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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第四章 回帰編

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ノイズ混じりの現実

 エルマに「子供たちを頼むぞ」と託されたこともあり、俺がグラーズアカデミーに足を運ぶ回数は自然と増えていた。

 人気教師ナンバーワンのレイア、ナンバーツーのエルマ。この二人が同時に遠征しているため、学院は落ち着かない空気に包まれている。

 仕方なく穴を埋める形で俺も多めに授業を担当するが……残念ながら、生徒からの俺の人気順位は五位くらいだ。

 まあ、子供たちは正直だ。


「元首様の授業は面白いけど、言っていることがちょっと難しい」


 ということらしい。

 俺は説明があまり得意じゃないから仕方ない。


 その頃、魔王ガルム討伐隊──トオル、レイア、エルマの三名と同行したサリオン兵団からは、順調な報告が届いていた。

 トオルの前では、戌人百人がかりでも全く歯が立たない。

 レイアのセイズ魔法は未来を読むため、奇襲も罠も意味をなさず、あらゆる攻撃は無効化される。

 そしてエルマの空間魔法は、防御力を完全無視して広範囲を異空間に吹き飛ばす問答無用の威力である。

 ガルムの配下には『四天王』ならぬ『三獣士(さんじゅうし)』と呼ばれる幹部たちがいたそうだが、この三人の前では、ただの噛ませ犬でしかなかったようだ。

 ただ、魔王ガルム本人はさすがに桁違いの力を持っており、激しく抵抗したらしい。

 しかし最終的には、トオル、レイア、エルマの三人の連携の前に押し切られ、ガルムはノースベルから撤退したという。

 ……そりゃそうだ。

 はっきり言って、俺だってあの三人を同時に相手にしたら、全く勝ち筋が見えない。


 こうして、ノースベルは無事に奪還され、住民たちは歓喜に包まれた。

 勇者様、聖女様、賢者様──

 彼らの名は、もう伝説として語り継がれるのではないかというほどに讃えられたらしい。


 しかし討伐隊は、休むことなくそのまま進軍し、逃げるガルムを追った。

 これは少し冷静さを欠いた行動にも思えるが、トオルの勢いと、エルマの希望もあったらしい。


 北へ。さらに北へ。

 だが、戌人の脚は早い。

 やがて凍てついた大地にまで到達し、ついに──ニブルヘイム突入の報告が入った。


「魔王ガルム討伐隊の進軍は順調。ついに魔王ガルムを追い詰めたとのことです」


 ついにガルムもここまでか。

 先日、魔王議会(パンデモニウム)で顔を合わせたばかりだったが、実に短い時間だった。

 ……別に寂しくも何ともないが。

 そう思った──まさにその刹那だった。


 視界が、ざらつくノイズのようなものに覆われた。


 ほんの一瞬、思考がぷつりと切れる。

 それは、瞬きをするより短い時間に思えた。


 気のせいかもしれないし、俺が疲れていただけかもしれない。

 胸の奥に、不気味な不安が残り、その日は早めに休むことにした。


 そして──翌朝。


 異変に気付いた俺は固まっていた。


 俺の工房が豪華になっている。


 圧倒的な広さ。

 昨日は絶対になかった高価な機材が並んでいる。

 魔道具の素材も、見たことのないランクのものばかり。


 夢か……寝直すか。


 そう思った、そのときだった。


 コンコン、と控えめなノック。


「リバティ様。朝食のご用意が整いました」


 扉を開けると、そこにいたのは見覚えのない女性だった。

 白を基調とした端正な服。控えめなフリルがついた膝丈のスカートは、動きやすさを重視した実用設計で、黒のエプロンがきっちりと腰に収まっている。

 つまり──メイドさんだった。

 だが、無駄のない仕立てと姿勢の良さが、ただ者ではないことを雄弁に物語っている。


 そして──


 気づけば数多くのメイドたちが、工房のあちこちで流れるように動いていた。

 掃除、整備、道具の配置確認。

 まるでここが長年経験を重ねた作業空間であるかのように。

 俺がそのまま案内されたダイニングには、さらに衝撃が待っていた。


 香ばしい匂いを立ち上らせた焼きたてのパン。

 黄金色に輝くふわふわのオムレツ。

 瑞々しい果物を使った彩り豊かなサラダ。

 一口すすれば体に染み渡るような野菜のスープに、温度管理まで完璧な香り高い紅茶。


 ……美味い。

 文句なしに美味い。


 だが、無我夢中で頬張っていた俺は途中で我に返った。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。……君たちは誰だ?」


 場の空気が一瞬、静まる。


「誰とは……どういうことでしょうか?」


「こら。リバティ様に質問で返すんじゃありません。きっと深い意図がおありなのです。空気を読みなさい」


 別のメイドが小声でたしなめる。


「は、はいっ!」


 全員が一斉に姿勢を正した。


「私たちは、日頃からリバティ様の身の回りのお世話をさせていただいている者です!」


「私は、ホワイト・オーダー・メイド」

「私は、ブルー・マー・メイド」

「私は、グリーン・チェック・メイト」

「私は、レッド・グレ・ネイド」

「私は、ブラック・ダイナ・マイト」


 ……名前にツッコミたい。だが、そんなことはどうでもいいくらいに全員が可愛い。


 いや、違う。

 今はそこじゃない。


「悪いけど、俺はそんな世話係はいらない。自由が減るだろ?」


 すると、メイドたちは顔を見合わせ、にこりと微笑んだ。


「ご心配には及びません、リバティ様」


「私どもは、リバティ様の自由を増やすために存在しております」


「雑務、調整、交渉、管理。どんな仕事もすべてお任せください」


「私たちは、ただの給仕ではありません」


 一斉に胸に手を当て、誇らしげに宣言する。


「──メイド界の頂点に立つ精鋭、メイド・イン・アースでございます!」

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