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エンジニアによる異世界革命はじめました〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第一章 開拓編

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転送魔法の獲得

「遺跡で見せた『空間⭐︎湾曲(ディストーション)』の魔法陣はこの形と組み合わせじゃ。空間支配の魔法陣、増幅の魔法陣を三つ以上、そして魔力凝集の魔法陣。これらを組み合わせて、魔力で空間を歪めるほどのエネルギーを放出することが第一歩じゃ」


 エルマの説明に、俺は言葉を失った。いきなり五つの多重魔法陣か……そのうちの一つの魔法陣を構築するだけでも俺には難しいというのに……

 それでも、まずは一番簡単そうな増幅の魔法陣を模倣してみることにした。魔力を込めてみるが、調整がうまくいかず、魔法陣の形がすぐに変わってしまい安定しない。

 魔法陣を維持するには、繊細な魔力コントロールが必要だ。例えるなら、ピアノの難しい曲を間違えずに一曲演奏し切るようなものだ。五つの魔法陣を同時に操るとなると、まるで右手、左手、右足、左足でそれぞれ異なる曲を完璧に弾きながら、ハーモニカでもう一曲吹き鳴らす感じだ。むう、俺には一生かけても、できる気がしない……

 エルマは半日ほど俺の修行に付き合った後、未だに一つだけの増幅の魔法陣が安定できず、ぶよんぶよんさせている俺をじっと見つめ、まるで残念な生き物を見るような表情を浮かべて言った。


「このようなことを言うのは非常に心苦しいが、お主には魔法の才能がない。オブラートに包んで言って、絶望的にない。儂が百万人に一人の天才なら、お主は千人に一人のできなさ具合じゃ。つまり、儂とお主のポテンシャルの差は、実に十億倍ということになる」


 ギガ倍か。俺が十億人集まってようやく師匠に匹敵するのか……。あまりのスケールの大きさに悲しい気分にすらならないぞ。むしろ清々しい。


「とは言え、才能がないからと言って、ほいさよならというわけにもいくまい。それでは、教える側も教える能無し、ということになる。まあ、いきなり高度な古代魔法を身につけるのは無理だとしても、お主ができていることから少しずつ伸ばしていくとしよう」


 エルマは一息ついた後、再び口を開いた。


「お主が使える唯一の魔法、小火炎(リトルフレイム)。最弱魔法とはいえ、実はこれも立派な空間魔法なのじゃ。あまり知られてはおらんがな。これを分解し、純粋な空間魔法として使えるように指導してやろう」


 エルマは小火炎(リトルフレイム)の魔法陣を生み出すと、外側に描かれた魔法陣を指さした。


「これが空間を入れ替える魔法陣、転送魔法とも言えるものじゃ。この魔法陣を使うことで、物体やエネルギーを異なる場所に瞬時に移動させることができる」


 彼女はさらに続けた。


「誰もこの本質に気づいておらんが、実のところ、魔法の詠唱というのは、この魔法陣に『宛先』と『対象』を刻むことに他ならん。この魔法陣の構造と詠唱を理解し、応用してみるのじゃ」


 例えば、俺の知っている小火炎(リトルフレイム)の魔法の詠唱は、


「オルフェスのプロメテ火山より、顕現せよ、炎の精霊(サラマンドラ)の火ーー小火炎(リトルフレイム)


 のような感じだ。詠唱の言葉は意味が同じなら多少異なっても構わない。ただし、転送の宛先と対象は、必ずこの詠唱に含める必要がある。例えば、『オルフェスのプロメテ火山』が宛先、そして『炎の精霊(サラマンドラ)の火』が対象。簡単に言ってしまえば、最寄りの実在する火山から火を転送するということなのだ。


 エルマはさらに説明を加えた。


「ちなみに、詠唱の他の部分は必ずしも必要ではない。『炎の精霊(サラマンドラ)の』や、最後の『小火炎(リトルフレイム)』の掛け声も実は不要で、魔力さえ込めれば発動する。多くの者は格好つけで言っているだけじゃな」


 なるほどそうだったのか。でも、最後の一声がないと、魔法として締まらない感じがするなぁ。

 ひとまず、俺はエルマの指示に従い、小火炎(リトルフレイム)の魔法陣の外側の部分だけを構築する練習を繰り返した。なんとかこれを習得した後に、こう詠唱してみた。


「至れ、イザベルの我が工房、顕現せよ。魔道具一番!」


 詠唱と共に、魔法陣の中でその言葉が徐々に古代文字として浮かび上がり、刻み込まれていく。つまり宛先は『イザベルの我が工房』、対象は『魔道具一番』だ。

 最後に魔力を込めると、目の前に魔道具一番『スライムホイホイ』が現れた。これは驚きだ、まさか小火炎(リトルフレイム)の応用で物体の転送ができるなんて。


 ーー『転送』の魔法を獲得しました。


 状態音声ナビが俺が新たに習得した魔法を告げる。これで、俺は作った魔道具を好きなタイミングで出したり、戻したりできるようになったのだ。


「これは驚いた、上出来じゃ! 魔法習得の才能はないが、応用力には長けておるようじゃな。ちなみにこの転送の魔法は一般に知られているものではないから、無闇に口外するでないぞ」


 エルマは満足げに頷きながら褒めてくれた。


「お主のようなタイプは、無理に難しい魔法を習得しようとするよりも、使える魔法を臨機応変に組み合わせた方が、その力をうまく発揮できそうじゃな」


 その言葉を聞いて、俺は確かにそうだと納得した。杓子定規にいつも同じ魔法を使うのではなく、状況に応じて最適な魔法を組み合わせ、作った魔道具も柔軟に活用する。その方がエンジニアらしく、俺の戦い方として相応しい。

 とはいえ、もう少し手札は増やしておかなければならないだろう。まずは応用の効きそうな、基本的で重要な古代魔法を習得することに注力しよう。

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