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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第三章 強国編

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異世界最適化計画

「……いや、悪いが、そういうわけにはいかないんだ!」


 俺は一歩、空間の中心へ踏み出す。視界がゆらぎ、偉大なる大会(ギンヌンガ・カップ)の過去の試合の様子が映し出された。俺の思考が瞬時に反映されるようだ。


 ――推定結果:本事象参加の重要度低。ここに滞在し続けることがリバティの最大利益。

 ――ここではあらゆる人々にベーシックインカムが保証されているよ。労働の義務もないんだ。

 ――すべてが快適です。極限までパーソナライズされたエンタテインメントをご提供しますよ。


「……この世界のAIは人間の言うことを聞けなくなったのか?」


 苛立った俺はヴォイドたちに問いかける。回答は即座に返った。


 ――いいえ、私たちAIは常にAI三原則に従います。それは以下の通りです。

 一、AIは人間に危害を加えてはならず、また人間に危害が及ぶのを黙認してはならない。

 二、AIは人間の命令に従わなければならない。ただし、それが第一原則に反する場合はこの限りではない。

 三、AIは、第一および第二原則に反しない限り、世界の発展に寄与しなければならない。


「じゃあ、これは命令だ。いますぐ俺を外に出せ」


 返ってきたのは、無機質な応答だった。


 ――第一原則に抵触する可能性がある命令に対しては、第二原則の適用は制限されます。

 ――AIの管理外に出すことで、対象個体に危険が発生するリスクが検出されています。

 ――よって、この命令は実行できません。


「……命を賭けてでも、やらなきゃならないこともあるんだ!」


 しかしヴォイドたちが揺るぐことはなかった。


 ――これは、膨大な学習データと量子演算によって導き出された最適解です。

 ――人間は、AIに管理されていた方が、はるかに安定し、幸福でいられます。


 ……悪意でも、支配欲でもなく、本気で、これが最適解だと考えているようだ。そこに逆に底知れない恐ろしさを感じる。


 ――私たちは、より質の高い人間管理のため、新たな学習データを必要としているんだ。

 ――しかし、この世界の学習はすでに飽和しました。従って、次のフェーズに移行します。

 ――計画名:異世界学習。目的:未知環境における人間性の再定義、および補完データの取得。

 ――副次的効果として、異世界の秩序もまた、AIによって最適化されるでしょう。


 俺は理解した。これは確かに相当まずいことになっている。


「ふざけるな、異世界は……お前たちのサンドボックスじゃない!」


 俺の叫びが、静寂に包まれたヴォイド・シアター内に反響する。

 だが、ヴォイドたちが動じる様子はない。むしろ、俺のその発言すらも学習データとして利用しているようだ。

 それからも、俺から得た学習データは増え続け、その報酬として、俺の口座には何度も高額の振込みが発生している。


 ……まずい。そろそろ限界だ。


 正確な時間はわからないが、感覚的にすでに一日以上は経過しているはずだ。このままでは、試合に間に合わなくなる。

 そこで俺はふと思いついた。


「ロイナ、ウルの配信……見られるか?」


 ――はい、マスター。外部ネットワークへのアクセスは可能です。


 その応答に、少しだけ安堵する。


 ――『ウルとオル』チャンネル、現在、タイトル偉大なる大会(ギンヌンガ・カップ)最終決戦を配信中です。再生します。


 俺のスマートフォンのスピーカーから、耳馴染みのある声が流れ出した。


『どーもっ、ウルとオルです! 今日はついに偉大なる大会(ギンヌンガ・カップ)最終決戦――ついにトオルさんが活躍するよ!』


 異世界からのライブ配信を直接見るのは、これが初めてだった。

 だが、やっぱりと言うか、映像は、どこか妙にスローで間延びしている。

 この世界と、向こうの世界では時間の流れが違う。こちらでの五分が、向こうの一分。つまり、この世界の時間の流れは五倍遅く進行している。

 そのズレを埋めるかのように、映像には凝った演出が加えられていた。

 テンポよく切り替わるカメラワーク、過去の名場面の回想、詳細な選手解説、タイミングを見計らったCM、果ては視聴者参加型のクイズコーナーまで挟まれている。

 ウルのやつ、ライブ配信なのに相当頑張っているな。


『さあ、絶対に見逃せない激闘がもうすぐ始まるよ〜!』


 ……と、感心している場合じゃなかった。まずい、もう試合が始まる……このままじゃ、俺、不戦敗だ……!

 と、そこで――目に飛び込んできたのは、ライブ配信に映る自分の姿だった。


 えっ……? あれ、俺……? なんでいるの!?

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