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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第二章 立国編

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アースベル国家緊急事態

 ナノン、ハンツ。立て続けに二人の魂が抜かれてしまうなんて、もはや国家の緊急事態だ。何者かが手当たり次第に剣を盗みながら国民の魂を奪っている。このままでは、アースベルの秩序が根底から崩れてしまいかねない。俺はすぐにこの国の主要メンバーを招集した。国務大臣のダノンとサードン、そしてエルマ。自警団トップのミーア、聖女レイア。加えて、ラドン村の鍛冶屋ニテロ、子人の魔道具師マッキィ、最後に魂の扱いに長けた魔王リリィ。犯人が現場に残した紙切れを見せながら俺は切り出した。


『レーヴァテインをラードーンに捧げよ』


「まず、この犯人からのメッセージ。後半の『ラードーン』って、やっぱり古代遺跡のことだよな?」


 エルマが頷き、古代遺跡の説明を始める。


「そうじゃろうな。古代遺跡にはそれぞれ伝説の生き物『龍』に由来する名がついておる。輪廻の魔法があった遺跡は『ウロボロス』。己の尾を喰う循環する龍じゃな。そして『ラードーン』は、百の首を持つ龍。詠法の魔法のあったラードーン遺跡の扉にも、その姿が刻まれておった。他にも『レヴィアタン』や『ティアマト』など、龍の名を冠する古代遺跡があるぞ」

「ちなみに、ラドン村の名前も、そこからとったものなんだって、じいちゃんが言ってたさー」


 とサードンが補足する。


「じゃあ、『ラードーンの呪い』って言われたら、ラードーン古代遺跡が持つ呪いの力ってことなのか?」

「ふむ、それは少し違うかもしれん」


 エルマが眉をひそめた。


「少なくとも、儂の知る限りでは、古代遺跡そのものに呪術的な効力はないはずじゃ」


 だとするとまだよく分からない。それなら、もう一つのキーワードを確認しよう。


「じゃあ『レーヴァテイン』って、一体なんなんだ?」

「うーむ、言葉の響きからして、ヴァナヘイムに関係する何かのように思えるのう」

「聞いたことがあるような、ないような……やっぱり気のせいかにゃん」


 皆、首を振るばかりで、誰もその言葉の意味は分からないようだ。あるいは祈りの言葉のようなのものかもしれない。


「犯人のこれまでの行動を踏まえると、剣なのではないでしょうか?」


 レイアが静かに口を開いた。確かに、これまで盗まれたのはすべて剣なのだから、犯人が残したメッセージ、レーヴァテインが剣を指している可能性は高いだろう。となれば、次に狙われる場所もおのずと絞られてくる。


「つまり、今後も同じような被害が続く可能性がある。アースベルの中で、他に剣が保管されている場所はあるだろうか?」


 俺が問いかけると、ミーアが手を挙げた。


「すみません、皆さんご存じの通り、自警団の本部には訓練用、保管用を含めて多数の剣があります」


 確かに、最も分かりやすく、剣が集まっている場所だ。狙われる可能性は高い。


「それから……ハンツさんのように、団員の皆が個別に携帯している剣も、それなりに数があります」


 ハンツ以外の自警団のメンバーも、十分襲われる可能性があるということだ。


(それがし)も、所持しておる。某が鍛えし剣にて」


 ラドン村の鍛冶屋、ニテロが口を開いた。彼を会議に呼んだのは、まさにそれを確認するためでもある。彼の鍛冶屋が襲われる可能性は十分にあるだろう。


「厳密には剣じゃないけど、工具の中に細長くて鋭い剣みたいな道具もあるよ」


 とマッキィが控えめに手を挙げた。念のため、子人たちの作業スペースにも注意しよう。


「そういえばさー、ラドン村の『湯の元神社』に祀られてる御神体、あれも実は剣なのさー」


 サードンが思い出したように切り出した。


「外見は像なんだけど、中に古い剣が納められてるのさー。これ、実はほとんど知られてはいないけどさー」


 それは俺も知らなかった。外部から来た者がそこに目をつける可能性は低そうだが、一応用心はしておこう。


「あとは、こないだ捉えた巳人たちのとこだの」


 ダノンが思い出したように口を開いた。


「巳人たちが持ってた剣も、今はまとめて保管してある。数だけで言えばあそこが一番多いかもしれんのだの」


 なるほど、アースベル内に剣が存在している場所は、思っていた以上に多い。だが、先に手を打っておけば、次の被害は防げるかもしれない。


「よし、剣がある場所は、警備を強化しよう。次の被害を出さないように」


 決意を込めて言うと、集まった者たちは、無言で頷いた。こうして俺たちは、剣が保管されている各地に対して、それぞれ防衛体制を整えることを決めた。まず、最も狙われる可能性が高い自警団本部の守りは、トップであるミーアに任せた。テーマパーク建設地と、湯の元神社にも念のため自警団から派遣することにした。さらに、自警団員には単独での巡回は避け、必ず複数人で行動するように指示を出した。次に、鍛冶屋ニテロの護衛はリリィに任せた。そして、捉えた巳人たちと、彼らの保管された武器の警護はエルマに頼んだ。俺は全体の監督として、状況を巡回しながら見て回ることにした。


「それからみんな……言うまでもないと思うけど、ここで話した内容、つまり剣の所在や、警備の配置についての情報は、外部に絶対に漏らさないようにしてくれ」


 皆の真剣な眼差しが一斉に返ってくる。


「これは、犯人に情報を知らせないためだけではなく、村の住民たちを不用意に怖がらせないためでもある。犯人を炙り出すまでは、慎重に行動しよう」


「分かっただの」「まあ、やるさー」「妥当な判断じゃ」「すみません、頑張ります」「了解です」「承知にて」「オッケーだよっ」「等しく滅びを与えたいにゃん」


 俺たちは各々の分担に従って動き始めた。

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