ!


 しばらくはみんなで談笑していたけど、一人のクラスメートのふいに放った言葉がわたしを凍り付かせた。


「さて、時間も来たしそろそろお風呂行こうぜ!」


「あ…………!」


 わ、忘れてたあぁぁ~~~っ!!


 どどどどっどどうするわたし!?


 緊急事態発生!


 そ、そうだ!瑞穂先生に相談しよう!


 みずえも~~ん!泣

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