古代遺跡の冒険
あれから数ヶ月が経ち、イザベルの集落はさらなる変化を遂げた。蘇った川による豊富な水源と、魔法蒸留装置による海のミネラルのおかげで、土壌改良が進み、ついにはイモだけでなく、さまざまな穀物の栽培も始まった。今では村と呼べる規模にまで成長した集落は、ついに『イザベル村』と改名され、活気に満ちた場所となっていた。
その成長を受けて、区長のダノンさんから俺に村長職を推薦する声が上がった。しかし、村運営に関わっていると、魔道具の開発に使う時間が減ってしまうため、村長になることは辞退した。そうして、ダノンさんがそのまま村長に昇格した。村の面倒くさい雑用……もとい、村の運営には彼が最適だと感じたからだ。そして俺は村のご意見番としての立ち位置を確立し、影響力を持ちながらも、時間を確保することができている。
さて、さまざまな問題が一段落したところだが、俺にはどうしても気になっていることが一つあった。それは、古代遺跡だ。神が遺跡を封印するために配置したというバジリスクを倒したことによって、古代遺跡の封印が解かれている可能性が高い。古代遺跡という言葉には、どこか魅力的な響きがある。世界中にいくつか存在するというその遺跡には、失われた古代の技術が眠っていると言われているのだ。失われた古代の技術……。技術者である俺にとって、これ以上好奇心をそそられるものはない。
だが、ダノンさんは俺が古代遺跡を訪れることに対して珍しく否定的だった。
「昔、あの遺跡を訪れた者は、神の怒りに触れて呪われた話を前にしただの。また同じことが起きないとも限らない。それに、古代遺跡には強力な守護者がいると聞く。リバティさんにもしものことがあったら、それはこのイザベル村の大きな損失だの」
ダノンさんが心配してくれているのはよく分かる。だが、どうしても好奇心が勝ってしまう自分がいる。古代遺跡を調査することが、このイザベル村のさらなる発展につながるかもしれない。未知の技術がどれほど有益なものか、確かめる価値があると思う。このように説明して、最終的に、ダノンさんは渋々ながらも承諾してくれた。
そんなわけで、俺はミーアと二人、再び川の上流に向かった。バジリスクがいた場所のあたりを念入りに調べてみる。すると、滝の裏側に進める洞窟が見つかったのだ。前のように滝の流れごと石化している状態では中に入ることはできなかった。まさに、これまで封印されていた場所だ。
中に一歩踏み入れると、空気が一変した。自然の空間とは異なる、異質な雰囲気がそこにはあった。洞窟の壁には人工的な作業痕が残されており、地面には奇妙な模様が見受けられる。それは明らかに自然の産物ではなく、人の手によるものだと分かる。
「ここが……遺跡だ、間違いなく」
俺は小さく呟いた。
「お兄ちゃん、なんか変な感じがするね……」
ミーアが不安そうに声を漏らす。
ズシーン
突然、地面がわずかに揺れ、何かが動いた気配がした。ミーアが一歩後ろに下がり、俺もその気配を察して慎重に足を進めた。
「何かいるのか?」
「誰かが歩いてるみたいに聞こえるよ……」
ミーアの不安げな問いに答えるように、洞窟の奥からかすかな音が響く。それは、確かに誰かが歩いているような重い足音のようだ。息を潜めてその先へと進むと、やがて、広大な空間にたどり着いた。足元が崖になっていて、崖の下は深すぎて底が見えない。一本の細い橋が目の前にかかっており、かなり先の足場へと繋がっている。この状況、嫌な予感しかしないが、ここを通らなければ先に進めない。俺たちは恐る恐る橋を渡り始めた。
ズジーン、ズシーン――
再び、あの重い足音が響く。さらに近づいてきている。同時に、目の前に不思議な金属のような素材でできた、頭部に青い一つの目を持つ、大きな人型の物体が現れた。
「もしかして、あれが守護者か……?」
守護者の目が俺たちに向けられたその瞬間、その目が赤く変わった。これってもしかして……そして、目から放たれた熱線が、一瞬のうちに空気を切り裂いた。やっぱり、これ、攻撃モードに移行したんだ。
「ミーア、この不安定な橋の上で攻撃されるのはまずい。急いで駆け抜けよう!」
俺はそう言い、ミーアを促して橋を走り出した。ミーアは素早く蛇行して俺の少し前を進んでいく。守護者は再度こちらに狙いを定めている。
「くそっ、間に合ってくれ!」
ついにミーアが橋の向こう側に到達した瞬間だった。守護者が再び熱線を放ってきた。その熱線が橋を貫く。
「お兄ちゃん!」
俺が渡り終えるまであと数歩のところで橋は崩れ落ちた。ミーアが叫び、とっさに俺に向け長い蛇の体を伸ばすが、わずかに届かない。俺は為すすべなく崩れた橋から底の見えない奈落に落ちていった。
『面白いかも!』『続きを読んでやってもいい!』と思った方は、ブックマーク登録や↓の『いいね』と『★★★★★』を入れていただけると、続きの執筆の励みになります!




