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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第二章 立国編

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石像に誓う決意

 一連の魂抜き取り騒動は、ひとまずの区切りとなった。だが、まだ終わってはいない。レイアの魂はいまだ戻らず、神の軍勢という新たな脅威も迫りつつある。このひとときは、まさに嵐の前触れなのかもしれない。

 そんな中でまず俺たちは、デルピュネが持っていた光を宿した宝石――魂を封じた容器を回収した。そして、それをリリィに託す。


「まったくにゃん……魔王といえば、『魂を捧げよ』と言う側にゃん。なのに、こうして肉体に戻してやるとは、空前絶後の大サービスにゃん」


 文句を垂れつつも、リリィの手際は確かだった。次々に閉じ込められていた魂たちが、ゆっくりとその肉体へ還っていく。宝石の輝きが徐々に色を失っていくと、横たわっていた人々の体がかすかに動き出した。間も無く、ナノン、ハンツ、モーリス……自警団の面々が、次々と意識を取り戻していく。


「……うぅ……すごく、長く寝てた気がするの……頭がぐるぐるして……それに、すっごくお腹がすいた……なの……」


 一番に目を覚ましたナノンが、寝起きのぼんやりした声でそう呟いた。


「ナノン、無事だったのか! ああ、良かった、良かっただの!」


 ダノンが駆け寄り、半ば泣きそうになりながら抱きしめた。ナノンは少し困ったような顔をしながらも、されるがままだった。

 続いて、ハンツ、モーリスをはじめ、自警団の面々も次々に目を覚ました。誰ひとり欠けることなく、魂は肉体に戻ったようだ。


「……兄ちゃん、俺たちも、しばらく眠ってたみたいだな」


 半身を起こしたモーリスが、隣で呆けているハンツに声をかけた。そして生還を喜ぶナノンとダノンを見る。


「まあ、俺たちの目が覚めてもさ、喜んでくれる奴なんて、いないんだろうけど……」

「わわわ、ハンツさん! モーリスさん!」


 声を上げたのはミーアだった。思わず駆け寄る彼女の目には、涙がうっすらと浮かんでいた。


「すみません、本当に……目を覚ましてくれて、よかったです。私……どうしようか……困っていたとろだったんです……」


 その表情に、ふたりの男は一瞬ぽかんと口を開け、それからにやけた。


「ミーア嬢……まさか、そんなに心配してくれてたなんて……!」

「俺たち、決めた。これから一生ミーア嬢についていきますんで!」


 肩を寄せ合って真顔で言う二人に、ミーアは思わず瞬きを繰り返し、返す言葉に戸惑っているようだった。


「それで……ミーア嬢、さっき言ってましたよね? 困ってたって……何をお困りだったんですか?」


「はい、もし皆さんの魂が明日も見つかってなければ、体の方のお腹が空かないように、石にしてしまおうかどうしようかと困っていたんです」

「い、石……」

「アヒャ、石が怖い……石は嫌ァ……」


 ナノンや自警団たちが無事に目覚めたことに、誰もがほっと胸を撫で下ろしていた。だが、その和やかな空気の中で、俺の気持ちは深く沈んでいた。レイアの魂は、まだ戻っていない。

 傍らに立っている石となった彼女の体。とても美しいオブジェにも見えるが、そこには温もりも、呼吸もない。彼女の魂を、手段があるかどうかも分からないが、必ず、取り戻す。どんな手を使ってでも。俺はもう一度、心に誓った。


「さて……次はニョルズの神の軍勢か……」


 ぽつりと隣でエルマが呟いた。重苦しいその声に、ただならぬものを感じ取る。


「師匠、ニョルズを知ってるのか?」


 俺の問いに、エルマは短くうなずいた。その表情は険しく、どこか遠い過去を思い返しているようだった。


「ああ、知っておるとも。ニョルズ――神のひとりにして、かつてウロボロス古代遺跡で儂を封印した者じゃ」

「え……師匠を封印した?」


 初めてエルマと会った時、石となっていた彼女の姿が脳裏に浮かぶ。


「……つまり、ニョルズは、師匠よりも強いってことなのか?」

「不意を突かれたとはいえ、まあそうじゃろう。何せあやつは『上級神』――神々の中でも格上の存在じゃ」


 さらりと語られた事実に、背筋が冷たくなる。俺にとっては、未だ底の知れない強さを誇る師匠エルマが敵わなかった相手。その神の軍勢が間も無くやってくるという。


「……でも、どうしてそんな存在が、今さら動き出したんだろう?」


 俺の疑問に、エルマは静かに答える。


「よほど興味を引く何かが、あるのじゃろう。神というものは余程のことがない限り、動かん。何千年、何万年も生きているせいで、あらゆることに鈍感になっておるからの」

「レーヴァテインというのはそこまで価値のあるものなのか?」

「分からぬが、それを使って何かをしようとしておるのじゃろう。じゃが、あの身勝手なニョルズが考えることなど、十中八九ろくなことではあるまい」


 神の理由がどうであれ、相手が誰であれ、俺の決意は変わらない。レイアを必ず取り戻す。

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