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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第一章 開拓編

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魔界の死神 解決編

 目を覚ますと、俺はベッドの上にいた。天井を見上げる。何だかとてもぐっすり眠れた気がする。しかし、シルバリオと会談していた時の記憶が曖昧だ。あの時、急に意識が遠のいたんだ。


 ーーマスター、お目覚めですね。おめでとうございます。『毒無効(大)』の加護が『毒無効(極)』へ進化しました。


 ロイナが俺のステータス変化を告げる。あれ、なんで毒無効の加護が強化されたんだ? 疑問に思いつつ顔を上げると、レイアが本当に嬉しそうな顔をして俺の手を握った。


「リバティさん、よかった……! 本当に、よかった……!」


 彼女の目には涙が浮かんでいる。


「俺……何があったんだ?」


 レイアの表情が曇った。そして、彼女の口から衝撃の事実が告げられた。


「シルバリオさんが……亡くなりました」


 一瞬、思考が止まる。俺が倒れたあの部屋で、シルバリオが死んだ? まずい。これは非常にまずい。何せ、相手はゴルディアス皇帝の弟だ。サリオン帝国の要人が、イザベル村で命を落としたとなれば、帝国は黙っていない。

 レイアは、これから迎賓館に行き、事件の説明をすると言った。俺も行くと言うと、まだ休んでいるよう勧められたが、体調は悪くない。それに、このまま寝ているわけにもいかない。


 迎賓館にはすでに関係者たちが集まっていた。緊迫した空気が漂っている。俺とレイアが扉を開いた瞬間、レイアは強い口調で言い放った。


「犯人は、この中にいません!」


 関係者たちが一斉にレイアを見る。緊張が張り詰める中、彼女は静かに口を開いた。


「事件の原因は、これです」


 レイアが指さしたのは、シルバリオが椅子をぶつけて変形させたストーブだった。


「検死の結果、シルバリオさんの死因は、一酸化炭素中毒でした」


 その言葉を聞き、皆がぽかんとしたな表情を浮かべる。この世界では科学は発展していないため、一酸化炭素という言葉を聞いても、ピンとこないのだろう。


「簡単に言えば、この一酸化炭素というガスを吸い込むと、人は酸素を体に取り込めなくなるんです。つまり、息ができなくなるのと同じ状態になります」


 さらに説明を続ける。


「厄介なのは、呼吸ができなくなっているのに、本人はそれに気づかないことです。その結果、徐々に意識を失い、そのまま眠るように命を落としてしまうのです」


 関係者たちは、困惑したような表情で聞いていた。


「一酸化炭素は、不完全燃焼が起きたときに発生します。このストーブが変形したことで、内部の空気の流れが制限され、不完全燃焼が起きたのでしょう」


 レイアはストーブの変形した部分を指し示しながら言う。確かにこの部屋には窓もなく、入り口の扉は閉ざされていた。換気されないまま不完全燃焼を続けた結果、部屋の中に一酸化炭素が充満してしまったのだろう。

 思わぬ真相に、迎賓館は静まり返った。そんな中、ハンツが疑念を口にする。


「レイアの姉さん、ちょっと待ってください。俺たちは確かに見たんです。真っ暗な部屋の中に、青白い死神がいたのを。壊れたストーブのせいじゃ説明がつかないでしょう?」


 レイアはその質問に冷静に答えた。


「一酸化炭素が高濃度になると、光が散乱しやすくなります。その結果、霧のようにぼんやりとした青白い光が見えることがあるんです。皆さんは、それを死神だと錯覚したのではないでしょうか?」

「じゃあ、部屋の中が真っ暗だったのは?」

「一酸化炭素は酸素と結びついて二酸化炭素になります。そのせいで空気中の酸素濃度が低下し、ランタンの火も消えてしまったのでしょう。燃焼には酸素が必要ですから」


「でも、俺は確かに見たんだ! 死神が、みんなの命を吸い取っていくのを!」


 今度はモーリスが強く主張する。しかし、レイアは動じなかった。


「その光景を、他にも見た方はいますか?」


 静かに問いかけると、周囲の人々は顔を見合わせ、誰も手を挙げなかった。


「皆さんは扉を開けた瞬間に高濃度の一酸化炭素を吸い込んで、一時的に意識を失ったと考えられます。そして、一酸化炭素には幻覚作用もあります。モーリスさんは、それによって死神が命を吸い取るという幻覚を見たのではないでしょうか?」


 モーリスは絶句した。しばらく口を開けたまま沈黙し、やがてぽつりと呟く。


「……幻覚……だったのか……。確かに、俺しか見ていないんだよな……」


 彼の言葉とともに、場の空気が少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「それでは、リバティが指で書いていた『まかい』という字は何だったのじゃ?」


 エルマも質問する。それに対し、俺は記憶を辿って答えた。


「ああ、それはな……シルバリオとの会談中に、魔王に対抗する魔道具の『魔改造』のアイデアを思いついたんだけど、その時急に眠くなってきてな。忘れないようにメモしようとしたんだよ、『まかいぞう』って」

「なんじゃ、『魔界』ではなかったのか」


 エルマが呆れたように言う。どうやら俺は『魔改造』と書こうとした途中で意識が飛んでしまったらしい。


「えっと……すみません、それでは暗黒の悪霊を封印していた村の石碑が倒されていたのはなぜなのでしょう?」


 ミーアが恐る恐る尋ねる。その問いに俺は、ばつの悪そうに頭をかいた。


「あー……それ、倒したの俺だ。オート防御システムのテスト中に、魔道具が誤作動してぶつかっちゃってな。直さないととは思ってたんだけど、つい後回しにしてたんだ……すまん」


「えっと、それじゃあ、丸いものが大好きな悪霊さんが蘇ってしまうのでは?」


 ミーアが不安げに言うと、エルマが笑いながら答えた。


「ふむ、この村にいた丸いものが大好きな悪霊というのは、おそらく儂が60年前に倒したレッサーデーモンのことじゃな。カラスみたいにピカピカ光る丸いものが好きでな……だが安心せい。やつは当時、封印ではなく、完全に消滅させた。二度と蘇ることはないじゃろう」


 すべての説明を聞き終えたミーアは、こう言った。


「謎は……全て解けました! そして、本当にどうもすみませーん!」

これで一件落着……ではないのですよね。


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