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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第一章 開拓編

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大いなる力、ジャガーノート

「ヒャーハハ! ハカイ、ハカイ。ゼ~ンブ破壊して、ここに死の国を作るんじゃがのっと!」


 ジャガーノートの陽気な声が響く中、俺は乱戦状態の戦場を避けるように迂回し、超斥力シューズを使って素早く敵軍の後方へと回り込んだ。そして、転送の魔法陣を顕現させ、魔法陣操作でジャガーノートの足元へと移動させる。


「なんじゃがのっと!」


 しかし、ジャガーノートは俺の魔力の気配を即座に察知し、自らの魔法陣を重ねて俺の魔法陣を打ち消した。魔法陣は、別のより大きな魔法陣を重ねることで無効化できる。これは俺の得意技である魔法陣操作の弱点だ。


「ウヒョッ! お猿さんの子供がいるよっと! オイラに1人で挑むって、なんて命知らずなおバカさんなんじゃがのっと!」


 ジャガーノートは派手な輿に座ったまま、ニヤニヤと俺を見下ろす。輿を担ぐ寅人たちは筋骨隆々の大男ばかりだ。


「まあ、心配するなよっと。君の死は決して無駄にはしない。お猿さんの子供は美味だからなぁ。じっくり、じっくり味わって喰ってやるんじゃがのっと」


 ジャガーノートの声は楽しげで、その奥には狂気と獣の本能が滲んでいる。また、俺の存在に気づいた魔王軍が、次々と警戒態勢を取った。奇襲は失敗だ。

 ジャガーノートの輿を担いでいた五人の寅人たちが、素早く輿を下ろし、俺に向かって飛びかかってくる。体格の差は歴然、速度も尋常ではない。


 ーーマスター、五体が高速で接近します。


 ロイナが冷静に状況を報告する。最新のスマホの測距センサーのおかげで、敵の動きが正確に把握できる。本当に素晴らしい技術だ。


「ホワイル5タイムズ 至れ、我が工房、顕現せよ、魔道具7番 エンド!」


 俺の素早い詠唱と共に転送の魔法陣が輝き、魔道具『ヒトジゴク』が繰り返し出現する。ヒトジゴクの強力な引力により、突進してきた寅人たちの体を吸い込んでいった。


「閉門!」


 そして、今回の『ヒトジゴク』には鋼鉄の蓋がついている。俺は即座に蓋を閉じ、五体の寅人を封じ込めた。その光景を見た魔王軍の兵士たちが、一斉に剣を構え、俺に殺気を向ける。俺もアダマントの剣クサナギを抜き、構えた。


「ホーホウ、待て待て、手出し無用っと。こいつはオイラがやる。奇妙な詠唱だ。どうやらただのお子様じゃなさそうじゃがのっと!」


 ジャガーノートはそう言うと、輿から軽やかに飛び降り、突如として奇妙な体操を始めた。両手を上げ、腰をひねる滑稽な動き。


「ホイっ、ホイっ、ぐるりん。そしてびょーん! オイラはジャガーノート、大いなる力! オイラの進撃は、誰にも止められないんじゃがのっと!」


 そのふざけた動きに、一瞬、気が緩む。しかし、次の瞬間ーー


 ーー緊急回避、願います!


 ロイナが早口で警告したのとほぼ同時に、ジャガーノートの姿がかき消えた。いや、消えたのではない。信じられないほどの速度で、俺の眼前に迫っていた。


「くっ!」


 反射的に超斥力シューズを全開にし、俺は弾かれるように後方へ飛び退く。次の瞬間、ジャガーノートの鋭い爪が空を裂いた。あと一瞬でも遅れていたら、間違いなく引き裂かれていた。だが、勢い余った俺の体は回避の反動で地面を転がる。こいつ、ただのふざけた奴じゃない。寅人の中でも別格のスピードを持つ相手だ。


「至れ、我が工房、顕現せよ、魔道具7番!」


 転がりながら、俺は素早く詠唱する。おそらくジャガーノートは一瞬の隙すら与えてくれない。予想通り、顔を上げた瞬間には、すでに目前まで迫っていた。


「発動! そして、閉門!」


 俺はギリギリのタイミングで魔道具の転送を成功させ、ジャガーノートをヒトジゴクに封じ込めた。これで終わったか……?

 だが、次の瞬間、中から不穏な詠唱が響いてきた。


「我、解放する。冥獄の最深層の扉ーー招来せしは、世界を穿つ破壊の衝撃!」


 ーー高エネルギー反応。警戒してください。


 ロイナの警告が届くと同時に、凄まじい衝撃がヒトジゴクの内部から放たれる。


悪魔の衝撃(イビルインパクト)


 瞬間、轟音と共にヒトジゴクが粉々に砕け散った。


「おいおい、これ一台作るのにいくらかかってると思ってんだよ……!」


 まさか一撃で破壊されるとは……こいつの力は、本気でヤバい。


「オイオイはこっちだよっと。この魔法は何じゃがの? 精霊魔法でもなく、神聖魔法でも、念動魔法でもない……」

「これは、魔科学だ」


 俺ははっきりと言い放った。


「なんじゃそれっとぉ!」


 ジャガーノートが大げさに驚いてみせた次の瞬間、その姿が消えた。


 ーー上から来ます、マスター。


 ロイナの警告が響く。俺はすかさず詠唱に入った。


「ホワイル3タイムズ 至れ、我が工房、顕現せよ、魔道具8番 エンド!」


 そして、3発の魔法サーキュラーソーを上空に向けて放つ。高速回転する円形ノコギリが空を切り裂き、狙い澄まして飛来する。


「うっひょっ! これはヤバいっと!」


ジャガーノートは空中で身体をひねり、何とか直撃を避けようとした。しかし、そのうちの一つが鋭く彼の肩をかすめた。


「ウヒョッ! 直撃してたら腕もげるっと!」


 だが、この隙を俺が見逃すはずもない。


「ホワイル コール リトルフレイム エンド!」


 俺自慢の小火炎(リトルフレイム)の集中砲火だ。連続して繰り出される小火炎(リトルフレイム)が、至近距離からジャガーノートに襲いかかる。数発は確かに命中した。だが、ジャガーノートは冷静に態勢を立て直すと、素早く間合いを取り、無数の火球を身軽にかわし始めた。


「ヒャーハハ! そんなんでオイラを焼こうってかっと? 甘いんじゃがのっと!」


 ジャガーノートはまるで踊るように炎を避けている。


「ブレイク!」


 俺は砲火を中断し、ジャガーノートの動きを慎重に見据える。


「接近戦でオイラとやりあえる奴がいるなんて、驚きじゃがのっと!」


 ジャガーノートは楽しげに笑うが、こっちは全くそんな余裕はない。奴の動きは速すぎて、目で追うのは困難だ。ロイナのサポートがなければ、今頃俺の体は斬り刻まれていただろう。一瞬でも気を抜けば死――それがこの戦いの現実だ。

ジャガーノートとは、止めることのできない巨大な力、圧倒的破壊力を意味しますが、この敵に関しては単に見た目がジャガーだから、という理由もあります。え、知ってた?


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