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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第一章 開拓編

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ミーア頑張ります!

 私はミーア。ミーア・ラ・ヨルムーンです。

 巳人だから、いつもにょろにょろしたり、お兄ちゃんに巻きついたりしています。すみません。でも、最近は賢者のお姉ちゃんに魔法を教わって、てくてく歩くこともできるようになりました!

 今日はリバティお兄ちゃんが頑張って良くしたこの村を、もっとたくさんの人に知ってもらうために、私も頑張ります。でも……すみません。私はナノンお姉ちゃんみたいに美味しいケーキも作れないし、エルマお姉ちゃんみたいに賢くもないし、私にできることって少ないかも。でも、お兄ちゃんは言いました。


「ミーアは、ただ笑っているだけでいいよ」


 だから、私は頑張ってニコニコしています。これで、本当にお兄ちゃんの役に立ててるのかなあ?

 でも、ツアーのお客さんたちはみんな楽しそうです。それを見てるだけで、私も楽しくなります。


「お嬢ちゃん、ちょっとお願いがあるんだ」


 ふと、お客さんのひとりが私に話しかけてきました。


「俺はモーリス。どうやら、海で遊んでいるときに大切な鍵を落としてしまったみたいなんだ。一緒に探してもらえないかな?」


 それは大変! お客さんが困っているなら、助けなくちゃいけません。


「分かりました! 一緒に探しましょう!」


 私はモーリスさんに案内されて、鍵を落としたという辺りへ向かいました。


「俺はモーリス。こっちは兄ちゃんのハンツ。多分この辺りだと思うんだけどな……いや、もうちょっと向こうかもしれない」


 モーリスさんはのんびりとした雰囲気の人で、ハンツさんは……ちょっと怖そうな見た目。わわわ、お客さんを悪く言うのはよくないですね! すみません!


「もうちょっとあっちの方も頼むぜ、ミーアちゃんだっけ? 俺はちょっと用事があるんで、ここは任せた」


 ハンツさんはそう言い残して、どこかへ行ってしまいました。私はモーリスさんと一緒に、鍵を探しながらどんどん人の少ない場所へ進んでいきました。でも……どれだけ探しても、鍵は見つかりません。


「うーん、困ったなぁ」


 モーリスさんはのんびりと頭を掻きながら、近くの小屋を指さしました。


「まあ、とりあえず、あそこの小屋で一休みしながら考えようか」


 この古屋は、昔からあるけれど今は誰も使っていないはずです。モーリスさんに言われるまま中に入ると、彼はなぜか後ろ手に扉を閉め、鍵をかけました。


「……え?」


 私が戸惑っていると、モーリスさんは申し訳なさそうに肩をすくめました。


「ミーアちゃん、ごめんね。俺たち、お金が必要なんだ。君みたいな可愛い子に怖い思いをさせたくはないけど、しばらくここでおとなしくしててもらうよ」


 これは何かおかしいと思います。鍵探しはどうなったのでしょう。モーリスさん、もう探す気はないみたいです。もしかして、これは、『ゆーかい』、というやつでしょうか? 違ってたらすみません……

 しばらくすると、ハンツさんが戻ってきて、小屋の中へ入ってきました。


「うまくいったな。村長の家に書き置きを置いてきた。あとは1時間後にどうやって金を回収するかだ」


「兄ちゃん、本当に上手くいくかなあ? そんなすぐに大金を用意できるものかなあ?」


 モーリスさんが不安そうに尋ねると、ハンツさんはニヤリと笑いました。


「ここは高級リゾート地みたいなところだぞ。絶対に溜め込んでるに違いない」


 ……うーん、どうしよう。なんだか悪そうなお話をしてるし、逃げちゃったほうがいいのでしょうか。ハンツさんは腕を組み、得意げに話し始めました。


「さて、金の回収方法はこうだ。モーリス、お前がミーアに刃物を突きつけて、妙な真似をしたら命はない、と脅す。そして、相手に金の入ったカバンを少し離れた場所に置かせる。俺はそのカバンを持って見えなくなるまで遠くに逃げる。お前はそれを見届けたらミーアを解放して、自分もすぐに逃げる……完璧な作戦だろう?」


「さすが兄ちゃん、頭が切れるなあ」


 モーリスさんが感心したように頷いています。


「……でもさ、もしミーア嬢を解放した途端に、追いかけられたらどうするんだ?」


「……全力で逃げろ」


 モーリスさんは、少し考え込むように唸った。


「うーん……でも兄ちゃん、俺、そんなに足速くないし、馬車で追いかけられたらどうするんだ?」


「……まあ安心しろ。万が一お前が捕まったとしても、金は俺たちのものだ」


 ハンツさんはニヤリと笑い、胸を張る。


「なるほど、兄ちゃん、やっぱり賢いなぁ!」


 私にも分かります。モーリスさん、騙されてますね。


「ミャーミャー」


 その時、多くの猫の鳴き声のような音が聞こえました。その直後、


 ドガァァンッ!


 突然大きな音がして、小屋の扉が吹き飛びました。木片がバラバラと舞い散り、床に散らばります。


「な、なんだ!?」


 ハンツさんが驚いて後ずさり、モーリスさんも目を丸くしています。扉の外には、深くフードをかぶった人が立っていました。


「その娘を、人気のない場所に連れてきてくれたこと……礼を言おう。だが、命が惜しければ、その娘をこちらに渡せ」


 ……お礼を言っている割には、ずいぶんと怖いです。私にはもうなんだかよく分かりません。すみません。

ミーア視点でのお話でした。


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