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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第一章 開拓編

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緊迫のサリオン帝国

 サリオン帝国の様子は、俺が最後に訪れた時とは大きく変わっていた。街の空気は重く、荒廃した建物が目につく。通りを歩く人々の表情も暗く、活気はまるで感じられない。物価は高騰し、庶民たちは食料すら満足に買えないようだ。かつて賑わっていた市場も閑散としており、あちこちで疲れ果てた人々がため息をついている。今となってはイザベル村の方がここよりよほど活気がある。

 そんな中でも変わらず輝きを放っている場所は、サリオン城と、その周辺の貴族の屋敷くらいだ。ここだけは相変わらず豪華で、この国の格差がより一層浮き彫りになっていた。


 全く気は進まないが、俺は久しぶりに皇帝ゴルディアスと対面することになった。広々とした玉座の間に通されると、玉座に腰掛けたゴルディアスが俺を見下ろしていた。その表情には、以前よりも疲れが滲んでいる。だが、それでもなお威圧的な態度は崩さない。


「ようやく姿を見せたな。五年ぶりか、リバティよ」


 彼の声には苛立ちと焦りのようなものが感じられる。


「これまで何をしていた? 異世界から人を呼ぶには莫大な金がかかるのだ。転移者は生涯、余のために働いてもらわねば困るのだ」


 勝手に転移させておいて、勝手な言い分だ。俺は内心呆れつつ、冷静に言い返した。


「俺は自由を得るためにこの世界に来たんだ。誰かのために働きたくて来たわけではない」


 ゴルディアスは眉をひそめ、玉座に肘をついたまま俺を見据えた。


「この国の状況は厳しい。そなたも知っているとは思うが、サリオン帝国と魔王軍の本拠地ヘルヘイムの間にあった街、ノースベルに、魔王ヘルヴァーナ・リリィ自らが現れた。ノースベルには優秀な魔法使いが多くいたが、魔王の前には無力だった。戦いの末に、魔王の魔法『死の吹雪(デスブリザード)』によって、街は丸ごと凍結された」


 ゴルディアスの低い声が玉座の間に響いた。……街ごと凍結? それはあまりにも恐ろしい話だ。やっぱり、魔王クラスの力は規格外だな。


「ノースベルがなくなったことで、今やヘルヘイムに隣接するのはこのサリオン帝国だ。すでに魔王軍はこの国の国境を超えて進軍して来ている。軍事強化はもはや待ったなしという状況だ。リバティよ、今すぐこの国に戻り、魔道具の開発を再開し、この国に資金を提供してもらいたい」


 俺は眉をひそめた。それはつまり、サリオン帝国に税金を納めるためだけに、ほぼ利益のない状態で延々と働かされるということか。冗談じゃない。


「断ったら?」


 俺は静かに問い返す。


「断るということは、サリオン帝国からの永久追放を望む、ということだな……」


 ゴルディアスはにやりと笑った。そして、さらに続ける。


「ちなみに、イザベル村とやらは近いうちにサリオン帝国の正式な領土とすることに決めた。したがって、そなたがこの命令を拒めば、そなたはイザベル村からも追放されることになる。それでよいか?」


 俺は呆れてため息をついた。相変わらず、眩暈がするほど滅茶苦茶な言い分だな。


「陛下、イザベル村はサリオン帝国の近郊にありますが、かつて貧困に苦しむ住民たちが何度も支援を求めたにもかかわらず、帝国は『領土ではない』という理由でそれを拒絶してきました。ここにきて急に併合するとなれば、諸外国からの視線も厳しくなるのではないでしょうか?」


 俺の苛立ちを察したのか、ハルトが冷静に進言した。その指摘はもっともだ。どうやらハルトは今や帝国内でかなりの影響力を持つ立場にあるらしい。まあ、この国に莫大な利益をもたらす商会を仕切っているのだから当然かもしれない。


「何を言うか、もはや状況が変わったのだ」


 ゴルディアスは堂々とした態度を崩さずに言い放った。


「今や、魔王ヘルヴァーナ・リリィ率いるヘルヘイムの脅威は、以前とは比べ物にならぬほど増している。そんな今だからこそ、帝国が小さな村に救いの手を差し伸べるのは当然のことではないか?」


 完全に屁理屈だ。貧しい間は放置して、豊かになった途端、自分のものにしようとしているだけだ。それに、魔王軍との交戦状態の国に併合されたら、逆に危ないじゃないか。こんな横暴が許されるはずがない。もう、サリオン帝国と真正面から対立するしかないのか……。


「俺はーー」


 言いかけたその瞬間、廊下からバタバタと慌ただしい足音が響き、息を切らした兵士が謁見の間に飛び込んできた。


「陛下、大変です! 魔王軍が近くまで進軍しています!」

「何じゃと!?」


 ゴルディアスの表情が一変し、玉座から立ち上がる。周囲の側近たちも騒然となり、ざわめきが広がった。


「状況を報告せよ!」

「はい! 軍を率いているのは四天王の一角。すでに帝国の北の防衛線を突破し、王都に向かって進軍中とのことです!」


 ゴルディアスは苛立たしげに歯を鳴らし、マントを翻して大股で部屋を出ていった。俺はちらりとハルトを見た。彼もまた険しい表情をしている。


「これは……まずい状況だよな」

「ええ、かなり」


 まさか、こんなタイミングで魔王軍が攻めてくるとは――。

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