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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章

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魔王グリン

 全身を覆う体毛は金色の光を放ち、暗い遺跡の中でもその雄々しさを引き立てている。反面、相手には、こちらの姿ははっきりとは見えていないようだ。


「どこのどいつかは知らんが……オレらの縄張りを荒らすとは、命知らずな奴だな」


 その口調には、侵入者を排除することに一片の迷いもなさそうだ。


「さっさと片付けて帰るとするか」


 グリンは巨大な三又の槍を軽々と振り上げ、こちらへ構えた。


「ちょっと待て――」


 俺の声が届く前に、グリンが一歩を踏み出した。そう見えた時には、もう距離はなかった。

 俺の身長の二倍はあるあの巨体で、あり得ない加速だ。

 俺の遅延邪眼でも、輪郭を追うのが精一杯。

 俺が体を捻った次の瞬間、俺の背後の石壁に、三又の槍が突き立てられていた。


「あの一撃を、かわしやがるか」


 遅延邪眼を発動していなければ、初撃で終わっていた。


「……相変わらず、頑丈な壁だな」


 グリンは槍を豪快に空中で旋回させ、再び、切っ先がこちらを捉えた。


 あの体躯……生半可な攻撃は、通らない。


 だが、俺も動じることはない。この手の猪突猛進な高速攻撃には、経験がある。

 勇者トオルだ。


「コール・トランスファー・グリーンガム」


 俺は足元に、小さな転送魔法陣を展開する。


魔法陣複製ジオメトリック・スポーン


 そして、俺の特技により魔法陣は瞬時に複製され、床一面に散りばめられた。


「奇妙な魔法だな……」


 グリンが魔力を込めた槍を振るたび、魔法陣のいくつかは掻き消える。

 だが、俺は消える端からさらに増やしていく。


「しゃらくせえ!」


 面倒になったグリンは、先ほどと同じ踏み込みで突進した。


 そして魔法陣を踏み抜いた瞬間――床に、高粘度の魔法ガムが展開される。

 踏み込んだグリンの脚が沈んだ。

 突進は、強烈な初動があってこそ成立する。

 踏み込みを殺せば、勢いも削がれる。

 グリンは、わずかに体勢を崩した。


「オーバーロード・トランスファー……」


 このままこれらの魔法陣を輪廻の炎リンカネーション・フレイムに上書きし、集中砲火を浴びせる――


「おお、グリンではないか。久しいの!」


 その時、エルマの声が戦場に割って入った。


 グリンが降ってきてから、ここまで――わずか五秒。


 グリンは動きを止め、声の主を見ると、ぱっと表情を緩めた。


「おお、その声……もしや、エルマの姉貴か!」


「久しいのう。三百年ぶりくらいか。お主は、変わらんのう」


「はっ、まったく何の変化もねぇエルマの姉貴に言われたかねえよ」


 そう言ってから、グリンは改めて俺へ視線を向ける。

 さっきまでの殺気はすっかり消えていた。


「……ん? よく見りゃ、オメェ、魔科学術師(トリックスター)じゃねえか。なるほどな。どうりで、強えわけだ」


 グリンは完全に警戒を解いた様子で、三又の槍を背に収めた。


「グリン、私もいるにゃんよ」


 リリィが、少し拗ねた調子で声を挟む。


「フン……冥府の女王(ヘルクイーン)もいるのか。よく見りゃ、微笑の悪夢(メリーナイトメア)まで一緒じゃねえか。また魔王議会(パンデモニウム)でも始めるつもりか?」


 グリンは困惑したように鼻を鳴らした。


「師匠、魔王グリンと知り合いだったのか?」


「ああ。昔、儂がヨトゥンヘイムを訪れた折に気が合ってのう」


 エルマは懐かしむように目を細める。


「もっとも、それも三百年前の話じゃ。今となっては、ここで儂を覚えておるのはグリンくらいじゃろう……じゃが、話が早くてちょうど良かったわい」


「で?」


 グリンは三又の槍を肩に担ぎ、豪快に笑った。


「魔王共と仙人の一行が、オレらの聖地で、何の用だ?」


 エルマは軽く手を振った。


「荒らしに来たわけではないぞ。少しばかり、古代の叡智に触れさせてもらえれば、それでよい」


 グリンは頭を掻き、短く息を吐く。


「ったく……他ならぬ姉貴の頼みだ。まあ、触るくらいなら構わねえか」


 そして、少しだけ首を傾げた。


「もっとも、古代魔法といってもな。あれは精霊魔法の出来損ないみたいなもんだぜ。あんたらの役に立つのか?」


「どんな魔法も、使いようじゃな」


 それ以上の説明は、必要ないと言わんばかりにエルマは答えた。

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