ミーア頑張ります!
私はミーア。ミーア・ラ・ヨルムーンです。
巳人だから、いつもにょろにょろしたり、お兄ちゃんに巻きついたりしています。すみません。でも、最近は賢者のお姉ちゃんに魔法を教わって、てくてく歩くこともできるようになりました!
今日はリバティお兄ちゃんが頑張って良くしたこの村を、もっとたくさんの人に知ってもらうために、私も頑張ります。でも……すみません。私はナノンお姉ちゃんみたいに美味しいケーキも作れないし、エルマお姉ちゃんみたいに賢くもないし、私にできることって少ないかも。でも、お兄ちゃんは言いました。
「ミーアは、ただ笑っているだけでいいよ」
だから、私は頑張ってニコニコしています。これで、本当にお兄ちゃんの役に立ててるのかなあ?
でも、ツアーのお客さんたちはみんな楽しそうです。それを見てるだけで、私も楽しくなります。
「お嬢ちゃん、ちょっとお願いがあるんだ」
ふと、お客さんのひとりが私に話しかけてきました。
「俺はモーリス。どうやら、海で遊んでいるときに大切な鍵を落としてしまったみたいなんだ。一緒に探してもらえないかな?」
それは大変! お客さんが困っているなら、助けなくちゃいけません。
「分かりました! 一緒に探しましょう!」
私はモーリスさんに案内されて、鍵を落としたという辺りへ向かいました。
「俺はモーリス。こっちは兄ちゃんのハンツ。多分この辺りだと思うんだけどな……いや、もうちょっと向こうかもしれない」
モーリスさんはのんびりとした雰囲気の人で、ハンツさんは……ちょっと怖そうな見た目。わわわ、お客さんを悪く言うのはよくないですね! すみません!
「もうちょっとあっちの方も頼むぜ、ミーアちゃんだっけ? 俺はちょっと用事があるんで、ここは任せた」
ハンツさんはそう言い残して、どこかへ行ってしまいました。私はモーリスさんと一緒に、鍵を探しながらどんどん人の少ない場所へ進んでいきました。でも……どれだけ探しても、鍵は見つかりません。
「うーん、困ったなぁ」
モーリスさんはのんびりと頭を掻きながら、近くの小屋を指さしました。
「まあ、とりあえず、あそこの小屋で一休みしながら考えようか」
この古屋は、昔からあるけれど今は誰も使っていないはずです。モーリスさんに言われるまま中に入ると、彼はなぜか後ろ手に扉を閉め、鍵をかけました。
「……え?」
私が戸惑っていると、モーリスさんは申し訳なさそうに肩をすくめました。
「ミーアちゃん、ごめんね。俺たち、お金が必要なんだ。君みたいな可愛い子に怖い思いをさせたくはないけど、しばらくここでおとなしくしててもらうよ」
これは何かおかしいと思います。鍵探しはどうなったのでしょう。モーリスさん、もう探す気はないみたいです。もしかして、これは、『ゆーかい』、というやつでしょうか? 違ってたらすみません……
しばらくすると、ハンツさんが戻ってきて、小屋の中へ入ってきました。
「うまくいったな。村長の家に書き置きを置いてきた。あとは1時間後にどうやって金を回収するかだ」
「兄ちゃん、本当に上手くいくかなあ? そんなすぐに大金を用意できるものかなあ?」
モーリスさんが不安そうに尋ねると、ハンツさんはニヤリと笑いました。
「ここは高級リゾート地みたいなところだぞ。絶対に溜め込んでるに違いない」
……うーん、どうしよう。なんだか悪そうなお話をしてるし、逃げちゃったほうがいいのでしょうか。ハンツさんは腕を組み、得意げに話し始めました。
「さて、金の回収方法はこうだ。モーリス、お前がミーアに刃物を突きつけて、妙な真似をしたら命はない、と脅す。そして、相手に金の入ったカバンを少し離れた場所に置かせる。俺はそのカバンを持って見えなくなるまで遠くに逃げる。お前はそれを見届けたらミーアを解放して、自分もすぐに逃げる……完璧な作戦だろう?」
「さすが兄ちゃん、頭が切れるなあ」
モーリスさんが感心したように頷いています。
「……でもさ、もしミーア嬢を解放した途端に、追いかけられたらどうするんだ?」
「……全力で逃げろ」
モーリスさんは、少し考え込むように唸った。
「うーん……でも兄ちゃん、俺、そんなに足速くないし、馬車で追いかけられたらどうするんだ?」
「……まあ安心しろ。万が一お前が捕まったとしても、金は俺たちのものだ」
ハンツさんはニヤリと笑い、胸を張る。
「なるほど、兄ちゃん、やっぱり賢いなぁ!」
私にも分かります。モーリスさん、騙されてますね。
「ミャーミャー」
その時、多くの猫の鳴き声のような音が聞こえました。その直後、
ドガァァンッ!
突然大きな音がして、小屋の扉が吹き飛びました。木片がバラバラと舞い散り、床に散らばります。
「な、なんだ!?」
ハンツさんが驚いて後ずさり、モーリスさんも目を丸くしています。扉の外には、深くフードをかぶった人が立っていました。
「その娘を、人気のない場所に連れてきてくれたこと……礼を言おう。だが、命が惜しければ、その娘をこちらに渡せ」
……お礼を言っている割には、ずいぶんと怖いです。私にはもうなんだかよく分かりません。すみません。
ミーア視点でのお話でした。
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