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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第二章 立国編

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覚醒の時

 ――ヒトでは、敵わない……


 ニョルズの邪眼が俺を捉え、感覚が次々と断たれていく。膝から下はもう石と化し、腕も、腹も、徐々に硬く固定されていく。

 ……ああ、終わりか。そう思った、まさにそのとき。


 ――マスター、おめでとうございます。魔王になる条件、全て達成されました。


 ロイナの冷静な声が、俺の耳へと届いた。


 ――状態報告。

  条件一『配下千名以上』――達成。

  条件二『ヒトの能力上限到達』――達成。

  条件三『魔王の撃破または従属』――達成。


 ……どういうことだ? 足りなかったはずの条件一『配下千名以上』が達成されたということは、アースベルで何かが起き、国民の数が急に増えたのだろうか?

 ロイナが続ける。


 ――クラス『魔王』へ昇格が可能です、マスター。昇格しますか? 現状を鑑みますと、昇格を強く推奨します。


 魔王。この異世界において、ヒトという枠を超えた上位の存在であるクラス。この瞬間、俺の手が念願のその称号に届いた。そして、今、魔王にならなければ、俺は完全に石になる。


 「もちろんだ。――昇格する!」


 俺は迷わず叫んだ。


 ――クラス『ヒト』から、『魔王』への昇格を開始します。


 その瞬間、俺の視界が真っ暗に染まった。完全に石になったのか……いや、違う。闇が、俺を包み込んだのだ。深淵のように静かな漆黒の闇。世界から切り離されたかのような感覚の中、周囲の魔力が、奔流となって俺の身体に集まってくる。


 骨が軋み、血が沸騰するような感覚。皮膚の下を、強大な『何か』が這いまわる感覚。そして、それはとても心地良い。


 ――身体能力、大幅に向上しました。


 力が、満ちてくる。筋肉が再構築されているようだ。自分が新しく生まれ変わっているようにさえ感じた。


 ――加護『毒無効(極)』が『状態異常無効(極)』にアップグレードされました。


 全身を包んでいた石の感触が、音を立ててひび割れ、剥がれ落ちていく。俺にもはや石化は効かない。砕け散った石の下から現れたのは、魔王として闇を放つ俺の身体だった。


 ――特技『魔法陣操作』が『魔法陣支配』に進化しました。


 これまで俺は魔法陣を操ることができたが、今は魔法陣の方が俺に従う、そんな感覚を覚えた。


 ――新しい特技『遅延邪眼』を獲得しました。


 目に力を込めて凝視すれば、視界が、音が、今では明確に遅れて感じられる。この世界の法則が、まるで俺にだけ緩やかになったようだ。


 ――レベル上限突破。最大レベルが999になりました。


 そして、ヒトの成長の限界を超え、俺は上位の存在となった。


 ――クラス『魔王』への昇格、完了しました。


 闇が晴れ、視界が戻る。俺はその闇を纏っていた。晴れて魔王となった俺。だが、変化はまだ終わらなかった。


 ――レベルが100になりました。

 ――レベルが101になりました。

 ――102、103、104……


 レベルアップが止まらない。凄まじい勢いで、俺のレベルが上昇していく。ヒトだった頃のレベル上限99 ――そこを越えて獲得した経験値は消滅せず、蓄積されており、今、一気に解き放たれたのだ。


 ――レベルが150になりました。

 ――151、152、153……


 そう、俺はずっと積み上げてきた。ヘルヘイムでの魔王軍との死闘。ヴァナヘイムの神の軍勢や天使との衝突。命がけの選択を幾度となく繰り返してきた。

 そして何より、極めつけは『スライムホイホイ』だ。俺が開発した記念すべき魔道具一番は、今や既に数万台が稼働中。四六時中スライムを狩り続けてくれている。


 ――レベルが200になりました。

 ――201、202、203……


 魔王となった俺の身体は、それらの実績をすべて受け止めた。力が、まだ上がる。終わらない。

 魔王への昇格時に俺の全ステータスは大きく向上したが、さらにこの怒涛のレベルアップが重なり、体力、魔力、力、速さ、耐性――あらゆる数値が、とてつもない勢いで跳ね上がっていく。


 ――レベルが256になりました。


 [名前] リバティ・クロキ・フリーダム

 [レベル] 256

 [クラス] 魔王

 [種族] 申人(しんじん)

 [職業] 魔道具師

 [体力] 4920/4920

 [魔力] 3900/3900

 [加護] 状態異常無効(極)

 [魔法] 小火炎 転送

 [特技] 魔法陣支配 遅延邪眼


 最終的に、俺のレベルは256で落ち着いた。

 魔王リバティ。ここに、覚醒完了。


 俺の身体の変化に、エルマとリリィが思わず目を見張った。その次の瞬間、俺は動いた。


『遅延邪眼』


 目に魔力を込めて凝視すると、俺の視界が、すべてスローモーションになる。いや、正確には周囲の時間の流れが遅くなるのだ。

 オルトロスの双頭が、電撃をまとってエルマに噛みついている。が、他者から見れば一瞬で俺はオルトロスに接近し、戦鎚ソードを振り終えていた。獣の首筋があっさりと砕け散った。

 さらに反転。リリィの元へと接近し、ポーションと毒消しを大量に投入。彼女の肩がびくりと跳ねた直後、目の焦点が戻ってくる。


「大丈夫か、師匠、リリィ」


 エルマがゆっくりと頷く。震えはしているが、しっかりとした目だった。


「……すまぬ。何とか、大丈夫じゃ」


 リリィもいつもの調子を取り戻していた。


「ご主人様も、ついに魔王になったにゃん? 私も魔王にゃんよ。この程度、耐えられないとカッコつかないにゃん」


 そこへ、興味薄そうなニョルズの声が響いた。


「……おや、魔王が、一人、増えましたね。けれど、それで――何かが変わるものですかね?」

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