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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第一章 開拓編

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詠唱の定義

 詠法の魔法陣を使いこなす訓練を続け、さらに二年が経過した。その間に、イザベル村とラドン村は驚くほどの発展を遂げていた。今や、イザベルとラドンは誰もが憧れる『癒やしの楽園』と呼ばれるほどになり、サリオン帝国だけでなく、他国からも観光客が訪れるようになった。商人たちも競うように新たな商機を見つけようと足を運び、両方の村はさらなる発展を遂げつつある。

 そして気がつけば、俺は事実上、イザベル村とラドン村の両方を取りまとめるような立場になっていた。とはいえ、実際の運営はそれぞれの村長が担ってくれている。俺の仕事はというと、「こうした方がいいんじゃないか?」と口を出すことくらいだ。そしてその見返りとして、村の利益の一部を俺の魔道具開発のためにたっぷり還元してくれる。つまり……俺は楽をしながら、おいしいところだけ持っていけているのだ。


 [名前] リバティ・クロキ・フリーダム

 [レベル] 99

 [クラス] ヒト

 [職業] 魔道具師

 [体力] 820/820

 [魔力] 650/650

 [加護] 毒無効(大)

 [魔法] 小火炎 転送

 [特技] 魔法陣操作


 また、この二年の成果は目覚ましい。俺のレベルはついに上限値まで上がりきった。俺はイザベル村の工房で、スライムホイホイの製造と販売を再開し、レベルの上がる速度が向上したためだ。

 さらに、魔法習得の才能がないと言われ続けた俺も、ついに『詠法』の魔法陣を使いこなすことに成功した。エルマの指導のもと、長い時間をかけての成果だ。


「……長かった」


 思わず、ため息まじりに呟く。


「古代遺跡の叡智によって体に刻まれた単独の魔法を習得するのに、これほど時間がかかるとは儂の想定を遥かに超えておった」


 エルマは俺を見ながら、しみじみと頷く。


「儂も長く生きておるが、改めて古代魔法の奥深さを再認識したわ。まあ、よくやった」


 ……それ、褒めてないよね?


「じゃが……」


 エルマは少し言いにくそうに口をつぐみ、それからため息をつきながら続けた。


「この詠法の魔法は、単独で使っても何の意味もないのじゃ」

「えっ……!?」


 思わず声が裏返る。


「詠唱を定義した上で、別の魔法陣を顕現させて使う必要があるのじゃ」


 つまり、多重詠唱が前提ということか。正直、俺にはそんな高度なことができる気がしない。ようやく習得したというのに……


「そんなお主には、魔道具化をおすすめするのじゃ!」


 魂が抜けたような顔をしている俺を見て、エルマは得意げに叫んだ。


「なるほど、魔道具化か!」

「定義した詠法の魔法陣を魔道具として持っておけば、多重詠唱を行わなくても、魔道具に魔力を流し込むだけで同じ効果が得られるじゃろう」


 これまで様々な魔道具を開発してきたが、魔道具と詠唱を連携させて使う、という発想はなかった。確かにそれなら、俺のように魔法の才能がなく、多重詠唱が苦手な者でも、使うことができる。


「さすが師匠、その手があったか」

「ふふん、儂を誰だと思うとる?」


 エルマは得意げに笑った。というわけで、俺は早速、詠法の魔法陣を魔道具化する開発に着手した。目指すのは、プログラミングのように自在な詠唱を定義し、さらに、長ったらしい詠唱をコンパクトにまとめることだ。俺は、詠唱している間にヒュドラの首が再生してしまったあの戦いを思い出す。詠唱が短縮できれば、あの時のような隙をなくせるはずだ。そこで、古代文字を使って魔道具に詠唱の定義を書き込んでいった。

 だが、気づけば魔道具の大きさは工房の床から天井まで広がるような規模になっていた。いや、これはちょっと持ち運べない……


「お主、ちょっと欲張りすぎではないか?」


 エルマが呆れたように言う。


「まずは簡単な詠唱の定義から試してみてはどうじゃ?」

「いや、俺の言語には、条件分岐、繰り返し、関数呼び出しは最低限必要なんだ。そのためには変数と基本的な演算機能も欠かせない。それに、汎用的な魔法はショートカットで素早く呼び出せるようにしないと」


 俺の目指す魔法プログラミングには、最低限、このくらいの機能は押さえておきたい。ソフトウェアエンジニアとして、ここは妥協できないポイントだ。


「なんじゃ、相変わらず言っていることがよく分からんが、変わったこだわりを持っておるのう……」


 エルマは呆れつつも、興味深そうな顔をしていた。俺は引き続き、魔道具の小型化に取り組むことにした。しかし、すぐに壁にぶつかる。手作業では、細かい刻印を施すのに限界がある。古代文字の魔道具は、わずかなズレが性能に大きな影響を及ぼす。より精密な加工ができなければ、魔道具のサイズを縮小するのは難しい。


「……これは、精密加工機が欲しいな」


 半導体や光学レンズを開発するために使うようなナノメートル単位の加工を行う機材があれは、小型の魔道具が開発できるはずだ。だが、当然ながらこの世界にそんなものは存在しない。


「自分で作るしかないか……いや、この世界の技術ベースで作り始めたら、百年はかかるぞ……」


 俺は頭を悩ませ、どうやって精密な加工を実現するか考え始めた。

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