魔界の死神 捜査編
おはようございます。ミーア・ラ・ヨルムーンです。朝からすみません。大変なことが起きてしまいました。昨日の重要な会談中、リバティお兄ちゃんと帝国の使者シルバリオさんが、会談室の中で倒れているのが発見されたのです。レイアお姉ちゃんがお二人の容体を診てくれましたが、何ということでしょうか、シルバリオさんはすでに亡くなっており、お兄ちゃんもまだ意識が戻っていません。とても心配です。
そして、びっくりすることに、事件の際に会談室の扉を開けたハンツさん、モーリスさん、帝国兵の皆さんが口をそろえて『死神を見た』と証言しています。証言者の皆さんはその時に意識を失ってしまったそうですが、しばらくして全員目を覚まし、今は体に問題はないそうです。ただ、皆さんの話によれば、その時会談室は真っ暗で、青白く光る死神さんのような姿がそこにいたと言います。
死神さんが突然現れるなんて信じられない話ですが、それを裏付けるような不思議な証拠があるんです。リバティお兄ちゃんが、倒れながらも赤いインクで指を使い、床に『まかい』と書いていたのです。
「これは、ダイイングメッセージというやつじゃな」
それを見たエルマお姉ちゃんが言いました。
「すみません、それは何でしょうか?」
「うむ、被害者が死ぬ直前に、犯人の手がかりを残すために書き残したものじゃ」
「わわわ、リバティお兄ちゃんはまだ死んでいません! すみませんが!」
私は思わず強く言ってしまいました。でも、お兄ちゃんが『まかい』と書き残したこと、そして皆さんが『死神を見た』と言っていることを考えると、やっぱり『魔界の死神さん』が現れたのかもしれません。
そうだとしても、死神さんがいきなり部屋の中に現れるなんて、不自然すぎます。誰かが意図的に死神さんを呼び出したのではないでしょうか?
「魔界から死神を召喚する魔法など、儂は聞いたことがないが……仮に召喚魔法だったとして、その場にいなければ使えんのう」
会談室には窓がなく、出入口はただ一つ。その扉は帝国兵さんとハンツさん、モーリスさんが厳重に見張っていました。つまり、お兄ちゃんとシルバリオさん以外、誰も出入りしていないはずなのです。
「閉ざされた部屋に二つの死体。密室殺人事件、というやつじゃな」
エルマお姉ちゃんがニヤリと笑って呟きます。
「ですから、リバティお兄ちゃんはまだ死んでいません! 再びすみませんが!」
私は思わず語気を強めてしまいました。さて、誰が魔界から死神さんを呼び出したのでしょうか? その時、会談室のある迎賓館にいたのはーー
会談の参加者であるダノンさん、サードンさん。
食事を用意していたナノンさん。
警備に当たっていた5名の帝国兵さん、ハンツさん、モーリスさん。
そして、被害者であるシルバリオさんと、リバティお兄ちゃん。
リバティお兄ちゃんは転送魔法を使えますが、死神さんを呼び出せるという話は聞いたことがありません。となると……シルバリオさん自身が死神さんを召喚した可能性もあるかもしれません。
「あれは儂でも扱えないような高度な魔法が使えるような人物には、とても見えんかったのう」
エルマお姉ちゃんが考え込んでいます。あるいは、死神さんは見間違いで、別の方法が使われた可能性もあるかもしれません。例えば、食事にこっそり毒が混入されていた、とか。だとすると、犯人は料理を用意していたナノンさん……? いいえ、ナノンお姉ちゃんがそんなことをするとはとても思えません。本当にすみません。でも、食事に手を加えるだけなら、ダノンさんやサードンさんにもできることになります。ああ、こんな疑いを持つなんて、私は本当に悪い子です……!
しかし、毒であればお兄ちゃんまで倒れるのはおかしいのです。お兄ちゃんは毒耐性を持っていますから。……やっぱり、魔界の死神さん? 他に何か、見落としていることがあるのでしょうか?
これは、とても重大な事件です。私にも、それくらいはわかります。帝国の使者が会談中に殺されるーーそれはただ悲しいだけでなく、もしかしたら帝国との戦争になってしまうような事態なのです。なんとかして犯人を突き止めなければなりません。お兄ちゃんがまだ目を覚まさない以上、私が頑張らないと。
「お嬢、今日もお美しいですね。でもあまりこんを詰めすぎるのは体に毒ですから程々がいいですぜ」
考え込んでいた私に、ハンツさんが気遣うように声をかけてくれました。
「リバティの旦那が目を覚まさないのは心配だけと、きっと大丈夫だよ」
モーリスさんも優しく言ってくれます。そうです、彼らは事件の第一発見者。私は二人に、事件当時の状況を詳しく聞いてみることにしました。どんな些細なことでも、新しい手がかりにつながるかもしれません。
名探偵ミーアが活躍します。
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