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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第二章 立国編

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魔道具二十番

 張り詰めた空気の中、エルマがふと空を見上げて呟いた。


「今宵は……満月のはずじゃが……」


 確かに、時刻はすでに夜。だが、空には雲がかかっており、月の姿はない。それでも周囲は暗くはなかった。天使たちの放つ光が、夜の闇を神々しく照らしている。

 そしてその光の中から、無数の光の剣が現れる。それらはまるでこちらの動きを読んでいるかのように、精密な動きで正確に急所を狙ってくる。

 リリィがそのうちの一本を見切ってこれまでのように軽やかにかわす。だが――


「――にゃん!?」


 彼女が避けたその先に、すでに一本の剣が待ち受けていた。咄嗟に身を捻って直撃だけは免れたが、鋭い刃が肩をかすめる。閃く血飛沫。リリィの表情が一瞬、苦悶に歪んだ。

 エルマも転送魔法で身を回避するが、転送先にも剣は待ち構えていた。まるでその場所を事前に知っていたかのように。光の剣がエルマの防御結界をひとつ、ふたつと正確に破壊する。

 ……やはり、フレイは未来を視ている。

 こちらの行動を先に読み取り、そこへ攻撃を仕掛ける。俺たちの動きは全て見透かされているかのようだった。


「リリィ、師匠、大丈夫か?」


 声をかけながらも、俺自身もすでにオート回避の連鎖に入っていた。


 ――マスター、オート回避発動します。


 剣を避けるため、身体が勝手に跳ねる。右へ――その瞬間、そこにまた一閃。


 ――オート回避発動します。


 今度は左へと転がるように身を躱す。だが、そこにもまた一本の剣が待っていた。


 ――オート回避発動します。


 後方へ、体を丸めて飛ばされる。そこでなおも、光の剣が空を裂く。その時、フレイが無機質な声で呟いた。


「……解せぬ。避ける動作は予測していた。未来において、そちらが右に、次に左に、そして後ろに跳ぶことも視えていた。ならば――なぜ、命中しない……?」


 フレイの表情に確かな困惑が滲んでいた。その驚きは理解できる。回避した方から正確に攻撃すれば、普通は避けられない。彼が視ているのは、『意志ある者』の未来。だがこちらは違う。オート回避は、プログラムによる自動処理。いつどこからどのように攻撃されようと、その瞬間、瞬間に最適なルートを見つけ回避する。フレイが見ているのは三秒先の未来かもしれないが、オート回避はコンマ数ミリ秒で未来を書き換えられると言っても良い。未来を読む天使にとって、それは唯一の盲点かもしれない。


「……ならば」


 その違和感にフレイもついに気づいたのだろう。無言で手を掲げると、光が奔る。空中にさらに十数本の光の剣が次々と出現した。それらは俺の避け道を削り取るように、緻密な角度で取り囲むように配置される。

 このまま防御に徹しているわけにもいかない。そろそろ俺の新しい魔道具を試す時だ。


「至れ、我が工房。顕現せよ、魔道具二十番!」


 転送の魔法陣が光を放ち、現れたのは、双眼の精密な眼を持つ魔道具だ。魔道具二十番『ホーミング魔法弾』。この装置は、対象を自動でロックオンし、その位置を正確に測定し続ける。別途用いる魔法弾と通信し、魔法弾をロックオンした対象に正確に追尾させる魔道具だ。

 俺のオート防御システムは物理攻撃や温度変化に対する守りに特化しているが、これは相手に攻撃を当てるための魔道具。俺が強敵相手に陥りがちな『避けられるが、攻撃が当たらない』という弱点を補うために開発したものだ。皮肉にも、自律制御の攻撃兵器という点では、今フレイが使っているブレイズソードと近いものがある。

 トラッキング装置がフレイの動きを捉え、赤い光を放ちながらターゲットを位置を捉えた。次にトラッキング装置と通信し、追尾弾となる魔法弾を転送する。この魔法弾は爆発の魔法陣を内包しており、一発でも樹木を粉砕できる火力を備えている。天使と言えど、まともに喰らえばただでは済まないだろう。さて、ここで反発使うか……よし、景気良く百発くらいいっとこうか。


「ホワイル コール トランスファー 魔法弾 エンド!」


 出血大サービスとばかりに、次々と魔導弾が転送された。


「ブレイク!」


 トラッキング装置によって制御されたそれらは、全方位から様々な軌道で、だが確実にフレイに迫っていく。


「――光壁(ルクス・ヴェール)!」


 フレイアが即座に詠唱を唱え、光の結界を展開する。純白の魔法障壁がフレイの前に立ちはだかった。しかし、さすがの光壁も、全方位の追尾弾すべてを防ぎ切ることはできない。魔法弾の約半数は結界を迂回し、側面や背後からフレイに迫る。


 ――当たる!


 そう思ったその刹那、フレイは無言のまま、新たな光の剣を数十本、空中に展開した。剣が飛ぶ。舞う。閃く。そして、制御されたホーミング魔法弾が一発残らず打ち落とされた。魔法弾は空中で次々と爆ぜ、爆風が戦場を揺るがす。未来を知る者は、この数にさえ対応できるのか……

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