リバティの工房と新しい魔道具
それから俺は、再び漁師に魚以外の海産物も持ち帰るようお願いした。今度は俺がきっぱり全て買い取ると言うと、快く承諾してくれた。イザベルの海は、こういった海産物が豊富に獲れる場所だった。俺は毎日、獲れたての海産物を適切に調理してイザベルの人々に振る舞い、すっかりこの集落に打ち解けていた。人々の飢えも解消され、集落全体が少しずつ元気を取り戻している。
「リバティさん、この得体の知れない海の生き物がこんなに旨かったなんて、まさに大発見だの。お礼をどう言ったらいいか分からない」
と、区長のダノンさんが感謝の言葉を口にした。
「お返しに、うちらにできることがあったら、何でも言ってくれだの」
そこで、俺は集落の人々にお願いして、工房を建てる手伝いをしてもらうことにした。魔道具の開発には、やはりしっかりとした工房が必要だ。村の人々は喜んで協力してくれて、あっという間に工房が完成した。これで、俺は新しい魔道具の開発に専念できる。
「わーい、わーい、お兄ちゃんの、こーぼー!」
ミーアもよく分からずににょろにょろ喜んでいる。半身蛇のミーアも今ではすっかりこの集落に受け入れられ、可愛がられている。
さて、この工房で久々に新しい魔道具を作ろう。ここで次に解決するべきは、もう一つの深刻な問題、水不足だ。俺は小火炎の魔道具をベースにした新しい魔道具を開発した。
魔道具三番『魔法蒸留装置』。
これは海水を熱し、蒸留して水を取り出す装置だ。俺がその仕組みを実演すると、イザベルの人々はその成果に驚き、涙を流して歓喜した。海水から飲める水が作れるという事実は、長年水不足に苦しんできた彼らにとって衝撃的なことだった。
その後、俺はこの蒸留装置を増産し、海岸沿いにいくつも設置した。ただ、この装置はそれぞれに、動作させるための魔力を注ぎ続ける必要がある。そこで集落の人々に交代でその作業をお願いすることになった。蒸留という手段での水確保はあまり効率的ではないものの、ひとまず水不足はある程度解消された。
その後、俺は魔道具三番にさらなる改良を加えた。海水を蒸留後に残る塩とそれ以外のものに分離する機能を追加したのだ。塩はもちろん食材の味付けに使える。また、海水から水と塩を取り除いた残りは『にがり』と呼ばれ、主成分は塩化マグネシウムだ。そしてこれは豆乳から豆腐を作るための凝固剤として使われる。しかし、それだけではなく『にがり』は土壌に混ぜることで、土壌改良が期待できるのだ。土壌が痩せているこの土地の役に立つに違いない。
さらに、俺はこの土地に来る途中で偶然に見つけたジャガイモのような芋を取り出し、これを試しに植えてみることにした。イモは土壌が悪くても育ちやすい。
それから三ヶ月と少しの時間が経ち、予想通り、豊かなイモの収穫が実現した。そして、収穫したイモをさらに育て、増やしていった。そして一年後には、そこに広大なイモ畑が広がっていた。これでこの地の食糧難は完全に解決できたと言える。
俺たちがイザベルに来たとき、まるで生気を失っていた集落の人々は、今や活気を取り戻し、元気な笑顔を見せてくれるようになった。俺はすっかりこの地の英雄として扱われ、人々からの信頼は磐石になっていた。
[名前] リバティ・クロキ・フリーダム
[レベル] 40
[クラス] ヒト
[職業] 魔道具師
[体力] 360/360
[魔力] 240/240
[魔法] 小火炎
[加護] 毒無効
そしてこの期間で、俺のレベルは四十に到達した。サリオン帝国で販売した千台の『スライムホイホイ』が、今も毎日スライムを倒し続けてくれているおかげだ。利益はサリオン帝国に取られてしまったが、それでも『スライムホイホイ』の販売は無駄ではなかったと言えるだろう。
また、この一年間、俺もただイモだけを育てていたわけではない。新しい魔道具も開発した。
ーーレベル四十になりました。
まずは、魔道具四番『状態音声ナビ』。これは魔道具というよりも、パソコンで開発したスマホアプリだ。自分の状態を読み取る魔道具とスマホを接続し、体の状態に何か変化があった時に音声で知らせてくれる仕組みになっている。特に緊迫した戦闘中に自分の体調や魔力の変化をすぐに把握できるのは非常に便利だ。
そして、もう一つの大きな成果が、魔道具五番『魔法車』。これは、回転する魔道具をタイヤにした車で、魔力を注ぐことによって走行できるというものだ。これまで徒歩で何日もかかっていたサリオン帝国までの移動が、これを使えば一日足らずで済むようになる。今後は効率的に移動でき、物資の輸送も楽になるだろう。まあ、車輪の再発明だけどな!
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