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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第一章 開拓編

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魔道具の魔改造

 [名前] リバティ・クロキ・フリーダム

 [レベル] 99

 [クラス] ヒト

 [種族] 申人(しんじん)

 [職業] 魔道具師

 [体力] 820/820

 [魔力] 650/650

 [加護] 毒無効(極)

 [魔法] 小火炎 転送

 [特技] 魔法陣操作


 一酸化炭素は直接体に被害を与える毒ではなく、化学反応によって体が酸欠状態に陥る物質だ。俺の持つ『毒無効』の加護で、ある程度の耐性はあるものの、酸欠の症状までは完全に防ぎきれず、気を失ってしまった。

 しかし、高濃度の一酸化炭素に長時間さらされ続けたことで、俺の加護は『毒無効(極)』へと進化したらしい。どうやらこれは、毒と呼べなくもないあらゆるものを無効化できる能力のようだ。

 つまり、今の俺なら、毒と言えなくもない一酸化炭素も無効化できるし、おそらくあの『滅びの波動』ですら無効化できそうだ。


「この、とても危険な壊れたストーブ、破棄しますよね?」


 レイアが尋ねてきた。


「ああ、そうだな……」


 そう答えかけたが、ふと考え直した。これ、見方を変えれば、大量の一酸化炭素を発生させる、かなり凶悪な化学兵器になり得るのでは?

 そう考えた俺は、この壊れたストーブをさらに改良というか改悪し、ある魔道具を完成させた。


 魔道具十六番 『超不完全燃焼マシーン』


 これは、小火炎(リトルフレイム)の魔道具で炎を発生させ、それを徹底的に不完全燃焼させ続けることで、大量の一酸化炭素を発生させる魔道具だ。作っておいて言うのも何だが、我ながら、これは冗談抜きで危険すぎる。……というわけで、人目につかない場所にしっかり隠しておこう。


 さて、サリオン帝国はこれからどう動くだろう。

 シルバリオの件については、レイアがやむを得ない事故として書面にまとめてくれた。それを持ち帰ってくれた帝国兵たちも状況を把握しているはずだから、情報としては正しく伝わるはずだ。

 だが、果たしてあのゴルディアスがそれで納得するかどうか……。

 考えられる交渉材料はやはり魔王への対処だろう。サリオン帝国としても、魔王軍との戦いは最優先事項のはずだ。俺がそれに関与できると示せば、有利な立場に立てるかもしれない。

 そんなことを考えていると、エルマがふと思い出したように尋ねてきた。


「ところで、お主のダイイングメッセージの『魔改造』とは、一体何じゃ?」


 俺、死んでないんだけど……と内心ツッコミを入れつつ、俺はさらりと答えた。


「既存の魔道具を、さらに凶悪に改造することだよ」


 俺はシルバリオとの会談中、魔王の話題が出たときに、『支配の首輪』をより凶悪にする『魔改造』を思いついた。

 先の魔王軍との戦いの後、サリオン兵士たちの首から支配の首輪を外すため、俺の転送魔法でかなりの数の首輪をこの工房に送り、回収している。

 さっそく、それらを調べてみたが、これが実に精巧な作りだった。

 命令を入力するための制御機構、命令への従順度を判定する監視機能、そして命令違反時に電撃魔法を発動する仕組みが、首輪サイズの中に巧みに収められている。

 これを作った魔道具師は、間違いなく俺以上の手先の器用さを持っている。もし俺が精密加工機を使わず、手作業で同じものを作ろうとすれば、おそらく十倍は大きくなるだろう。

 そして、俺が考えた魔改造は、この魔道具を流用し、対魔王向けの『支配の首輪』に作り変えることだ。

 もちろん、今の支配の首輪を魔王につけても、電撃の威力が足りないし、魔王の力なら首輪の継ぎ目を容易に引きちぎってしまうだろう。

 そこで、既存の支配の首輪をベースにしつつ、威力と強度を大幅に強化する。これは、魔王がどれほどの力を持っていようと、逃れられない拘束具にするための魔改造だ。


「師匠、魔王に対抗する手段のひとつとして、支配の首輪の魔改造を手伝ってくれないか?」


 この計画を実現するには、エルマの協力が不可欠だ。彼女は興味深そうに俺の説明を聞き、口元に笑みを浮かべながら頷いた。


(とら)の魔王に首輪をつけようとは……これは愉快じゃな」


 かくして、エルマとの共同作業による支配の首輪の魔改造が、いよいよ始まった。

 まず、エルマに『魔力強制吸収』の魔道具を作ってもらい、それを首輪に組み込んだ。これにより、装着者の魔力を強制的に吸収し、そのエネルギーを電撃として放つ仕組みが完成する。つまり、装着者の魔力が大きければ大きいほど、より強力な電撃を浴びせられるというわけだ。

 次に、首輪の強度を飛躍的に向上させるため、俺が元の世界から持ち帰った、あの世界では最高硬度を誇る金属、タングステンでコーティングを施すことにした。その際に、弱点となる首輪の『継ぎ目』を完全に排除し、物理的に開閉する機構をなくすことにした。


「継ぎ目がなければ、どうやって装着させるのじゃ?」


 エルマの疑問に俺は得意げに答えた。


「転送魔法で、直接魔王の首に転送する」


 エルマは一瞬驚いた後、目を細めて笑った。


「ふむ、実にお主らしい発想じゃ」


 だが、タングステンをコーティングするには、その金属を一度溶かさなければならない。タングステンの融点は三千四百度以上。通常の火では到底溶かせるものではない。そこでエルマに相談したところ、さすがの返答が返ってきた。


「惑星の中心核の炎を召喚する炎系の最上級魔法『中心核炎(コアフレイム)』なら五千度の熱が出せるぞ」


 やはり師匠は規格外だ。まず、この魔法を魔道具化し、超高温の熱を発生させる溶鉱炉を作成した。


 魔道具十七番 『中心核溶鉱炉』


 そして、この溶鉱炉を使ってタングステンを溶かし、改造した支配の首輪をコーティング。こうして、対魔王向けの凶悪な支配の首輪がついに完成した。


 魔道具十八番 『支配の首輪・魔改造版』


 これこそ、俺の魔道具の集大成。この支配の首輪なら、例え魔王であっても簡単には外せないはずだ。

これで対魔王の準備は整いました。


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