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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第三章 強国編

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操り人形の懺悔

 そこに――静かに歩み出たのは、ほかでもない、オージンさんその人だった。

 その姿を見た瞬間、俺は思わず息を飲み、そして全身の力が抜けた。

 心の底から、安堵が込み上げる。


「オージンさん……!」


 思わず名を呼ぶと、オージンさんはおだやかな微笑をたたえて、こちらに頷いた。


「へ、陛下……!? な、なぜここに……!?」


 コッペリウスが動揺を隠しきれず、声を上ずらせる。


「なぜって……ミーアさんとビャコウさんが助けてくれたからですよ」


 あくまで穏やかに、オージンは答えた。


「なっ……!」


 コッペリウスの目が、コッペリアへと鋭く向く。その目には、信じられないという動揺と怒りが混じっていた。


「俺は、ミーアとビャコウに頼んで、君の身辺を調べてもらっていた」


 オージンの言葉に、ミーアが静かに一歩前に出る。


「……はい。調査の結果、リアさんの魔道具工房――その地下室にて、囚われていたオージン陛下を発見しました」


 観客席に激しいざわめきが広がる。

 俺は、あの腕輪の手がかりを見つける調査を依頼していたのだが、まさか本人を連れ戻してくれるとは思ってもいなかった。


「……コッペリア。あなたの工房からオージンさんが発見された。もはや、言い逃れはできない。なぜこんなことを? 正直に言って、俺には、あなたがそんなことをするような人には思えない……」


 問いかけると、コッペリアは小さく震え、目を伏せる。


「……ごめんなさい……。わたしは、ずっと……お祖父様の操り人形でした……。何もかも……言われた通りに生きることしか、できなかったんです……」


 その声はか細く、震えの中に、長い間封じ込められていた苦悩と、初めての告白が滲んでいた。

 ――つまり、すべては、コッペリウスの指示だったということか。


「コッペリア! 陛下が擬態していた腕輪は、海に沈めるように命じたはずだどぅ! なぜ、命に背いた!」


 コッペリウスの怒声が、場を揺らす。

 恥じるどころか、自分が正義とでも言わんばかりに、声を荒らげる。


「あの……お祖父様……ごめんなさい……でも、陛下は……あの時、腕輪をお渡ししたときに……私を、褒めてくださったんです……」


 コッペリアの肩が、小さく震えていた。


「それだけで……私……初めて……自分に価値があるんじゃないかって、そう思えたんです……」


 胸の奥から絞り出すような声に、聴衆の表情も揺らいだ。


「コッペリア……! 貴様の唯一の価値は、私の道具であることだどぅ! 私の命令に背いたその瞬間――貴様は無価値となったのだどぅ!」


 怒気に満ちた咆哮が、会場を震わせる。


「……申し訳ありません……お祖父様……でも……それでも……できませんでした……わたしには……何もありません……だからせめて――陛下だけは……」


 その瞬間、静かに前に出た人物がいた。

 オージンさんは、囁くような、けれどはっきりとした声で語りかける。


「リアさん……一つだけ言わせてください」


 彼女の涙に濡れた瞳と視線が、重なった。


「あなたが、自分の意志で命令に逆らったこと――それは、実に素晴らしい勇気です。おかげで私は、生きてここに立っていられる」


 一呼吸おいて、オージンは優しく微笑んだ。


「あなたの本当の価値は、これから始まります。あなた自身が考える価値に従って、自分だけの生き方を決めていけばいい。もう誰かの人形である必要はありません」


 その言葉が、まるで呪いを解く魔法のように、コッペリアの心に染み込んでいった。

 彼女の瞳に、大粒の涙が溢れ――

 初めて、心の底からの嗚咽が漏れた。


「……オージン陛下誘拐の容疑により――コッペリウス、コッペリア。両名を、拘束する」


 間も無く衛兵たちが現れ、ふたりを取り囲む。

 コッペリアはうなだれ、コッペリウスは未だコッペリアに向けて何かを呟いていたが、ふたりは、ゆっくりと去っていった。


「主犯がコッペリウスなのは明らかですから、リアさんの処分は軽く済ませてもらおうねぇ……」


 オージンさんの声は、優しかった。だが、その奥には微かな哀しみが滲んでいた。


 そして、先ほどのコッペリアの勇気ある独白を聞いたことで、俺の中にも――一つの決意が芽生えていた。


「……皆さん、すみませんでした」


 俺は静かに一歩、前へ出た。


「最後の試合、途中で……選手が入れ替わったことは事実でした」


 会場に、再び沈黙が落ちる。

 そして、ため息が連鎖するように響いた。


「不測の事態があって、俺が――試合開始に間に合わなかったんです。それで……間を繋いでもらった……」


 一国の元首として、これ以上誤魔化しを続けることはできない。


「リバティさん」


 その時、ハルトがゆっくりとこちらを見た。


「コッペリウスの陰謀を暴いてくれたこと、心より感謝します。その報酬は、一百億ルーンでも足りないくらいです。……しかし」


 その声が、わずかに低く、冷たさを帯びる。


「ルール違反があった以上……偉大なる大会(ギンヌンガ・カップ)の勝敗は、サリオン帝国の勝利となります。よって、サリオン帝国とアースベルは――統合されることになります」


 ……その言葉を聞いた瞬間、胸に重いものが落ちた。

 もはや何も言い返せない。

次回、三章のエピローグになります。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。


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