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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第二章 立国編

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アリバイは湯けむりと共に

 そして、俺は最後の根拠を提示した。


「――犯人が現場に残した、新たなメッセージがこれだ」


 俺はその言葉を読み上げる。


『レーヴァテインは遺跡の守護者が宿し剣。

 直ちにラードーンに捧げよ。もはや猶予はない』


「今回は、『レーヴァテイン』という言葉に対して、明らかに補足説明が加えられている。まるで、俺たちがその正体をまだ掴みきれていないと、見透かしたかのように」

「確かに……これを読めば、レーヴァテインが剣であり、しかもラードーン遺跡の守護者に関係するものだと分かるのじゃ」

「……そう、まるで、前回の会議の内容を、犯人が聞いていたかのようだ」


 それはつまり、犯人が会議の参加者である可能性を強く示唆している。疑念の空気が、じわりと部屋を満たし始めていた。


「盗み聞きされてたってことは、ないのさー?」


 サードンの疑問に、リリィと、エルマが首を振る。


「なかったにゃん。前の会議のときは、他の人物の気配は何も感じなかったにゃんよ」

「あの会議室は、私が張った多重結界の中にあった。空間干渉や魔法による盗聴は、完全に遮断されていたはずじゃ」


 俺は深く息を吸い、これまでの話をまとめた。


「つまり、犯人は、俺たちの間で交わされた会話を把握している。そして、被害者たちに疑いを持たれず接近できる、顔見知りの人物だった可能性が高い、ということになる」


 エルマが仕方ないというように眉をひそめた。


「……やれやれ、確かに、ここまでの状況を踏まえれば、内部の者の仕業と考えたくなるのう」


 俺だって誰も疑いたくなんてない。だが、事態はここまで深刻になってしまった。この可能性を見過ごすわけにはいかない。


「――というわけで、事件が起きた昨夜の時間に、みんながどこで何をしていたのか、順に確認させてもらいたい。いわゆる『アリバイ確認』ってやつだ」


 その言葉に、わずかに空気がざわつく。全員の表情が引き締まり、静かに視線が交錯した。まず口を開いたのは、マッキィだった。


「ボクは工房で……居眠りしてたかな。ずっとこもりっぱなしだったから、外で見張りしてくれてた自警団の人が証人になってくれると思う」


 続いて、エルマが答える。


「儂はお主の指示どおり、捉えた巳人たちを見張っておった。茶を飲みながらな。巳人に聞けば分かるじゃろう」


「わわわ、わたしは自警団本部にいました。事件の時間帯は、一緒にいた団員が証明してくれると思います。すみません」


 と、ミーアもやや緊張しながら答えた。これは挙動不審になっているいうより素の反応だろう。

 ちなみに、イザベル村とラドン村をつなぐ転送装置の使用記録は、すでに俺の方で確認済みだ。その記録によれば、確かにマッキィ、エルマ、ミーアの三名は、事件当日には転送装置を使用していなかった。だが、それで完全に疑いが晴れるわけじゃない。徒歩でも時間さえかければラドン村への移動は可能だし、特にエルマの場合、転送装置を使わずとも、その気になれば自前の転移魔法で移動できてしまう。

 一方で、事件が起きた時間帯にラドン村に実際にいたことになるのは、ダノン、サードン、レイア、ニテロ、リリィ、そして、俺だ。


「おらはラドン村の温泉に入っていただよ。夜はいつも入ることにしてるだよ、もはや日課だの」


 ダノンがいつもどおりの調子で答えると、レイアも続いた。


「私も、ラドン村の温泉にいました。体調が戻らなくて……最近は夜になると、よく温泉に通ってるんです」

「そういえば、確かに聖女様とすれ違ったことを思えているだの」


 2人が温泉にいたことは確かだろう。だが、温泉街と湯の元神社の距離はそれほど離れていない。


「うちは……えーと、その時間、ラドン村の通りを見回ってたさー。神社の方までは行ってないさー」


 サードンは斜め右上の方を見ながら答えた。何とか思い出している、といった様子だ。


「某は……その頃、鍛冶屋で火を見ておったはずにて」


 ニテロはぶっきらぼうな口調で答えた。


「俺が訪ねたときには、確かに鍛冶場にいたな」


 そして、リリィ。


「言うまでもないにゃん。あの時間はご主人様と、ビャコウと話してたにゃんよ」

「……ただ、犯行があったのって、ビャコウと俺が戦ってた時間くらいだったんだよな。リリィが現れたのはその少し後だ」

「そんな細かいことまで考えて話すのは面倒にゃん。深く絶望するにゃん」

「というか、リリィ……あの時どうしてあの場に現れたんだ? ニテロの鍛冶屋の見張りを任せてたはずだったよな」

「そ、それは……にゃん……気付いたら鍛冶屋の中にニテロの姿が見えなかったにゃん。それで様子を見に外に行ったにゃん……」


 ……


「リリィ、さては寝てたな。ご褒美の肉、取り消しだ」

「ひ、酷すぎるにゃん! 冷酷無比なその仕打ちに魔王でさえも思わず引いてしまうにゃん。ご主人様は人の心さえ持たない、末代まで語り継がれるひとでなしの伝説級にゃん!」


 ……リリィの文句は軽く聞き流し、皆の視線が一点に集まっていた。


「……で、ニテロ。姿が見えなかったって話、どういうことだ?」

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